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2005.02.11

犬の目(いぬのめ)  落語

てんでふざけた噺です。こういう味わいは落語ならでは。 この1枚:犬の目

目が悪くなって、医者に駆け込んだ男。

かかった医者がヘボンの弟子でシャボンという先生。

ところが、その先生が留守で、
その弟子というのが診察する。

「これは手術が遅れたので、くり抜かなくては治らない」

さっさと目玉をひっこ抜き、
洗ってもとに戻そうとすると、
水でふやけてはめ込めない。

困って、縮むまで陰干しにしておくと、
犬が目玉を食ってしまった。

「犬の腹に目玉が入ったから、春になったら芽を出すだろう」
「冗談じゃねえ。どうするんです」

しかたがないので、
「犯犬」の目玉を罰としてくり抜き、
男にはめ込む。

今までのより遠目が利いてよかったが、
「先生、ダメです。これじゃ外に出られません」
「なぜ?」
「小便する時、自然に足が持ち上がります」

【うんちく】

初級編・オチはいろいろ

軽い「逃げ噺」なので、オチは演者によって
さまざまに工夫され、変えられています。
もっとも艶笑がかったものでは、

「夜女房と取り組むとき、自然に後ろから・・・」。

また、「まだ鑑札を受けていません」というのも
あります。原話である安永2年(1773)刊の
「聞上手」中の「眼玉」では、

「紙屑屋を見ると、ほえたくなる」

というものです。

中級編・明治時代での演じ方

明治・大正の名人の一人で、
故・六代目円生の大師匠にあたる
四代目橘家円蔵(俗に品川の円蔵)の
速記が残っています。

それによると、円蔵は男を清兵衛、医者を
横町の山井直という名にし、前半で、知り合いの
源兵衛に医者を紹介してもらうくだりを
入れています。ギャグも、

「洗うときはソーダを効かさないでくれ」
「枕元でヒョイと見回してウーンとうなる」

など、気楽に挿入していますが、「ソーダ」
のような化学用語に、いかにも文明開化の
新時代のにおいを感じさせるものの、今日では
古めかしすぎてクスリとも笑えないでしょう。

また、円蔵は、目が落ちそうだと訴えるのに、
中で目玉をふやかす薬を与えていて、その辺りも
現行と異なります。

中級編・三平の「貴重な」古典

昭和初期には、五代目三升家小勝が
「目玉違い」の題で演じましたが、
何といっても戦後最高の爆笑王・あの林家三平の、
「湯屋番」「源平盛衰記」と並んでたった
三席だけ残る、貴重な(?)古典落語の音源の
一つがこの「犬の目」です。

その内容については・・・・
言うだけヤボ、というものでしょう。

初級編・大らかなナンセンス

類話「義眼」のシュールで秀逸なオチに比べ、
「犬の目」では古めかしさが目立ち、そのためか
最近はあまり演じられないようですが、
こうした単純明快な馬鹿馬鹿しいナンセンスは
今では逆に貴重品で、ある意味では落語の
原点、エッセンスといえます。

新たなギャグやオチの創作次第では、まだまだ
生きる噺だけに、特に若い演者の方々の
テキストレジーに期待したいものです。

上級編・ヘボンと眼病

ヘボンは、明治学院やフェリス女学院を作った
アメリカ人の医者で熱心なキリスト教徒でした。

来日して、彼がまず驚いたのは、
日本人があまりにも眼病をわずらっていることでした。

これは、
淋菌の付いた指で目をこすって
「風眼」という淋菌性の眼病にかかる人が多かったからとのこと。

それだけ、日本人の性は、倫理もへったくれもなく、やり放題で、
その結果、性病が日常的だったわけでもあるのですがね。

衛生的にどうしたとかいう以前に、
性があんまりにもおおっぴらだったことの証明なんです。、

ですから、この噺が、
ヘボン先生の弟子の
シャボン先生(そんなのいるわけありません)が登場するのは
眼病とヘボン
という、当時の人ならすぐに符合するものを
くっつけて作っているところが、みそなんですね。

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コメント

突然失礼致します。
私は桂米朝師匠のこと、「犬の目」の落語の事を書きました。犬の目の話を簡潔にご紹介されているこの記事にトラックバックさせていただきました。よろしくお願い致します。

投稿: 青551 | 2008.06.12 03:45

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