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2004.11.03

七段目(しちだんめ)

七段目

生活すべてが芝居の調子。マニアっていうやつは、いつの時代も……。

若だんなが常軌を逸した芝居マニアで、
家業そっちのけ。

四六時中芝居小屋に入り浸り、
何をやっても芝居のセリフになってしまう。

今日も朝から帰らないので、
だんなが番頭に愚痴をこぼしている。

「今日という今日はみっちり小言を言います」
とカンカンに怒るのを番頭がなだめているところへ、
当の若だんなが意気揚々とご帰還。

しかっても蛙のツラに何とやらで
「遅なわりしは拙者が不調法」
と忠臣蔵・三段目の判官気取り。

あきれ果てて二階へ追い払うと、
早速
「とざい、とーざーい」
と金切り声を張り上げる。

閉口しただんな、
小僧の定吉に止めてこいと命じたが、
定吉も悪のりして
「やあやあ若だんな、芝居の真似をやめればよし、
いやだなんぞとじくねると、とっつかめえて……」
と忠臣蔵・道行の鷺坂伴内のパロディー。

これが逆効果で、
若だんなは仲間ができたと大喜び。

一緒に芝居をやろうと聞かない。

定吉ももともと芝居狂なので、
とうとう乗せられ、
忠臣蔵・七段目・茶屋場の
平右衛門とお軽の場面を二人でやる羽目に。

やるからには衣装を整えようと若だんな、
赤い長襦袢と帯のしごき、
手拭いの姉さんかぶりで定吉に女装させたのはいいが、
平右衛門の自分が丸腰ではと、
床の間の本身の刀を持ち出したから定吉は驚いた。
やめると言うのを、
決して抜かないからと、
刀の鯉口をコヨリで結んでやっとなだめすかす。

足軽の平右衛門が、
妹・お軽が仇討ちの大事を知ったことを悟り、
秘密露顕を恐れて、自分の手で始末しようと決心するところで、
だんだん若だんなの目がすわってきたので、
定吉はびくびく。

とうとう恐れていた事態。

「あなた、抜いちゃいけませんったらッ」

もう何も耳に入らない若だんな、
コヨリをあっという間にぶっちぎり
「妹、こんたの命ァ、兄がもらったッ」

抜き身を振り回すからたまらない。

定吉、逃げる拍子に階段からゴロゴロゴロ。

「おい、定吉、しっかりしろ」
「ハア、私には勘平さんという夫のある身」
「馬鹿野郎。小僧に夫があってたまるか。
変な格好をして、さては二階であの馬鹿と芝居ごっこをして、
てっぺんから落ちたか」
「いえ、七段目」

【うんちく】

「忠臣蔵」のパロディー

全編、浄瑠璃・歌舞伎でおなじみの
「仮名手本忠臣蔵」のパロディーです。

江戸、大坂のような都市部の人々なら、
特にこの若だんなのような芝居狂でなくとも、
芝居の「忠臣蔵」のセリフや登場人物くらいは
隅々まで頭に入っていて、日常会話の一部にさえ
なっていました。

「とざい、とーざい」は「東西声」といい、
「仮名手本忠臣蔵」開幕の前に
からくり人形が観客に挨拶する掛け声。

定吉の「芝居の真似を……」は
四段目の切、清元舞踊「道行旅路花婿」の
道化敵・鷺坂伴内のセリフ、
「やあやあ勘平、お軽をこっちへ渡さばよし、
いやだなんぞとじくねると……」
のもじりです。

騒動の元になる後半の
大立ち回りは、七段目・祇園一力茶屋の場で、
密書を読んで仇討ちの計画を知った
遊女・お軽を、身請けの後に殺そうという
大星由良之助(大石内蔵之助)の腹を、
お軽の兄・寺岡平右衛門が察し、
妹を手に掛けた手柄で、同志に加えて
もらおうとする見せ場です。

ほかに登場する芝居

この噺でパロディーギャグに使われる芝居は、
「忠臣蔵」以外は演者によって変わります。

若だんなが「菅原伝授手習鑑」・「車引」の
「そのくるまァ、やァらァぬゥー」
という決めゼリフで人力車を止めたり、
おやじにぶたれて、
「こりゃこのおとこの、生きィづらァをー」
と、「夏祭」の団七のセリフで
うなったりするギャグは、
大方の落語家が入れますが、
観客が歌舞伎をよく理解していないとウケません。

東西とも、芝居のクライマックスは、
下座の鳴り物を使って、にぎやかに演じます。

「七段目」演者と演出

芝居ばなしの素養がないとできない噺で、
故人では先代三遊亭円歌、先代雷門助六などが
軽妙に演じ、現役では、
三遊亭円弥、春風亭小朝、林家正雀ほかの
レパートリーになっています。

大阪でも古くから演じられ、
二代目立花家花橘が得意にしていたのを
現・桂米朝が継承し、桂吉朝(逝った)、桂文珍ら
後進に伝えています。

最後のオチは、古い型では
「七段目から落ちたか」
「いえ、てっぺんから」
と逆で、
現在でも米朝はこの型でサゲます。

おすすめCD七段目

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