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2005.07.04

看板のピン(かんばんのぴん)  落語

鉄火場が舞台の、珍しい噺。基本はオウムという類型ですね。

鉄火場で、若い衆が今日もガラッポン、
丁だ半だとやっている。

ところが今日は、
もうけた奴は先に帰り、
残ったのはピイピイになった連中ばかりで、
さっぱり場が盛り上がらない。

そこへ現れたのが、
この道では年季の入った親分。

景気付けに一つ胴を取ってもらいたい
と頼まれたので、
オレは四十二の時からバクチはやめているが、
てめえたちがそういうなら
と、壺皿の前に座る。

一っ粒の勝負で、
賽粒を一つ無造作に笊に投げ入れると、
上手の手から水が漏れたか、
粒が壺皿の外にポロリとこぼれ、一が出ている。

いっこうにそれに気づかないようで、
「さあ、張んな」

……このじじい、相当に耄碌してタガがゆるんだんだろう、
こいつはタダでいただきとばかり、
みんな一に張る。

「親分、本当にいいんですかい」
「何を言いやがる。そう目がそろったら、看板のこのピン(一の目のこと)は、
こうして片づけて……オレがみるところ、中は五だな」
「あれっ、これ看板だとよ」

壺の中は、ちゃんと別の粒。

五が出ていたので、一同唖然。

馬鹿野郎、オレだからいいが、
他の野郎なら銭は全部持ってかれちまう、
銭は返してやるから、これにこりたらバクチはするな
と、小言を言って帰ってしまう。

馬鹿な奴もいるもので、
これに感心して、自分もまねしたくてたまらなくなった。

別の賭場へ行って、
「オレは、バクチは四十二の時に止めた」
「てめえ、まだ二十六じゃねえか」

むりやり胴を取ると、
わざとピンをこぼして、
「さあ、張んな。みんな一か。そう目がそろったら、
看板のピンは、こうして片づけて」
「あれ、おい、ピンは看板かい」
「オレが見るところ、中は五だな。
みんな、これに懲りたらバクチは……あっ、中もピンだ」

【うんちく】

小さん代々のマクラ噺

もともと独立して演じられることは少なく、
三代目柳家小さんは「三で賽」、四代目小さんは「へっつい幽霊」、
若いころセミプロのばくち打ちだった三代目桂三木助は
「狸賽」と、それぞれバクチ噺のマクラにつけていました。

五代目小さんは、師匠・四代目直伝の噺を初めて独立させ、
「看板のピン」として磨きをかけました。
ほかには六代目三遊亭円生、大阪では、東京からの移植で
現・桂米朝が演じます。

なお、現行は、中のサイの目は「三」で演じられます。

一っ粒

「チョボイチ」ともいいます。
一個のサイコロを用い、出た目が当たると
賭金の4倍から5倍返しになるので、
ギャンブル性がより強いものです。

ほかにサイコロを三つ使う「狐チョボ」もあります。

鉄火

鉄火はプロの博徒、鉄火場は賭博場です。

もともと鉄火場の勝負には素人を入れなかったといいます。
むろん血の雨が降りやすいからで、
「鉄火」の語源も、場が白熱して焼けた鉄のように
熱くなることからとされています。

素人のバクチ好きは「白無垢鉄火(しろむくでっか)といい、
三代目桂三木助は「へっつい幽霊」のレコードで
説明抜きに使っていますが、今ではもちろん
通用しないでしょう。

ピン

サイコロの目の「一」のことで、
賭博用のサイコロでは、ピンの部分もすべて
黒塗りです。

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