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2004.11.19

権兵衛狸(ごんべえだぬき) 落語

狸が人を化かす。田舎を舞台にした噺も、たまには。 この1枚:権兵衛狸

権兵衛という、
渡し守を兼ねているお百姓、
夜になると寝酒を一杯飲んで寝るだけが何よりの楽しみという、
慎ましい暮らしをしている。

最近、毎晩決まってトントンと戸をたたく音がし、
「権兵衛、権兵衛」
と呼ぶ声がするので、外に出てみると誰もいない。

おおかた、狸のいたずらだろうと見当がついたが、
これがあまり続くため、
権兵衛、だんだん腹が立ってきた。

「野郎、明日の晩来てみやがれ。
ひどい目に逢わしてやる」

刻限を見計い、
戸の陰に立って見張っているのだが、
なかなかどうして、捕まらない。

狸はますます調子に乗ったのか、
三日目の晩も四日目の晩も相変わらず
「トントン、トントン、権兵衛、権兵衛」

ある晩、来たなと思って戸口で出し抜けに
「何だァ?」
と返事をして急にガラリと戸を開けると、
不意を食らった狸はびっくりして
家の中に転がり込み、目を回したので、
細引きでグルグル巻にふん縛って土間に転がしておく。

さあ、どうしてくれべえかといろいろ考えたが、
狸汁にして食ってみたところで、
あまりうまいとは思えない。

それよりも、二度とこんな悪さをする気を起こさないように、
こらしめて放してやることにして、
仲間に手伝ってもらい、
剃刀で狸の頭を寄ってたかって
くりくり坊主にした上で追い払う。

さすがにこれにはこたえたと見え、
それから八日ほどはやって来ない。

ヤレヤレと安心していると、
九日目の晩
「トントントン、権兵衛さん」

「野郎、また来やがって。
今度はさん付けだ。
たぶらかそうったって、そうは問屋がおろさねえだぞ。
この間のように痛い目にあいてえか」

外で狸が、
もう決していたずらはしないからちょっと開けてください
と、いやにしおらしく頼むので、
権兵衛、しかたなしに戸をガラリと開け、
「何の用だ」
「ええ、先日はまことにどうも」
「あんだ、まだ不服があるだか」
「春先でのぼせていけませんから、
すいませんがもう一ぺん剃ってくださいな」

【うんちく】

大看板が好んで競演

あまり面白い噺とも(個人的に)思えませんが、
明治の昔には四代目橘家円喬、初代三遊亭円左、
四代目橘家円蔵など、円朝門下の錚々たる名人連が
手掛けました。

昭和以後も、円蔵直伝の六代目円生ほか、五代目
志ん生、八代目正蔵、三代目金馬から、テレビで
「絵の出るレーザー落語」として演じたことがある
現立川談志にいたるまで、名だたる大看板はほとんど
レパートリーに入れています。

四代目円喬の「化物」

明治の橘家円喬は、「化物」と題し、
「権兵衛狸」の後に、狐が人を化かす
小ばなしを付け、オムニバスで演じた速記を
残しています。

そのあらすじは……。

浅茅ヶ原(現・台東区石浜二~三丁目にあった原野)に悪狐が出没し、
いきなり金玉を蹴飛ばして悶絶させ、
食物を奪うので、馬方の九郎兵衛が退治しようと見張っていると、
狐が現れて馬糞の団子をこしらえ、
近所の娘に化けて九郎兵衛の家に行く。
かみさんがころりとだまされたので、あわてて戻った九郎兵衛が、
それは馬糞だと言おうとした途端に、金玉を蹴られる。
気が付けば蹴ったのは自分の馬、
のぞいていた家の戸の節穴は馬の尻の穴。

「権兵衛狸」そのものが
小ばなしとして扱われていたのが、わかります。

権兵衛

田舎者の代名詞ですが、
「江戸語の辞典」(前田勇編)に、

「男女児の生後七日に産髪を全部剃り落とし、
盆窪(ぼんのくぼ)のみに剃り残した毛髪」

とあり、狸がクリクリ坊主にされることと
掛けて、演題が付けられたものと思われます。

オチ

「髭もついでにあたってくんねえ」

と、狸が伝法に言うやり方もあります。
これだと、タヌ公の「性格」が変わり、
凄味が出ますね。

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