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2004.10.23

鮑のし(あわびのし)/落語

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おなじみのおめでたい男。それにしても女房は気丈です。

【あらすじ】

ついでに生きているような、おめでたい男。

今日も仕事を怠けたので、
銭が一銭もなく、飯が食えない。

空っ腹を抱えて、かみさんに
「何か食わしてくれ」
とせがむと、
「おまんまが食いたかったら田中さんちで五十銭借りてきな」
と言われる。
いつ行っても貸してくれたためしがない家だが、
かみさん「あたしからだってえば、貸してくれるから」

その通りになった。
つまりは信用の問題。

所帯は全部、
しっかり者のかみさんが切り盛りしているのを、
みんな知っている。

借りた五十銭持って帰り
「さあ飯を」
と催促するとかみさん、
「まだダメだよ」

今度は
「この五十銭を持って魚屋で尾頭(おかしら)付きを買っておいで」
と命じる。

今度大家のところの息子が嫁を迎えるので、
そのお祝いだと言って尾頭付きを持って行けば、
祝儀に一円くれるから、
その金で米を買って飯を食わせてやる、
と言うのだ。

ところが行ってみると鯛は五円するので、
しかたがないから、
あわび三杯、十銭まけてもらい、
買って帰るとかみさん、渋い顔をしたが、
まあ、この亭主の脳味噌では、
と諦め、今度は口上を教える。

「こんちはいいお天気でございます。
うけたまりますれば、
お宅さまの若だんなさまにお嫁御さまがおいでになるそうで、
おめでとうございます。
いずれ長屋からつなぎ(長屋全体からの祝儀)が参りますけれど、
これはつなぎのほか(個人としての祝い)でございます」

長くて覚えられないので、
かみさんの前で練習するが、
どうしても若だんなをバカだんな、
嫁御をおにょにょご、
つなぎを津波と言ってしまう。

それでも
「ちゃんと一円もらってこないと
飯を食わせずに干し殺すよ」
と脅かされ、
極楽亭主、のこのこと出掛けていく。

大家に会うと
いきなりあわびをどさっと投げ出し
「さあ、一円くれ」

早速、口上を始めたはいいが、
案の定、
バカだんなに、おにょにょご、津波を
全部やってしまった。

腹を立てた大家、
あわびは「磯のあわびの片思い」で縁起が悪いから、
こんなものは受け取れない
と突っ返す。

これでいよいよ干し殺しかとしょげていると、
長屋の吉兵衛に出会ったので、
これこれと話すと、
吉兵衛「『あわびのどこが縁起が悪いんだ。
おめえんとこに祝い物で、ノシが付いてくるだろう。
そのノシを剥がして返すのか。
あわびってものは、
紀州鳥羽浦で海女が採るんだ。
そのアワビを鮑のしにするには、
仲のいい夫婦が一晩かかって作らなきゃできねえんだ。
それを何だって受け取らねえんだ。
ちきしょーめ、一円じゃ安い。五円よこせ』って尻をまくって言ってやれ」
とアドバイス。

「尻まくれねえ」
「なぜ?」
「サルマタしてねえから」

そこで大家の家に引き返し、
今度は言われた通り威勢よく、
「一円じゃ安いや。五円よこせ五円。
いやなら十円にまけてやる
……ここで尻をまくるとこだけど、
事情があってまくらねえ」

【知りたい】

五代目志ん生が得意に

原話は不詳。上方落語「鮑貝」を、おそらく明治中期に東京に移植したものです。これもまた、五代目志ん生の得意とした噺です。

古いオチは、大家が「丸い『の』の字ではなく、つえを突いたような形の『乃』の字があるが、あれはどういうわけだ?」と聞くと、ぼんくら亭主が「あれはアワビのおじいさんです」というもの。

大阪では、「生貝をひっくり返してみなはれ。裏はつえ突きのしの形になってある」となりますが、「つえ突きのし」という言葉が、戦後、わかりにくくなったので、志ん生が「サルマタしてねえ」という前のセリフを生かして、多少シモがかったオチに改めたのでしょう。

大阪では、さらに「カタカナの『シ』の字のしは?」と聞かれ、「あれは生貝がぼやいているところや」「アワビがぼやくかい」「アワビやさかい、ぼやく。ほかの貝なら、口を開きます」と落す場合がありますが、なんだか要領を得ません。

磯のアワビの片思い

アワビの貝殻が片面だけ、つまり巻貝なので、「片思い」と掛けた洒落です。それだけのことです。

昔は「現物」使用

熨斗(のし)は元来、「あわびのし」だけを指しました。というのも、昔は生のアワビの一片を方形の紙に包み、祝いののしにしたからで、婚礼の引き出物としてあわびのしを贈る習慣は16世紀ごろからあったそうです。

不祝儀の場合は、のしを付けないのが古くからの習わしでした。ただ、この噺で語られる通り、あわびのしは紀州特産で、生産量も少ないため、時代が下るにつれ、簡略なものとして「の」「乃」「のし」などと書いたものが代用されるようになったわけです。

現在では品物の包みに水引を掛け、その右肩に小さな黄色い紙を四角い紙で包んだのが本格で高級品。ただ、今はほとんどその形を印刷したもので済ますので、もうあの形が何を表すのか、ほとんど忘れられていますね。

「のしあわび」は酒の友

言葉がひっくり返って「あわびのし」が「のしあわび」になると、これは飲み助にはかっこうのツマミです。アワビは保存が利くものなので、婚礼などの吉例の場では料理にも使われますが、煮て干したものは固くてそのままでは食べられず、のして(伸ばして)柔らかくしたものが酒盛りの肴として珍重されました。ただし、生のアワビだけは犬の夕飯専用です。

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コメント

こんにちわ。
鮑のしの音源はほかにもありますよ。

三遊亭円楽師匠の物がCDになってます。
http://all-cdshop.com/?pid=253643

んではでは

投稿: | 2005.10.03 17:59

いやあ、ご指摘、ありがとうございました。
われわれの不明を深く恥じ入ります。
ついでに、この貴重な情報を、
追加でアップさせていただきます。
勉強になりました。

投稿: 古木優 | 2005.10.04 01:09

 NHKの新落語名人選シリーズで林家木久蔵も「鮑のし」を口演しています(UICZ4141)。
 こちらの下げは「杖突きのし」の方です。

投稿: ごまめ | 2006.06.25 12:19

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