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2005.06.26

親子酒(おやこざけ)  落語

のんべえ親子の愉快なお話です。 この1枚:親子酒

父子とも大酒のみの家。

先のあるせがれに間違いがあっては
と、おやじの方がお互いに禁酒の提案をする。

せがれも承知してしばらくは無事にすんだが、
十日目十五日目あたりになると、
そろそろ怪しくなってくる。

ちょうど、せがれがお呼ばれに出掛けた留守、
おやじは鬼の居ぬ間にと、かみさんに
「昼間用足しに出て、くたくたなんだが、
何かこう、疲れの抜けるものはないかい」
と、ねだる。

「じゃ唐辛子」
「金魚が目をまわしたんじゃねえ。
ひさびさだからその、一杯ぐらい……」

せがれが帰ったら言い訳できないと渋るのを、
むりやり拝み倒して銚子一本。

こうなると、もう一本だけ、もうちょっと、もう一本、もう半分、
しまいには
「持って来ォいッ」

結局ベロベロ。

「なにィ? 酔ってるって? ご冗談でしょう。
大丈夫ですったら大丈夫だよッ。
ナニ、あいつが帰ってきた? 早いね。
膳をかたづけて、お父さんは奥で調べ物してますって言って、
玄関で時間をつないどきなさい」

さすがにあわてて、
酔いをごまかそうと無理に座りなおし、
懸命に鬼のような顔を作って、障子の方をにらみつけている。

一方、せがれ。

こちらもグデングデンでご帰還。

なんでも、ひいきのだんながのめのめと勧めるのを、
男と男の約束ですからと断ると怒って、
強情張ると出入りを差し止めるというので意地になり、
のまないと言ったらのまないと突っぱねた。

「えらいッ、その意気でまず一杯ッ」
と乗せられて、結局、二人で二升五合とか。

二人で気まずそうににらめっこ。

おやじは無理ににらんで
「なぜそうお前は酒をのみたがる。
お婆さん、こいつの顔がさっきから三つに見えます。
化け物だね。こんな者に身代は渡せませんよ」
と言うと、せがれが
「あたしだって、こんなぐるぐる回る家は欲しくない」

【うんちく】

三百年来の飲兵衛噺

現存する最古の原話は、宝永4年(1707)刊で
露の五郎兵衛(→「おしの釣り」「笠碁」)作の笑話本
「露休置土産」中の「親子共に大上戸」で、
「親子茶屋」と並んで飲兵衛噺としては最古のものです。

原話では、「ぐるぐる回る家……」の後におやじが、
「あのうんつく(=馬鹿者)め、おのれが面(つら)は二つに見ゆるは」
と言うところでオチをつけています。

その後、安永2年(1773)刊の「坐笑産」中の「親子生酔」ほか、
いくつかの類話が見られますが、大筋は変わっていません。

重宝なマクラ噺

落語としては上方ダネで、短い噺なので、
もともと一席噺として演じられることは少なく、
酒の噺のマクラや、小咄の寄せ集めの
オムニバスの一編に用いられるなど、重宝な使われ方をしています。

演芸評論家の野村無名庵(1888~1945)が著書
落語通談」の中で紹介している柳派(柳家小さん系統)のネタ帳
「昔噺百々」(明治42年)には、426席が掲載されていますが、
この噺の演題はなく、「親子酒」という独立した題が付いたのも
大正以後の、かなり新しいことと思われます。

三遊亭円朝が明治期に「親子の生酔い」として
速記を残しているのは、珍しい例でしょう。

戦後は五代目古今亭志ん生、八代目三笑亭可楽、
五代目柳家小さんと、酒の噺が得意だった巨匠連が
一席物として演じましたが、
中でも志ん生は、長男・馬生、次男・志ん朝と、
実生活でも「親子酒」を地でいっていました。

「上戸」と「生酔い」

よく言われる「上戸」はむろん、瓶などに水を注ぐ道具からきています。
「大戸」「戸大」ともいいました。

「戸」は家の入口そのものを指し、
質のよいジョウゴできれいに水を注ぐように、
体内への入口である口から、
絶え間なく酒が胃の腑に流れ込む意味です。

なお、この噺は別題を「親子の生酔い」ともいいますが、
「生酔い」は、「生」が、「生乾き」など、それほど
程度が進まない状態を表すので、泥酔の一歩手前の
「ほろ酔い」を意味するという解釈があります。
しかし、噺の中の親子は、どう見ても
ベロンベロンとしか思えませんね。

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