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2004.10.24

三軒長屋(さんげんながや) 

これはなかなか念の入ったお話ですよ。 この1枚:三軒長屋

三軒続きの長屋があって、
一番端が鳶頭(とびがしら)政五郎の家、
奥が剣術の先生で「一刀流指南」の看板を出す楠運平橘正国という、
いかめしく間抜けな名の侍の道場兼住居。

その二軒にはさまれて、
金貸しの伊勢屋勘右衛門、
通称ヤカン頭のイセカンの妾が、
女中とチン一匹と一緒に住んでいる。
このお妾、ここのところノイローゼ気味。

というのも、
右隣の鳶頭の家には気の荒い若い者が
四六時中出入りする上、
年がら年中酒をのんでは
「さあ殺せ」
「殺さねえでどうする」
と物騒な喧嘩騒ぎ。

おまけに木遣りの稽古で
エンヤラヤと野蛮な声を張り上げられては
生きた心地もしない。

左隣の道場はといえば、
このごろは夜稽古まで始め、
夜中まで
「お面、小手」とやられて眠れない。

たまりかねて旦那のイセカンに、
引っ越させてくれと要求する。

だんなも鳶頭の家の前を通る度に二階から、
ヤカンヤカンとはやされるので腹が立っているが、
この妾、
わがままで今まで何度も転居させられたので、
費用も馬鹿にならない。

この長屋は家質に取ってあってもうすぐ流れるから、
その時きっと追い出してやると慰めたのを、
井戸端で女中がシャベったから、
鳶頭のかみさん、さあ怒った。

家主ならともかく、
イセカンの妾風情に店立てを食ってたまるかと、
亭主をたきつける。

鳶頭、思案の末、
運平先生にこれこれと相談した。

おのれ勘右衛門、
武士を侮る憎い奴、
隣に踏んごみ素っ首を……
と憤るのをなだめ、
あっしに策があります
と一計を授けて、
何やら打ち合わせ。

翌日、
運平先生がまずイセカンを訪れ、
この度道場が手狭になったので、
転居することになったが、
転居費用の捻出のため千本試合を催すことになった、
真剣勝負もござるゆえ、
首の二つや三つはお宅に転げ込むかと存ずるが、
ご了承願いたいと脅すと、
ヤカン頭はたまげて、
五十両出すからどうか試合は中止してほしい
と平身低頭。

次は鳶頭。

こちらも、転宅するが、
やはり費用が馬鹿にならないので賭場を開く、
座敷の真ん中にこもっかぶりの酒を置き、
刺身は出刃を転がしておいて
勝手に作ってもらうので、
気の荒い鳶連中のこと、
斬り合いになって首の二十や三十……
と言いだしたから、
イセカン、うんざりしてまた五十両。

それにしても、隣の先生も同じようなことを、
と気になって、
「おまえさん。どこへ越すんだい」
「へえ、あっしが先生のところに、先生があっしのところへ」

【うんちく】

長い噺

長いはなしなので、伊勢勘の妾が
旦那に苦情を言った後、場面変わって、
鳶の若い者が喧嘩を始めるあたりで切って
上・下に分け、リレー落語として
演じられることもあります。

三軒長屋というのは、
落語によく登場する貧乏な
裏長屋と異なり、
表通りに面していて、二階建てです。
鳶頭や大工の棟梁など、
社会的信用があり、
人の出入りが多い稼業の人間が
借りたものでした。

棟続きでも実際は
一戸建ての借家に近く、
それだけ家賃も高かったのです。

人物の移動が頻繁で、
登場人物も多いので、
よほどの力量のある大真打でないと
こなせません。
この噺を得意とした
五代目古今亭志ん生は、
自伝「びんぼう自慢」で、
明治の名人・四代目橘家円喬は、
鳶の者三十人ばかりが、

「まるでそこいらにモソモソ
しているのが目に見えるよう
でありました」
と回想しています。

音源は志ん生、六代目円生、
三代目金馬、故志ん朝、
現・談志とそろっています。

艶笑版・三軒長屋

同じ題名でも、こちらはポルノ版です。

三軒続きでの長屋で、
左側に独り者、
真ん中に夫婦者、
右側に夫婦と赤ん坊。

真ん中の夫婦は、所帯を持って
もう七、八年になるのに、
まだ子供ができない。

「てめえの畑が悪い」
「いや、おまえさんのタネが悪い」
と、けんかの末、
隣の夫婦は新婚で、
半年たたないうちに子供をこさえたのは、
何か製造法に秘密があるのだろうと
夜、こっそり秘儀を見学。

見ていると、
亭主が後ろから……
で、かみさんは、起きて
泣き出した赤ん坊に乳をふくませ、

「ほら、オッパイないない」
とあやしながらの大奮闘。
これを見ていた隣の夫婦も
早速まねして始め、
亭主が突然抜いて、

「ほら、オチンチンないない」

これをのぞいていた独り者が、

「ほら、お手手ないない」

鳶頭の女房

ここに登場する鳶頭の女房は、
自分を「おれ」と呼ぶなど、
男言葉を使い、乱暴な物言いをします。

歌舞伎「め組の喧嘩」の
め組の辰五郎女房・お仲も同じです。

乱暴者ぞろいの鳶の若い者を
なめられず押さえていくためには
そうしなければならなかったのです。

五代目志ん生も、声は女で口調は男、
それでいて年増女の色気が出なければ
いけないので、難しいと
語り遺しています。

おすすめCD三軒長屋

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