« 竃幽霊(へっついゆうれい)  落語 | トップページ | 円熟扇遊、豪快市馬! »

2005.01.30

浮世根問(うきよねどい)  落語

「根問」とは、ルーツを尋ねること。さかしげながきの専売特許ですな。

三度に一度は他人の家で飯を食うことを
モットーとしている八五郎。

今日もやって来るなり
「お菜は何ですか?」
と聞く厚かましさに、隠居は渋い顔。

隠居が本を読んでいるのを見て八五郎、
「本てえのはもうかりますか」
と聞くので
「馬鹿を言うもんじゃない。もうけて本を読むものじゃない。
本は世間を明るくするためのもので、
おかげでおまえが知らないことをあたしは知っているのだから、
何でも聞いてごらん」
と隠居が豪語する。

そこで八五郎は質問責め。

まず、今夜嫁入りがあるが、
女が来るんだから女入りとか娘入りと言えばいいのに、
なぜ嫁入りかと聞くと、隠居
「男に目が二つ、女に目が二つ、二つ二つで四目入りだ」
「目の子勘定か。八つ目鰻なら十六目入りだ」

話は正月の飾りに移って
「鶴は千年亀は万年というけど、鶴亀が死んだらどこへ行きます?」
「おめでたいから極楽だろう」
「極楽てえのはどこにあります?」
「西方弥陀の浄土、十万億土だ」
「サイホウてえますと?」
「西の方だ」
「西てえと、どこです?」

隠居、うんざりして、
「もうお帰り」
と言っても八五郎、御膳が出るまで頑張ると動じない。

この間、岩田の隠居に
「宇宙をぶーんと飛行機で飛んだらどこへ行くでしょう」
と聞くと、
「行けども行けども宇宙だ」
とゴマかすので、
「じゃ、その行けども行けども宇宙をぶーんと飛んだらどこへ行くでしょう?」

行けどもぶーん、行けどもぶーんで三十分。

向こうは喘息持ちだから、だんだん顔が青ざめてきて、
「その先は朦々(もうもう)だ」
「そんな牛の鳴き声みてえな所は驚かねえ。そこんところをぶーんと飛んだら?」
「いっそう朦々だ」
「そこんところをぶーん」

……モウモウブーン、イッソウブーンで四十分。

「そこから先は飛行機がくっついて飛べない」
「そんな蠅取り紙のような所は驚かねえ。そこんところをぶーん」
とやったらついに降参、五十銭くれた。

「おまえさんも極楽が答えられなかったら五十銭出すかい?」
「誰がやるか。極楽はここだ」
と隠居が連れていったのが仏壇。

こしらえ物の蓮の花、線香を焚けば紫の雲。
鐘と木魚が妙なる音楽というわけ。

「じゃ、鶴亀もここへ来て仏になりますか?」
「あれは畜生だからなれない」
「じゃ、何になります?」
「ごらん。この通りロウソク立てになってる」

●うんちく

根問ものについて

「根問」は上方ことばで「根掘り葉掘り
聞くこと」を意味します。

小さん二代が確立

上方落語の「根問もの」の代表作で、
明治期に東京に移植されたものです。
大阪では短くカットして前座の口ならしに
演じられますが、初代桂春団治の貴重な音源が
残ります。

明治時代にはまだ、東京では
「やかん」と「浮世根問」の区別が曖昧で、
たとえば、明治期の四代目春風亭柳枝の速記は
かなり長く、「無学者」の題で演じていますが、
色々な魚の名前の由来を聞いていく前半は
「やかん」と共通しています。

今回のあらすじは、師匠の四代目小さん譲りで
演じた、五代目柳家小さんのものをテキストに
しましたが、この二代の小さんが
大阪の演出を尊重し、この噺を
独立した一編として確立したわけです。

鶴亀のろうそく立て

オチの「ろうそく立て」については、
今では何のことやらさっぱり分からなく
なっているので、現行の演出では
カットし、最後までいかないことが
多くなっています。

これは、寺などで使用した燭台で、
亀の背に鶴が立ち、その頭の上にろうそくを
立てるものです。

鶴亀はいずれも長寿を象徴しますから、
要するに縁起ものでしょう。

目の子

「目の子勘定」といって、公正を期すため、
金銭などを目の前で見て数えることです。

黙阿弥の歌舞伎世話狂言「髪結新三」で、
大家・長兵衛が悪党の新三の目の前で
小判を一枚一枚並べる場面が有名です。

原話について

もっとも古いものは、京都辻噺の祖・
露の五郎兵衛(1643~1703)の遺著「露休置土産」
中の「鶴と鷺の評論」です。

これは、二人の男が鶴の絵の屏風について
論じ合い、一人が「この鳥は白鳥にしては
ちょっと足が長い」と言うと、もう一人が
「はて、訳もない。これは鷺だ」と反論します。
見かねた主人が、「これは鶴の絵ですよ」と
口をはさむと、後の男が、
「人を馬鹿にするでない。鶴なら、ろうそく立てを
くわえているはずだ」。

時代が下って、安永5年(1776)、江戸で刊行された
「鳥の町」中の小ばなし「根問」になると、

「鶴は千年生きるというが、本当かい?」
「そうさ。千年生きる証拠に、鎌倉には頼朝の
放したという鶴がまだ生きているじゃないか」
「じゃ、千年たったらどうなる?」
「死ぬのさ」
「死んでどうなる?」
「十万億土(極楽)に行くのさ」
「極楽へ行ってどうする?」
「うるさい野郎だな。ろうそく立てになるんだ」

と、ぐっと現行に近くなります。

|

« 竃幽霊(へっついゆうれい)  落語 | トップページ | 円熟扇遊、豪快市馬! »

落語のあらすじ 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60017/2741160

この記事へのトラックバック一覧です: 浮世根問(うきよねどい)  落語:

« 竃幽霊(へっついゆうれい)  落語 | トップページ | 円熟扇遊、豪快市馬! »