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2004.12.12

うどん屋(うどんや) 落語

これは、ついてないうどんやの噺です。 この1枚:うどん屋

ある寒い夜、
屋台の鍋焼きうどん屋が流していると、
酔っぱらいが
「チンチンチン、えちごじしィ」
と唄いながら、千鳥足で寄って来る。

屋台をガラガラと揺すぶった挙げ句、
おこした火に手をかざして、
長々とからむ。

「おめえ、世間をいろいろ歩いてると
付き合いも長えだろう。
仕立屋の太兵衛ってのを知ってるか」
「いえ、存じません」
から始まって、
太兵衛は付き合いがよく、
かみさんは愛嬌者、
一人娘の美ィ坊は歳は十八でべっぴん、
今夜婿を取り、祝いに呼ばれると上座に座らされて茶が出て、
変な匂いがすると思うと桜湯で、
家のばあさんはあんなものをのんでも当たらないから不思議な腹で、
床の間にはおれが贈ったものが飾ってあって、
娘の衣装は金がかかっていて、
頭に白い布を巻いて
「おじさん、さてこの度は」
と立ってあいさつして、
この度はなんて、よっぽど学問がなくちゃあ言えなくて、
小さいころから知っていて、
おんぶしてお守りしてやって、
青っぱなを垂らしてぴいぴい泣いていたのが立派になって、
ああめでてえなあうどん屋
というのを二度リピート。

水をくれというから、
へいオシヤですと出せば、
水に流してというのを、
オシヤに流してって言うか馬鹿野郎とからみ、
やたらに水ばかりガブガブのむから、
うどんはどうですとそろそろ商売にかかると、
タダかと聞く。

「いえ、お代はいただきます」
「それじゃ、おれはうどんは嫌えだ。あばよッ」

今度は女が呼び止めたので、
張り切りかけると
「赤ん坊が寝てるから静かにしとくれ」

どうも今日はさんざんだとくさっていると、
とある大店の木戸が開いて「うどんやさん」と細い声。

ははあ、奥にないしょで奉公人が
うどんの一杯も食べて暖まろうということかとうれしくなり、
「へい、おいくつで」
「一つ」

その男、
いやにかすれた声であっさり言ったので、
うどん屋はがっかり。

それでも、ことによるとこれは斥候で、
うまければ代わりばんこに食べに来るかもしれない、
ないしょで食べに来るんだから、
こっちもお付き合いしなくては
と、うどん屋も同じように消え入るような小声で
「へい、おまち」

客は勘定を置いて、
またしわがれ声で、
「うどん屋さん、あんたも風邪をひいたのかい」

【うんちく】

小さん三代の十八番

大阪で「風邪うどん」として
演じられてきたものを、明治期に
三代目小さんが東京に移植。

その高弟の四代目小さん、七代目可楽を経て
戦後は五代目小さんが磨きをかけ、
他の追随を許しませんでした。

酔っ払いのからみ方、冬の夜の凍るような
寒さの表現がポイントとされますが、
五代目は余計なセリフや、七代目可楽のように
炭を二度おこさせるなどの演出を省き、
動作のみによって寒さを表現しました。

見せ場だったうどんをすする仕草とともに、
五代目小さんによって、「うどんや」は
より、見て楽しむ要素が強くなったわけです。

原話はマツタケ売り

安永2年(1773)刊の笑話本「近目貫」中の
「小ごゑ」という小ばなしが原話ですが、
その設定は、男はマツタケ売り、客は娘と
なっています。

改作「支那そば屋」

大正3年の二代目柳家つばめの速記では、
酔っ払いがいったん食わずに行きかけるのを
思い直してうどんを注文したあと、
さんざんイチャモンを付けたあげく、
七味唐辛子を全部ぶちまけてしまいます。

これを、昭和初期に六代目春風亭柳橋が
応用し、軍歌を歌いながらラーメンの上に
コショウを全部かけてしまう、改作
「支那そば屋」としてヒットさせました。

夜泣きうどん事始

東京で夜店の鍋焼きうどん屋が現れたのは
明治維新後。
したがってこの噺は
どうしても明治以後に設定しなければならないわけです。

読売新聞の明治14年(1881)12月26日付に、

「近ごろは鍋焼饂飩が大流行で、夜鷹蕎麦
とては喰ふ人が少ないので、府下ぢうに
鍋焼饂飩を売る者が八百六十三人あるが、
夜鷹蕎麦を売る者は只(たっ)た十一人で
あるといふ」
(槌田満文著「明治大正風俗辞典」角川選書)

とあります。
「夜鷹そば」(→「時そば」)に代わって
「夜泣きうどん」という呼び名も流行しました。
三代目小さんが初めてこの噺を演じたときの題は、
「鍋焼うどん」でした。

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