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2004.11.17

片棒(かたぼう) 落語

けちがテーマ。こんな調子じゃ、オヤジも死に切れません。 この1枚:片棒

赤螺屋(あかにしや)ケチ兵衛という男、
一生食うものも食わずに金をため込んだが、
寄る年波、
そろそろ三人の息子の誰かに身代を譲らなくてはならない。

かといって
今のままでは三人の料簡がわからず、
誰に譲ったらいいか迷うので、
ある日、
息子たちを呼んで、
オレが仮にもし明日にでも目をつむったら
後の始末はどうするつもりか、
一人ずつ聞かせてもらいたい
と言う。

まず長男。

おとっつぁんの追善に、
慈善事業に一万両ほど寄付する
と言いだしたから、
おやじ、ど肝を抜かれた。

葬式もすべて特別あつらえの豪華版。

袴も紋付きも全部新規にこしらえ、
料理も黒塗り金蒔絵の重箱に、
うまいものをぎっしり詰め、
酒も極上の灘の生一本。

その上、車代に十両ずつ三千人分……
ケチ兵衛、ショック死寸前。

と、とんでもねえ野郎だ、
葬式で身上をつぶされてたまるか。

次! 次男。

お陽気に、歴史に残る葬儀にしたい
と言いだしたから、おやじはまたまた嫌な予感。

案の定、
葬式に紅白の幕を飾った上、
盛大な行列を仕立て、
木遣り、芸者の手古舞に、
にぎやかに山車や神輿を繰り出してワッショイワッショイ。

四つ角まで神輿に骨を乗せて担ぎだす。

拍子木がチョーンと入った後、
親戚総代が弔辞で
「赤螺屋ケチ兵衛君、
平素粗食に甘んじ、ただ預金額の増加を
唯一の娯楽となしおられしが、
栄養不良のためおっ死んじまった。
ざまあみ……もとい、
人生面白きかな、また愉快なり」
と並べると、
一同そろって「バンザーイ」。

この野郎、
七生まで勘当だっ!! 

次っ! 三男。

「おい、もうおまえだけが頼りだ。
兄貴たちの馬鹿野郎とは違うだろうな」

「当然です。
あんなのは言語道断、正気の沙汰じゃありません」

……やっと、まともなのが出てきた。

跡取りはコレに決まった
と安心したが、
「死ぬってのは自然に帰るんですから、
立派な葬式なんぞ要りません。
死骸は鳥につつかせて自然消滅。これが一番」

「おいおい、まさかそれをやるんじゃ」

「しかたがないから、まあお通夜を出しますが、
入費がかかるから、一晩ですぐ焼いちまいます。
出棺は十一時と言っといて八時に出しちまえば、
菓子を出さずに済みます。
早桶は菜漬けの樽の悪いので十分。
抹香は高いからかんな屑。
樽には荒縄を掛けて、
天秤棒で差しにないにしますが、
人を頼むと金がかかりますから、
あたしが片棒を担ぎます。
ただ、後の片棒がいません」

「なに、心配するな。オレが出て担ぐ」

【うんちく】

またまたケチ兵衛登場!

今回の屋号はあかにしや。
「あかにし」はタニシで、金を握って放さない
ケチを、タニシが殻を閉じて開かないのに
例えたものです。

なお、上方ではケチは当たり前なので、
あまりケチ噺は発達しなかったようです。

葬式

この噺にあるように、かつて富裕層の間では、
会葬者に、上戸は土瓶の酒、下戸には饅頭、
全員に強飯(こわめし)と煮しめなどの重箱を配ったものです。

ケチ兵衛ほどしみったれていなくとも、
ぐずぐずして会葬者が増えれば、それだけ
出すものも出さねばならず、経費もかさむ勘定です。

今も昔も、葬儀の費用は馬鹿になりませんが、
明治から大正の初期ぐらいまでは、よほどの貧乏弔いで
ない限り、どこの家でも仰々しく葬列を仕立てて
斎場まで練り歩いたので、余計に物入りだったでしょう。

さまざまなギャグと演出

笑いが多く、各自で自由にギャグを入れられるため、
現在もよく演じられますが、全体のおおまかな構成は
三代目三遊亭金馬のものが基本になっています。

戦後では、「留さん」こと九代目桂文治が、
自分自身がケチだったこともあって、ことのほか
得意にしていました。

会葬者一同の「バンザーイ」や、飛行機から
電気仕掛けで垂れ幕が出るギャグ、鳥につつかせる
風葬というアイデアも文治のものです。
また、葬列に山車を繰り出す場面を入れたのは
初代三遊亭銀馬でした。

なお、長男は松太郎、次男を竹次郎、三男梅三郎と、
皮肉にも松竹梅で名前をそろえることもあります。

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