« 雲助師って、どうよ? | トップページ | 鮑のし(あわびのし) »

2004.10.23

船徳(ふなとく)

船徳

こんな道楽の過ぎた野郎は、すこぶる見上げたもんです。

道楽が過ぎて勘当され、
柳橋の船宿・大枡(だいます)の二階で
居候の身の上の若だんな、徳兵衛。

暇をもてあました末、
いなせな姿にあこがれて
「船頭になりたい」
などと、言いだす始末。

親方始め
船宿の若い者の集まったところで
「これからは『徳』と呼んどくれ」
と宣言してしまった。

お暑いさかりの四万六千日。

なじみ客の通人が二人やってきた。
あいにく船頭が出払っている。

柱に寄り掛かって居眠りしている徳を認めた二人は
引き下がらない。

船宿の女将が止めるのもきかず、
にわか船頭になった徳、
二人を乗せて大棧橋までの約束で舟を出すことに。

舟を出したのはいいが、
同じところを三度も回ったり、
石垣に寄ったり。

徳「この舟ァ、石垣が好きなんで。
コウモリ傘を持っているだんな、
石垣をちょいと突いてください」

傘で突いたのはいいが、
石垣の間に挟まって抜けずじまい。

徳「おあきらめなさい。
もうそこへは行きません」

さんざん二人に冷や汗をかかせて、大桟橋へ。

目前、浅瀬に乗りあげてしまう。

客は一人をおぶって水の中を歩いて上にあがったが、
舟に残された徳、
青い顔をして
「ヘッ、お客さま、おあがりになりましたら、
船頭を一人雇ってください」

【うんちく】

文楽のおはこ

八代目桂文楽の極め付けでした。
文楽以後、無数の落語家が
「船徳」を演じていますが、
はなしの骨格、特に、
前半の船頭たちのおかしみ、
「四万六千日、
お暑い盛りでございます」
という決め文句、
客を待たせてひげを剃る、
若旦那船頭の役者気取り、
舟中での
「この舟は三度っつ回る」
などのギャグ、正体不明の
「竹屋のおじさん」
の登場などは、
刷り込まれたDNAのように、
どの演者も文楽に右に倣えです。
ライバルの五代目古今亭志ん生は、
前半の、若旦那の船頭になるくだりは
一切カットし、川の上でのドタバタのみを、
ごくあっさりと演じていました。

この噺は元々、
幕末の初代志ん生作の人情噺
「お初徳兵衛浮名桟橋」発端を、
明治の爆笑王・鼻の円遊こと
初代三遊亭円遊がパロディ化し、
こっけい噺に仕立てたものです。
この元の心中がらみの人情噺は、
五代目志ん生が、「お初徳兵衛」
として時々演じました。

CDは、文楽のほかは八代目可楽、
五代目小さんなど。
志ん生のはありませんが、
子息の十代目金原亭馬生、
古今亭志ん朝。現役では、
現・柳家小三治のものが
発売されています。

四万六千日さま

浅草の観世音菩薩の縁日で、
旧暦7月10日にあたります。
現在の8月なかば、もちろん
猛暑のさ中です。

この日にお参りすれば、
四万六千日(約128年)
毎日参詣したのと
同じご利益が得られるという
便利な日です。
なぜ四万六千日なのかは
分かりません。

この噺の当日を
四万六千日に設定したのは
明治の三代目柳家小さんと
いわれます。

「お初徳兵衛浮名桟橋」

あらすじ

(上)勘当された若旦那・徳兵衛は
  船頭になり、幼なじみの芸者
  お初を送る途中、夕立に会っ
  たのがきっかけで関係を結ぶ。

(中)ところが、お初に横恋慕する
  油屋九兵衛の策謀で、徳兵衛
  とお初は心中に追い込まれる。

(下)二人は死に切れず、船頭の親
  方のとりなしで徳兵衛の勘当
  もとけ、晴れて二人は夫婦に。

竹屋のおじさん

客を乗せて船出した後、徳三郎が
「竹屋のおじさあん、今からお客を
 大桟橋まで送ってきますゥッ」
と橋上の人物に呼びかけ、このおじさんなる人が、
「徳さんひとりかいッ?大丈夫かいッ?」
と悲痛に絶叫して、舟中の旦那衆を
ふるえあがらせるのが、「船徳」の有名なギャグですが、
この「竹屋」は、今戸橋の橋詰、
向島に渡す「竹屋の渡し」の山谷堀側にあった、
同名の有名船宿を指すと思われます。

端唄「夕立や」に、
「堀の船宿、竹屋の人と呼子鳥」
という文句があります。
渡船場に立って、「竹屋の人ッ」と呼ぶと、
船宿から船頭が艪を漕いでくるという、
夏の江戸情緒にあふれた光景です。
噺の場面も、多分この唄からヒントを得たものでしょう。

おすすめCD船徳

|

« 雲助師って、どうよ? | トップページ | 鮑のし(あわびのし) »

落語のあらすじ 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60017/1753405

この記事へのトラックバック一覧です: 船徳(ふなとく):

« 雲助師って、どうよ? | トップページ | 鮑のし(あわびのし) »