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2005.08.14

短命(たんめい)/落語

                                                短命

美人と結婚するとろくなことがないという、ひがみ丸出しの噺です。

大店の伊勢屋の養子が、
来る者来る者たて続けに一年ももたずに死ぬ。

今度のだんなが三人目。
おかみさんは三十三の年増だが、
めっぽう器量もよく、どの養子とも夫婦仲よろしく、
その上、店は番頭がちゃんと切り盛りしていて、
なんの心配もないという、けっこうなご身分だというのに……
先代から出入りしている八五郎、
不思議に思って、隠居のところに聞きにくる。

「夫婦仲がよくて、家にいる時も二人きり、
ご飯を食べる時もさし向かい。原因はそれだな」

八五郎、なんのことだかわからない。

「おまえも血のめぐりが悪い。
いいかい、店の方は番頭任せ、財産もある。
二人でしょっちゅう朝から退屈して、
うまいもの食べて、暇があるってのは短命のもとだ」
「短命って何です?」
「命の短いのを短命、長ければ長命」
「じゃあなんですか、いい女だと、だんなは短命なんで?」
「まあ、そういうことかな」

早い話、冬なんぞはこたつに入る。
そのうちに手がこう触れ合う。
白魚を五本並べたような、透き通るようなおかみさんの手。
顔を見れば、ふるいつきたくなるいい女。
そのうち指先ではすまず、すーっと別の所に指が触って
……なるほど、これでは短命にもなるというもの。

三度同じ事を言わせてようやく納得した八五郎、
ついでにお悔やみの言い方も
「悲しそうな顔で口許でぼそぼそ言っていればそれでいい」
と、アドバイスしてもらい、
家に帰ると、女房が、早くお店に行けとせっつく。

その前に茶漬けをかき込んで、
というところでふと思いつき
「おい、夫婦じゃねえか。給仕をしろやい。
おい、そこに放りだしちゃいけねえ。オレに手渡してもらいてえんだ」

ブスっ面で邪険に突き出したかみさんの指と指が触れ
「顔を見るとふるいつきたくなるようないい女……あああ、オレは長命だ」

【うんちく】

短命

この噺のようなケースは、江戸時代には「腎虚(じんきょ)」とされました。

つまりはアッチの方が過ぎ、精気を吸い取られて
あえなくあの世行きというわけです。
男の精水(山田風太郎流だと「精汁」)は「腎水」とも呼ばれ、
腎臓が出所と誤って考えられていたことによります。

腎虚と内損(=酒による内臓障害、主に肝の病)は
二大道楽病とされ、それぞれ「のむ」「打つ」がもたらす災いです。
三道楽のうち、残る一つの「打つ」の結果は言うまでもなく「金欠病」ですが。

五代目古今亭志ん生の速記でも隠居が
「内損か腎虚とわれは願うなり、とも百歳も生きのびし上」
と、言っています。

思わずニヤリ

昔はこの程度でも艶笑落語のうちに入り、なかなか
高座には掛けにくかったといいますが、
現在は、ちょっと味のあるお色気噺として、普通に演じられます。

まあ、オトナの味わいというのか、過激な性描写が横行する現代では
以心伝心のやりとりは、むしろほほえましく、なかなかよろしいものです。

五代目古今亭志ん生、五代目小さんが得意にしていましたが、
志ん生は、最後のかみさんとの会話に
くすぐりを多く用いるなど工夫し、
サゲは「おめえとこうしてると、オレは長生きができる」
というものでした。

なお、サゲから別題は「長命」ですが、
噺の全体のプロットからしてやはり「短命」が妥当でしょう。

志ん生のギャグから

●その1

隠「二階へ、あの奥さんが上ってゆかァ」
八「ええ、ええ」
隠「二階には、だァれもいないやァ」
八「ええ」
隠「で、短命なんだよ」
八「二階にだァれもいないで、短命ですか?」
隠「そうだよ」
八「二階から、落っこちたんですかァ?」

●その2

八「え、二階に上ろうじゃねえか」
女「家にゃァ二階はないよ」
八「じゃあ、屋根へ」

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