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2005.02.14

町内の若い衆(ちょうないのわかいしゅう)  落語

すごいオチですね。さすが、下町のおかみさんは太っ腹!

長屋の熊五郎、
兄貴分の家に増築祝いに寄ると、
かみさんが、今組合の寄り合いに出かけて留守だと言う。

熊がお世辞ついでに、
兄貴はえらい、働き者でこんな豪勢な建て増しもできて、
組合だって兄貴の働き一つでもっているようなもんだ
と並べると、このかみさんの言うことが振るっている。

「あら、いやですよ。
うちの人の働き一つで、こんなことができるもんですか。
言ってみれば、
町内の皆さんが寄ってたかってこさえてくれたようなもんですよ」

熊公、この言葉のおくゆかしさにすっかり感心してしまい
「さすがに兄貴のとこのかみさんだ。
それに引き換え、うちのカカアは同じ女でありながら」
と、つくづく情けなくなった。

帰るといきなり
「どこをのたくってやがった」
とヘビ扱い。

てめえぐれえ口の悪い女はねえ、
これこれこういうわけだが、
てめえなんざこれだけの受け答えはできめえ
と説教すると
「ふん、それくらい言えなくてさ。言ってやるから建て増ししてごらん」

痛いところを突かれる。

形勢が悪いので
「湯ィへえってくる」
と言えば
「ついでに沈んじゃえ。ブクブク野郎」

熊公が腹を立て
「しらみじゃねえが、煮え湯ぶっかけてやろうかしらん」
と考えながら歩いていると、
向こうから八五郎。

そこで熊
「カカアの奴、ああ大きなことを抜かしゃあがったからには、
言えるか言えねえか試してやろう」
と思いつき、八五郎に
「オレが留守のうちに何かオレのことをほめて、
うちの奴がどんな受け答えをするか、聞いてきてくんねえ」
と頼む。

一杯おごる約束で引き受けた八五郎、
いきなり熊のかみさんに
「あーら、八っつあん、うちのカボチャ野郎、
生意気に湯へ行くなんて出てったけど、
どうせあんなツラ、洗ったってしょうがないのにさ。
あきれるじゃないか」

先制パンチを食らわされ、目を白黒させたが、
なにかほめなくてはとキョロキョロ見回しても、何もない。

畳はすりきれている。
土瓶は口がない。
かみさんは臨月で腹がせり出している。

これだと思って
「いやあ、さすがに熊兄ィ。
この物価高に赤ん坊をこさえるなんて、さすが働き者だ」

するとかみさんが
「あら、いやですよ。
うちの人の働き一つでこんなことができるものですか。
言ってみれば、町内の皆さんが寄ってたかって
こさえてくれたようなもんですよ」

【うんちく】

意外に珍しい、原話もそのまま!

たいていの噺は、
原典があっても、長い年月を経ているうちに
かなりストーリーが変わってくるものですが、
この「町内の若い衆」ばかりは
最古の原話とされる元禄3(1690)年刊の
笑話本「枝珊瑚珠」中の「人の情」以来、
大筋はまったく同じなんです。

この笑話集は、
江戸落語の始祖といわれる鹿野武左衛門(1649~99)の
手になるものですが、
それから1世紀を経た寛政10(1798)年刊の
「軽口新玉箒」中の「築山」になると、
オチの女房のセリフが、
「これも主(=主人)ばかりでなく、内の若い
衆の転合に(てんごう、=いたずらで)こしらえました」
と、余計エスカレートしています。
いかに、「若い衆がよってたかって」のオチに
インパクトが強かったか、わかろうというものです。

「こさえてくれた」の一言でご難

このたった一言のおかげで、哀れこの噺は
太平洋戦争中は禁演落語の一つに指定され、
「噺塚」に葬られました。

五代目古今亭志ん生がまだ
七代目金原亭馬生だったころの昭和10年2月、
レコードに吹き込んだ「町内の若い衆」の速記が残っています。
問題の最後の部分は、「こさえてくれた」ではとても検閲を通らず、
「育ててくれた」
という、面白くもおかしくもないものになっていますが、
この時点までは、この程度のゴマカシで、
エロ落語も辛うじて命脈を保っていたことになります。

もっと強烈!?「氏子中」

前述の志ん生の速記は、実はタイトルが
「氏子中(うじこじゅう)」で、長男の十代目金原亭馬生も
同じ題で「町内の若い衆」を演じています。
ところが、同じ不倫噺でも本来、この二つは別話なんですね。
「氏子中」という噺は、こんな具合です。

商用の旅から一年ぶりに帰った亭主の与太郎が、
女房が妊娠しているのを見て、驚いて問いただすと、
女房もさるもの、
氏神の神田明神に願掛けして授かった子だ
と、しらばっくれる。
親分に相談すると、
「子供が産まれたら、祝いに友達連中を呼んで
荒神さまのお神酒で胞衣(えな、=胎盤)を洗えば、
胞衣に本当の父親の紋が浮かび出る。
そいつに母子ともノシつけてくれてやれ」
そこで、言われたとおりにすると、
「神田大明神」の文字がくっきり。
疑いが晴れたかに見えたが、よくよく見ると横に「氏子中」。

こちらは、現三遊亭円楽がたまに演じることも。

おすすめCD町内の若い衆

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