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2004.11.03

新聞記事(しんぶんきじ)

新聞記事

新聞が新鮮だった時代の噺。前座がよくやってます。

慌て者で少しぼーっとした八五郎。

ご隠居のところでバカを言っているうちに、
「おまえ、新聞は読むか」
と聞かれる。

「へえ、月初めに一月分」
「そりゃ古新聞だろ。じゃ、まだ今朝のを見てないな」

急に隠居の声が低くなって、
「おまえの友達の天ぷら屋の竹さんが、
昨夜夜中に泥棒に殺された」
という。

竹さんが寝ていると、
枕元でガサガサ物音がするので電気をつけると、
身の丈六尺はあろうという大男。

そいつがギラリと日本刀を抜いて、
「静かにしろ」
と脅したが、
竹さん、なまじ剣術の心得があるものだから、
護身用の樫の棒を取るとピタリと正眼に構えた。

泥棒は逆上して、ドーンと突いてくる。
竹さん、ヒラリとかわして馬乗りになり、
縛ろうとすると、
泥棒がのんでいたあいくちで胸元をグサッ! 

「あっ」
と後ろへのけぞって一巻の終わり。

家は右往左往の大騒ぎで、
そのすきに泥棒は逃げ出した。

しかし、悪いことはできないもので、
五分たつかたたないうちにアゲられた。

それもそのはず、天ぷら屋……。

何のことはない、落とし噺でからかわれただけ。

ところが八五郎、これを聞いてすっかり感心し、
自分もやってみたくなって、
当の本人の家で
「天ぷら屋の竹が殺されたよ」
とやって、ほうほうの体で逃げ出した。

それでもまだ懲りずに、
もう一人のところへ上がり込み、
隠居の
「おい、ばあさん、八っつあんが来たよ。茶を出してやんな」
のセリフからそっくり始めたから、
「おい、何でウチの女房をばあさんにしやがるんだ」
とケンツクを食わされてミソをつける。

こうなればもう乗りかけた船と、
強引に殺人事件を吹きまくるが、
ところどころおかしくなり、
泥棒の身の丈が一尺六寸になったり、
あいくちが出てこないで包丁になったり、
竹さんがヒラリとタイをかわした、
のタイが思い出せずに、
二つ並んでいる→布袋大黒→恵比寿様→釣竿→魚→鯛で
連想ゲームまでやってのける。

ようやく最後の、
五分たつかたたないうちに、
というところまで行き着いたが、
またも肝心の「あげられた」が出ない。

四苦八苦していると、
向こうが先に
「アゲられただろ。天ぷら屋だからな」
とやってしまった。

それを言いたいためだけに
連想ゲームまで演じたのだから、立つ瀬がない。

「ところでおめえ、
その話の続きを知ってるかい? 
竹さんのかみさんが、
亭主が死んで、もう二度とだんなは持たないと、
尼さんになったてえのは」

「どうして」
「もとが天ぷら屋のかみさんだけに、衣をつけたがらあ」

【うんちく】

上方落語の改作

昭和初期に初代昔々亭桃太郎が、
「百田芦生」の筆名で作ったものです。

上方の「阿弥陀ヶ池」の改作で、
桃太郎は元ネタの後半の筋立てをうまく取り入れ、
東京風にすっきり仕上げています。

桃太郎没後は先代柳亭痴楽に継承され、
ついで三遊亭円歌のレパートリーになりました。

ギャグも豊富で、筋立ても面白いので、
最近は若手も手がけるようになりました。

阿弥陀ヶ池

日露戦争後に初代桂文屋(1867~1909)が
作ったといわれ、今も上方落語の代表作となっています。

「新聞記事」と筋は似ていますが、ヨタ話のネタの
主人公は戦争未亡人の尼さん。忍んで来る泥棒が
偶然夫の元部下で、それが分かって許しを請うと、

「おまえが来たのも仏教の輪廻。誰かが行けと
教えたのであろう」
「阿弥陀が行け言いました」

という、尼寺のある場所(阿弥陀ヶ池のほとり)
と掛けた洒落話で隠居にだまされる筋立てです。

桃太郎のこと

作者の先々代・昔々亭桃太郎(1910~70)は
柳家金語楼の実弟です。
昭和初期から戦後にかけ、

「桃太郎さんでございます」

という開口一番のフレーズとともに、
「桃太郎後日」など自作自演の
明るい新作落語で親しまれました。

噺のカンどころ

「おうむと呼ばれる、くり返しの面白さで
笑わせるはなしだけに、しこみ、つまり
前半の部分の演じ方がむずかしいところなのです」

             (現三遊亭円歌)

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