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2004.10.31

茶の湯(ちゃのゆ)

茶の湯

お金儲けは簡単に熟せても、文化は熟しがたいもんで。

家督を息子に譲った大店(おおだな)のご隠居、
小僧を一人付けて、
根岸の隠居所でのんびり暮らしているが、
毎日することがなく、退屈で仕方がない。

若だんなは
少し茶の湯のたしなみがあるので、
いくらかは気が紛れるだろうと気を利かせて、
茶室を作ってくれたが、
隠居の方はまるで風流気がなく、
道具なども放ったまま。

しかし、さすがに退屈に耐えかねて、
まあちょっとやってみようか
と小僧と相談するが、
何をそろえていいのだか、二人ともとんとわからない。

青い粉ならとにかくよかろうと、
買ってきたのが青黄粉。

茶筅(ちゃせん)でガラガラかき回してみたものの、
黄粉だから沸騰もしなければ泡も立たない。

これではしかたがない
と、何か泡立つものをというので、
小僧が椋(むく)の皮を買ってきた。

もともとシャボン代わりに使うものだから、
これはブクブクと派手に泡ばかり。

とてものめる代物ではないが、
そうしているうちに二人ともだんだん面白くなり、
お客を呼びたくなった。

呼ばれる奴こそいい面の皮だが、
みんなお店に義理があるから、
渋々ながらゾロゾロやってくる。

のんでみると青黄粉に椋の皮のお茶。

一同、のどに通らず、脂汗をダラリダラリ。

「あのォ、口直しを」
「茶の湯に口直しはありません」

しかたなく、
お茶受けの羊羹(ようかん)を毒消しに
と、来る人来る人が羊羹ばかり食らうので、
もともとケチで通った隠居のこと、
こう菓子代ばかり高くついたのではたまらない
と、茶菓子も自前で作ることにした。

といって、作り方など知るわけがなく、
サツマ芋を漉して、砂糖は高いから蜜で練って、
とやっているうちに、
粘って型から抜けなくなる。

「ええいッ、ままよ」
と灯油を塗ってスポッと抜いたから
さあ、ものすごいものができあがった。

これを「利休饅頭(まんじゅう)」と勝手に名づけ、
羊羹の代わりにふるまったから、
もう救いがない。

こんなヘドロのようなものを食わされた上、
青黄粉と椋の皮では、
命がいくつあっても足りない
と、とうとうだれも寄りつかなくなった。

ある日、
そんなこととは知らない金兵衛さんが訪ねてきたので、
しばらく茶の湯をやれなかった隠居は大はりきり。

出されたものが例の利休饅頭。

さあ、
てえへんなものォ食わしゃあがった
と、思わず吐き出して、
残りはこっそり袂へ。

せめてお茶で口をゆすごうと、
のんだが運の尽きで青黄粉と椋(むく)の皮。

慌てて便所に逃げ込み、
捨てる場所はないかと見渡すと、
窓の外には建仁寺垣の向こうの田んぼ。

田舎道ならかまわないだろうと、
垣根越しにエイッとほうると
百姓の顔にベチャッ。

「あ、痛ァ、また茶の湯か」

【うんちく】

不運な人々

殺人ティーパーティー(?)に招かれる面々は、
六代目三遊亭円生の演出では、
手習いの師匠
豆腐屋
鳶頭
の三人でした。

この隠居が、長屋の居付き地主、つまり
地主と大家を兼ねているため、
行かないと店立(たなだ)てを喰らって
追い出されるので、
しぶしぶながら出かけます。

いずれ当サイトに登場予定の
「寝床」と同じ悲喜劇です。
泣く子と隠居には勝たれません。

青黄粉は、ウグイス餅などにまぶす青みの粉、
椋の皮は石けんの代用品で、
煮ると泡立ちます。

さぞ、ものすごい代物だったでしょう。

円生、先代金馬の十八番

この犠牲者三人がそろって
茶の作法を知らないので、
恥をかくのがいやさに
夜逃げしようとしたりするドタバタは、
円生ならではのおかしさでした。

茶をのむ場面は、
仕草で表現する仕方(しかた)ばなしのように
三人三様を演じわけます。

茶道の心得のある人間が見ると
なおおかしいでしょうと
円生はのべていますが、
演ずる側も素養は必要でしょう。

若い頃、年下の円生に移してもらった
先代(三代目)金馬の当たり芸でもありました。

柳家小三治のも、抱腹絶倒です。

おすすめCD茶の湯

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コメント

TBありがとうございました。
読ませて頂いて「茶の湯」のお話がよくわかりました。
おもしろいですね~^^

投稿: あき | 2005.05.02 23:53

TBありがとうございました。
落語に詳しい方なんですね。
タイガー&ドラゴンで知った事なんですが、落語は噺家によって同じ「茶の湯」でも違う話になるんですね・・・ん?ドラマだからかな?

投稿: あみ | 2005.05.03 21:10

トラックバックいただきました。
ありがとうございます。
最近、岩井俊二の映画「花とアリス」や今回の「タイガー&ドラゴン」等落語をアクセントとして使っている映像作品が多いですね。
落語を知らない私でも気軽に触れることが多くなりました。本物ではありませんが。

投稿: s | 2005.05.07 10:30

ご隠居が作ったのは「琉球饅頭」ではなく「利休饅頭」です。

投稿: こんがり亭パロマ | 2006.10.28 20:48

貴重なご指摘、おありがとうございます。

投稿: ふるき | 2006.10.28 23:06

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