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2005.04.27

高砂や(たかさごや) 落語

めでたい席での「高砂や」。これを落語流にすると、みょうちきりんな出来に。

八五郎が、質両替屋・伊勢久の婚礼に
仲人役を仰せつかった。

伊勢久と言えば財産家。

長屋住まいの八五郎が仲人とはちと不釣り合い。

これには、わけがある。

若だんなのお供で深川不動に参詣の帰り、
木場の材木町辺を寄り道した。

若だんな、そこの女にひとめぼれ。

八五郎がいっしょにいてまとまったので、
ぜひ八五郎に仲人を、
ということになったわけ。

八五郎、
隠居の所に羽織袴を借りにきた。

ついでに仲人の心得を教えてもらい、
「仲人ともなればご祝儀に
『高砂やこの浦舟に帆をあげて』ぐらいは
やらなくてはいけない」
と、隠居にさとされる。

謡などとは、無縁の八五郎はびっくり。

「ほんの頭だけうたえば、
あとはご親類方がつけるから」
との、隠居の言葉だけをたよりに、
「とーふー」
と、豆腐屋の売り声を試し声とし、
なんとか、出だしだけはうたえるようになった。

隠居からは羽織を借りて、
女房と伊勢久へ。

婚礼の披露宴なかばで、
「お仲人さまに、ここらでご祝儀をひとつ」
と、頼まれた八五郎、
いきなり
「とーふー」
と声の調子を試したあと、
「高砂」をひとくさりやって、
「あとはご親類方で」
と、言うと、
「親類一同不調子で、仲人さんお先に」

八五郎は、泣きっつら。

「高砂やこの浦舟に帆を下げて」
「下げちゃ、だめですよ」
「高砂やこの浦舟に帆をまた上げて」
などとやっているうち、
一同が巡礼歌の節で
「高砂や」をうたいだす。

一同そろって
「婚礼にご報謝(=巡礼にご報謝)」

【うんちく】

高砂って?

世阿弥の能で、
相生(あいおい)の松と高砂の浦(現・兵庫県高砂市)の砂が
夫婦であるという伝説に基づきます。

謡(うたい)の部分は
昔から夫婦愛、長寿の理想をあらわした歌詞として有名で、
「高砂」を朗々と吟詠するのは、
婚礼の席の祝儀には欠かせない儀式でした。

詞章は次のとおりです。

高砂や この浦舟に 帆を上げて
この浦舟に帆を上げて
月もろともに 出汐(いでしお)の
波の淡路の島影や 遠く鳴尾の沖過ぎて
はやすみのえに 着きにけり
はやすみのえに 着きにけり

四海(しかい)波静かにて 国も治まる時つ風
枝を鳴らさぬ 御代(みよ)なれや

あひに相生の松こそ めでたかれ
げにや仰ぎても 事も疎(おろ)かや
かかる代(よ)に住める 民とて豊かなる
君の恵みぞ ありがたき
君の恵みぞ ありがたき

巡礼歌

霊場の巡礼にうたうご詠歌で、短歌体(五七五七七)です。

オチの「巡礼にご報謝」は、
巡礼が喜捨を乞うときの決まり文句で、
歌舞伎の「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」で、
巡礼姿で笈鶴(おいづる)を背負った真柴久吉(=羽柴秀吉)が
南禅寺楼門上の石川五右衛門を見上げて言うセリフで有名です。

明治以来の演者

古い速記では、
「仲人役」と題した、明治32年の四代目柳亭左楽のものが残りますが、
謡が豆腐屋の売り声になるギャグはそれ以来、変わりません。

よくも百年以上も同じギャグを使い古しているものと、
つくづく感心します。

その後は、昭和に入って
八代目春風亭柳枝、六代目春風亭柳橋、
五代目柳家小さんがよく演じ、
それぞれ速記・音源がありますが、
現在では柳家小三治、三遊亭円弥がたまに演じるくらいでしょう。

いずれにしても古色蒼然、
若手がやりたい意欲のわく噺とも思えません。

オチの変遷

上方では、一同が謡をつけないので困って、
「浦舟」にかけて「助け舟」と叫ぶサゲで、
古くは東京でもこのやり方だったといいます。

明治中期から、あらすじのように
「巡礼にご報謝」とすることが多くなり、
前述の四代目左楽もこのオチです。

しかし、最近では当然ながらこのシャレが通じなくなり、
帆を上げたか下げたか忘れてしまったところで
「先祖返り」して「助け舟」とすることもあるようです。

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コメント

初めまして トラックバック どうもです
落語の「あらすじ」や「解説」を詳しく書かれているんですね 
とても参考になります
もしかしたら 今後 記事にリンクを張らせてもらうかもしれませんので
その時は よろしくお願いします
気が向いたら また読みに来て下さい ではでは

投稿: 16tons_5963 | 2005.05.02 16:17

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