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2004.10.23

義眼(ぎがん)

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江戸時代の噺には眼病がらみのがよくあるもんです。

ある男、
目の具合がどうも良くないので、
医者に相談するが、
ますます見えなくなるばかり。

眼科の先生もしまいには面倒くさくなり、
えいとばかり悪い方の目をスッポリ抜き取り、
代わりに義眼をはめ込んでごまかしてしまった。

「あー、どうです具合は?
……そりゃよかった。
それから、入れた方の目は夜は必要ないンだから、
取りましてね、
枕元に水を置いて、浮かべときなさい。
そうすりゃ長持ちするから」

入れ歯と間違えているようだが、
当人すっかり喜んで、
その夜、
吉原のなじみの女郎のところへ見せびらかしに行く。

男前が上がったというので、
その晩は大変なモテよう。

さて、こちらは隣部屋の客。

反対に相方の女が、まるっきり来ない。

女房とけんかした腹いせの女郎買いなのに、
こっちも完璧に振られ、
ヤケ酒ばかり喰らい、クダを巻いている。

「なんでえ、えー、あの女郎は
……長えぞオシッコが。
牛の年じゃあねえのか?
それにしても、隣はうるさいねえ。
え、『こないだと顔が変わった』ってやがる。
七面鳥のケツじゃあるめえし、
え、そんなにツラが変わるかいッ!
こんちくしょうめ!」

焼き餠とヤケ酒で喉が渇き、
ついでにどんなツラの野郎か見てやろうと
隣をのぞくと、
枕元に例の義眼を浮かべた水。

色男が寝ついたのを幸いに忍び込んで、
酔い覚めの水千両とばかり、
ぐいっとのみ干したからたまらない。

翌日からお通じはなくなるわ、熱は出るわで、
どうにもしようがなくなって、
医者に駆け込んだ。

さて……
「あー、奥さん、
お宅のご主人のお通じがないのは、
肛門の奥の方に、何か妨げてるものがありますな」

サルマタを取って、
双眼鏡で肛門をのぞくなり先生、
「ぎゃん」
と叫んで表へ逃げだした。

男の女房が後を追いかけてきて、
「先生、いったいどうなさったんです」
「いやあ驚いた。
今、お宅のご主人の尻の穴をのぞいたら、
向こうからも誰かにらんでた」

【うんちく】

いれめ、とも

「いれめ」とも呼ばれます。

短いけれども、
楽しいナンセンスにあふれた展開、オチの秀逸さで、
落とし噺としては、最もすぐれたもののひとつといえるでしょう。

五代目古今亭志ん生が時々、
実に楽しそうに演じた噺で、
速記を読んだだけで吹き出してしまうほど。

意外にも、明治の大看板で
人情噺の大家・初代三遊亭円左が
得意にしていて、それを
大正の爆笑王・柳家三語楼が
さらにギャグを加え、オチも円左の
「尻の穴ににらまれたのは初めてだ」
から、よりシュールな
現行のものに変えました。

三語楼から志ん生、さらにこれも
昭和初期に「猫と金魚」
などの爆笑落語で売れた
初代柳家権太楼に継承されました。
権太楼のレコードは、
尻をメガネでのぞく場面が、
何と効果音入りという
凝ったものだったとか。

志ん生の音源発掘!

2004-05年、志ん生の、未公表のきわめて貴重な
音源・映像・写真を多数含む
「講談社DVDBOOK・志ん生復活!落語大全集」全13巻が
発売され、そのうち第5巻に「義眼」が収録されています。

この「義眼」の音源は1996年。

カセット版として、日本クラウンより発売されたものを、改めて収録したものです。

この巻には子息の馬生との
リレー落語「宿屋の富」(初公開)も収録。

志ん生フリークには、楽しまる一冊です。

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