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2005.03.08

松曳き(まつひき)  落語

殿と三太夫の粗忽コンビの珍なやりとり。聞き逃せませんぞぉ。

ある大名の江戸屋敷。

殿さまがそそっかしく、
家老の三太夫がこれに輪をかけて粗忽(そこつ)者。

同気相求めるで、
これが殿さまの大のお気に入り。

ある日、
殿さまが、
庭の築山の脇にある赤松の大木が月見の邪魔になるので、
泉水の脇にひきたいが、どうであるか
と、三太夫にご下問。

三太夫が
「あれはご先代さまご秘蔵の松でございますので、
もし枯らすようなことがありますと、
ご先代さまを枯らすようなものではないかと心得ます」
と諌めるが、
殿さまは、枯れるか枯れないかわからないから、
今屋敷に入っている植木屋に直接聞いてみたい
と、言い張る。

そこで呼ばれたのが
代表者の八五郎。

「早速御前へまかりはじけろ」
と言うからまかりはじけたら、三太夫が側でうるさい。

「あー、もっとはじけろ。頭が高い。
これ、じかに申し上げることはならん。
手前が取り次いで申し上げる」
「それには及ばん。直接申せ」
「はっ、これ八五郎。ていねいに申し上げろ」

頭に「お」、
終わりに「たてまつる」
をつければよいと言われて八五郎、
「えー、お申し上げたてまつります。
お築山のお松さまを、手前どもでお太いところへは、
おするめさまをお巻き申したてまつりまして、
おひきたてまつれば、お枯れたてまつりません。
恐惶謹言、お稲荷さんでござんす」

よくわからないが、
枯れないらしいと知って殿さまは大喜び。

植木屋に無礼講で酒をふるまっていると、
三太夫に家から急な迎え。

国もとから書状が来ているというので見ると、
字が書いていない。

「だんなさま、そりゃ裏で」
「道理でわからんと思った。
なになに、国表において、殿さま姉上さまご死去あそばし……」

これは容易ならぬ
と、慌てて御前へ。

殿さま
「何? 姉上ご死去? 
知らぬこととは言いながら、酒宴など催して済まぬことをいたした。
して、ご死去はいつ何時であった?」
「ははっ……とり急ぎまして」
「そそっかしいやつ。すぐ見てまいれ」

アワを食って家にトンボ返り。

動転して、
書状が自分の懐に入っているのも気がつかない。

やっと落ち着いて読みなおすと
「……お国表において、ご貴殿姉上さま……?」

自分の姉が死んだのを
殿と読み間違えた。

今さら申し訳が立たないので、
いさぎよく切腹してお詫びしようとすると、
家来が、殿に正直に申し上げれば、
百日の蟄居(ちっきょ)ぐらいですむかもしれないのに、
慌てて切腹しては犬死にになる
と止めたので、それもそうだと三太夫、しおしお御前へまかり出た。

これこれでと報告すると、
殿さま
「ナンジャ? 間違いじゃ? 
けしからんやつ。いかに粗忽とは申せ、
武士がそのようなことを取り違えて相済むと思うか」
「うへえ、恐れ入りました。
この上はお手討ちなり切腹なり、存分に仰せつけられましょう」
「手討ちにはいたさん。切腹申しつけたぞ」
「へへー、ありがたき幸せ」
「余の面前で切腹いたせ」

三太夫が腹を切ろうとすると、
しばらく考えていた殿さま、
「これ、切腹には及ばん。
考えたら、余に姉はなかった」

【うんちく】

「使いまわし」のギャグでも……

「そこつの使者」とよく似た、侍のそこつ噺です。
特に、職人がていねいな言葉遣いを強要され、
「おったてまつる」を連発するギャグは、
「そこつの使者」のほか、「妾馬」でも登場します。

ただ、基本形は同じでも、それぞれの噺で状況も
八五郎(「そこつの使者」では留五郎)の職業も
まったく違うわけです。

この「松曳き」では殿様の前でひたすらかしこまるおかしみ、
「そこつの使者」では後で地が出て態度がなれなれしくなる
対照のおかしさと、それぞれ細部は違い、演者の工夫もあって、
同じギャグを用いても、まったく陳腐さを感じさせないところが、
落語のすぐれた点だと思います。

殿様の正体は?

御前に出た八五郎に、三太夫が叱咤して
「まかりはじけろ」と言います。

「もっと前に出ろ」という意味ですが、実はこれは
仙台地方の方言だそうです。

とすれば、このマヌケな殿さまは、恐れ多くも
仙台59万5千石の太守・伊達宰相にあらせられる、
ということになりますが・・・・?

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対談 花録:猫久 市馬:片棒 仲入り 花録:厩火事 市馬:松曳き (こんな噺でご [続きを読む]

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