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2005.04.09

替わり目(かわりめ) 落語

おかしさの中にも妻への思い。悪くはありませんねえ。 この1枚:替わり目

ぐでんぐでんに酔っぱらって、
夜中に帰ってきた亭主。

途中で車屋をからかい、
家の門口で梶棒を上げさせたと思ったら、
もう下りた。

出てきた女房はハラハラし、
車屋に謝って帰ってもらうと、
ご近所迷惑だからいいかげんにしとくれ
と文句を言う。

亭主、聞かばこそ、
てめえは口の聞きようが悪い、
寝酒を出さないから声が大きくなる
と、からむ。

しかたなく酒を注ぐと、今度は
何かサカナを出せ
と、しつこい。

「何もありません」
「コウコがあったろう」
「いただきました」
「佃煮」
「いただきました」
「納豆」
「いただきました」
「干物」
「いただきました」
「じゃあ……」
「いただきました」

うるさくてしかたがないので、
夜明かしのおでん屋で何か見つくろってくるから
と、女房は出かける。

その間に、
ちょうどうどん屋の屋台が通ったから、
酔っぱらいのかっこうの餌食に。

ずうずうしく燗を付けさせた挙げ句、
てめえは物騒ヅラだ、夜遅くまで火を担いで歩きやがって、
このへんにちょくちょくボヤがあるのはてめえの仕業だろう
と、からむので、うどん屋はあきれて帰ってしまう。

その次は、新内流し。

むりやり都々逸(どどいつ)を弾かせ、
どうせ近所にびた一文借りがあるわけじゃねえ
と、夜更けにいい気になって
「恋にこがれーてー、鳴く蝉よりもォ……」
と、うなっているところへ女房が帰ってくる。

ようすを聞いてかみさん、顔から火が出た。

外聞が悪いので、
うどん屋の荷を見つけると、
「もし、うどん屋さーん」

「……おい、あそこの家で、おかみさんが呼んでるよ」
「へえ、どの家で?」
「あの、明かりがついてる家だ」
「あっ、あすこへは行かれません」
「なぜ?」
「今ごろ、お銚子の代わり目時分ですから」

【うんちく】

原話は薬売りが受難

文化9年(1812)、江戸で刊行された笑話本「福三笑」中の小ばなし
「枇杷葉湯(びわようとう)」が原話です。

これは、酔った亭主が枇杷葉湯(=暑気払いに効く甘い煎じ薬)売りに
無理やり燗をつけさせるくだりが、現行の落語の後半に一致し、
オチも同じです。

落語としては、大阪で
「銚子の代わり目」または「鬼のうどん屋」としてよく演じられたため、
夜泣きうどん屋の登場するくだりは、
当然その間に付け加えられたものでしょう。

志ん生が人情噺に「改作」

東京では大正期に二代目三升屋勝次郎が、音曲噺として
新内、都々逸をまじえて演じましたが、昭和に入り、
五代目古今亭志ん生が十八番にしました。

志ん生は後半(うどん屋にからむ部分)をカットし、
かみさんを買い物にやった亭主が、

「何だかんだっつっても、女房なりゃこそオレの用をしてくれるんだよ。ウン。
あれだって女は悪かねえからね……近所の人が
『お前さんとこのおかみさんは美人ですよ』って……
オレもそうだと思うよ。『出てけ、お多福っ』なんてってるけど、
陰じゃあすまない、すいませんってわびてるぐれえだからな本当に……
お、まだ行かねえのかおう……立って聞いてやがる。
さあ大変だ。元を見られちゃった」

と、ほほえましい夫婦の機微を見せて結んでいました。

年輪がいる噺

この志ん生演出は、自ら「元帳」と改題したことからも
伺われるように、優れた工夫でしたが、
晩年はサゲの「元を見られた」さえも省略していました。

今ではこのやり方がスタンダードになり、うどん屋の部分が
カットされるだけに、笑いは薄くなりますが、
一種の人情噺として定着し、独特の味わいを持つにいたっています。

ただし、これも志ん生なればこそで、凡百の演者では
クサくなったり、わざとらしくなったりするのはやむを得ないところ。

こうした行き方は、若い噺家では到底無理で、
芸はもちろん、実生活の年輪を経て、
コケが生えたような年齢になってようやく、
さまになってくるものなのでしょう。

映画で一席うかがう

これは、志ん生ファンにはよく知られていますが、
昭和24年の新東宝映画「銀座カンカン娘」で、
引退した噺家・桜亭新笑に扮した五代目志ん生(当時59歳)が、
ラストで甥夫婦(灰田勝彦・高峰秀子)の新婚の前途を祝うため、
「代わり目」を演じてみせます。

ちょうどかみさんを追い出すくだりで、汽車の時間があるから
早く立て、と目と仕種で二人を促し、
客だけになったあと、いい間で亭主の独白に入るあたりは、
後年の志ん生のイメージとはまた違った、
たたき上げた正統派の芸を感じさせました。

なお、志ん生はこの後も、
「ひばりの子守唄」(昭和26・大映)「息子の花嫁」(昭和27・東宝)
「クイズ狂時代」(昭和27・東映)「大日本スリ集団」(昭和44・東宝)
の4作品に特別出演しています。

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コメント

こんにちは。こちらの記事に、トラックバックさせてもらいました。

投稿: kyu3 | 2006.02.01 23:19

kyu3さま

どうもありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

               

投稿: たか | 2006.02.04 08:31

こんにちは。わざわざ私のブログにトラックバックしてくれて、ありがとうございます。 (^^)

投稿: kyu3 | 2006.08.26 23:53

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