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2004.11.25

三方一両損(さんぽういちりょうぞん)/落語

三方一両損

ホントの意味はこういうこと。けっこう誤用されてますね。

神田白壁町の長屋に住む左官の金太郎.

ある日、柳原の土手で、
同じく神田堅大工町の大工・熊五郎名義の
書きつけと印形、三両入った財布を拾ったので、
早速家を訪ねて届ける。

ところが、
偏屈で宵越しの金を持たない主義の熊五郎、
印形と書きつけはもらっておくが、
オレを嫌って勝手におさらばした金なんぞ、
もうオレの物じゃねえから受けとるわけにはいかねえ、
そのまま持って帰れと言い張って聞かない。

人が静かに言っているうちに持っていかないとためにならねえぞと、
親切心で届けてやったのを逆にすごむ始末なので、
金太郎もカチンときて、大喧嘩になる。

騒ぎを聞きつけた熊五郎の大家が止めに入るが、
かえって喧嘩が飛び火して、
熊が
「この逆蛍、店賃はちゃんと入れてるんだから、
てめえなんぞにとやかく言われる筋合いはねえ」
と毒づいたから、大家はカンカン。

こんな野郎はあたしが召し連れ訴えするから、
今日のところはひとまず帰ってくれ
と言うので、
腹の虫が納まらないまま金太郎は長屋に引き上げ、
これも大家に報告すると、
こちらの大家も、
向こうに先に訴えられたんじゃあ、
てめえの顔は立ってもオレの顔が立たない
と、急いで願書を書き、
金太郎を連れてお恐れながらと奉行所へ。

さて、
これより名奉行、大岡越前守様のお裁きとあいなる。

お白州でそれぞれの言い分を聞くとお奉行様、
問題の金三両に一両を足し、
金太郎には正直さへの、熊五郎には潔癖さへのそれぞれ褒美として、
各々に二両下しおかれる。

金は、拾った金をそのまま取れば三両だから、
都合一両の損。

熊も、届けられた金を受け取れば三両で、
これも一両の損。

奉行も褒美に一両出したから一両の損。

従って三方一両損で、
これにて丸く納まるという、
どちらも傷つかない名裁き。

二人はめでたく仲直りし、
この後奉行の計らいで御膳が出る。

「これ、両人とも、いかに空腹でも、腹も身のうち。たんと食すなよ」
「へへっ、多かあ(大岡)食わねえ」
「たった一膳(=越前)」

【うんちく】

講談の落語化

文化年間(1804-18)から口演されていた古い噺です。
講談の「大岡政談もの」の一部が落語に脚色された
もので、さらにさかのぼると、江戸初期に父子で
名奉行とうたわれた板倉勝重(1545~1624)・
重宗(1586~1656)の事蹟を集めた「板倉政要」中の
「聖人公事の捌(さばき)」が原典です。

大岡政談

落語のお奉行さまは、たいてい大岡越前守と
決まっていて、主な噺だけでも「大工調べ」「帯久」
「五貫裁き」「小間物屋政談」「唐茄子屋政談」と、
その「出演作品」はかなりの数です。

実際には、大岡忠相(おおおか・ただすけ、1677~
1751)が江戸町奉行職にあった享保2年~元文元年
(1717-36)に、自身で担当したおもな事件は
白子屋事件くらいで、有名な天一坊事件ほか、
講談などで語られる事件は
ほとんど、本人とはかかわりありません。

伝説だけが独り歩きし、講釈師や戯作者の手になった
「大岡政談実録」などの写本から、百編近い
虚構の逸話が流布。それがまた「大岡政談」となって
講談や落語、歌舞伎に脚色されたわけです。

古い演出

明治の三代目春風亭柳枝は、このあとに
「文七元結」を続ける連作速記で、全体を
「江戸っ子」の題で演じています。

柳枝では、二人の当事者の名が、八丁堀岡崎町の
畳屋・三郎兵衛と、神田江川町の建具屋・長八と
なっていて、時代も大岡政談に近づけて
享保のころとしています。

また、長八が金を落としてがっかりするくだりを入れ、
オチの部分を省くなど、現行とは少し異なります。

昭和に入って八代目三笑亭可楽が得意とし、
その型が現在も踏襲されています。

召し連れ訴え

「大家といえば親も同然」
と、落語の中でよく語られる通り、大家(家主)は、
店子に対して絶対権力を持っていました。

町役として両御番所(南北江戸町奉行所)、大番屋
などに顔が利いた大家が、店子の不正をお上に
上書を添えて「お恐れながら」と訴え出るのが
「召し連れ訴え」です。もちろん、この噺のように
店子の代理人として、共々訴え出ることもありました。

十中八九はお取り上げになるし、そうなれば判決も
クロと出たも同然ですから、芝居の髪結新三のような
したたかな悪党でも、これには震え上ったものです。

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