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2005.08.14

道具屋(どうぐや)/落語

                                               道具屋

ご存じ、与太郎の商売。

神田三河町の大家・杢兵衛の甥の与太郎。
三十六にもなるが頭は少し鯉のぼりで、
ろくに仕事もしないで年中ぶらぶらしている。

この間、珍しくも商売気を出し、伝書鳩を売ったら、
自分の所に帰ってくるから丸もうけだとうまいことを考えたが、
鳥屋に帰ってしまってパー、という具合。

心配したおじさん、
自分が副業に屑物を売る道具屋をやっているので、
商売のコツを言い聞かせ、商売道具一切持たせて送りだす。

その品物がまたひどくて、
おひなさまの首が抜けたのだの、
火事場で拾った真っ赤に錆びた鋸だの、
はいてひょろっとよろけると、
たちまちビリッと破れる「ヒョロビリの股引き」だので、
ろくな物がない。まあ、元帳があるからそれを見て、
倍にふっかけて後で値引きしても二、三銭のもうけは出るから、
それで好きなものでも食いなと言われたので、
与太郎早くも舌なめずり。

やってきたのが蔵前の質屋・伊勢屋の脇。

煉瓦塀の前に、日向ぼっこしている間に売れるという、
昼店の天道干しの露天商が店を並べている。

いきなり
「おい、道具屋」
「へい、何か差し上げますか?」
「おもしれえな。そこになる石をさしあげてみろい」

道具屋のおやじ、度肝を抜かれたが、
ああ、あの話にきいている杢兵衛さんの甥で、
少し馬……と言いかけて口を押さえ、品物にはたきをかけておくなど、
商売のやり方を教えてくれる。

当の与太郎、
側のてんぶら屋ばかり見ていて上の空。

最初の客は大工の棟梁。

釘抜きを閻魔だの、ノコが甘いのと、符丁で言うからわからない。

火事場で拾った鋸と聞き、
棟梁は怒って行ってしまう。

「見ろ、小便されたじゃねえか」

つまり、買わずに逃げられること。

次の客は隠居。

「唐詩選」の本を見れば表紙だけ、万年青(おもと)だと思ったら
シルクハットの縁の取れたのと、ろくな代物がないので渋い顔。

毛抜きを見つけて髭を抜きはじめ、
「ああ、さっぱりした。伸びた時分にまた来る」

その次は車屋。

股引きを見せろと言う。

「あなた、断っときますが、小便はだめですよ」
「だって、割れてるじゃねえか」
「割れてたってダメです」

これでまた失敗。

お次は田舎出の壮士風。

「おい、その短刀を見せんか」

刃を見ようとするが、錆びついているのか、なかなか抜けない。

与太郎も手伝って、両方からヒノフノミィ。
「抜けないな」
「抜けません」
「どうしてだ」
「木刀です」

しかたがないので、
鉄砲を手に取って「これはなんぼか?」

「一本です」
「鉄砲の代じゃ」
「樫です」
「金じゃ」
「鉄です」
「馬鹿だなきさま。値(ね)じゃ」
「音はズドーン」

【うんちく】

あの円朝もやった

古くからある小咄を集めてできたものです。

前座の修行用の噺とされますが、
初代三遊亭円朝の速記も残っています。
「大」円朝がどんな顔でアホの与太郎を演じたのか
ぜひ聴いてみたかったところです。

切り貼り自在の前座噺

小咄の寄せ集めでどこで切ってもよく、
また、新しい人物(客)も登場させられるため
寄席の高座の時間調整には重宝がられます。

したがって、サゲ(オチ)は数多くあります。

明治の初代三遊亭円遊のは、
小刀の先が切れないので負けてくれと言われ、
「これ以上負けると、先だけでなく元が切れない(=原価割れ)」というものです。

そのほか、隠居の部分で切ったり、小便されたくだりで切ることもあります。
侍の指が笛から抜けなくなり、ここぞと値をふっかけるので
「足元を見るな」
「手元を見ました」というもの、
その続きで、指が抜けたので与太郎があわてて「負けます」と言うと
「抜けたらタダでもいやだ」とすることも。

八代目林家正蔵は、侍の家まで金を取りに行き、
格子に首をはさんで抜けなくなったので、
「そちの首と、身どもの指で差っ引きだ」
としていました。

天道(てんとう)干し

露天の古道具商で、昼店でむしろの上に
古道具、古書、荒物などを敷き並べただけの
零細な商売です。

実態もこの噺に近く、ほとんどゴミ同然でロクなものがなかったらしく、
お天道さま(=太陽)で虫干しするも同様なので
この名がつきました。

品物は、古金買いなどの廃品回収業者から
仕入れるのが普通です。

こうした露天商に比べれば、「火焔太鼓」の甚兵衛などは
ちゃんとした店舗を構えているだけ、ずっとましです。

ギャグあれこれ

●与太郎が伯父さんに、ねずみの捕り方を教える。
「わさびおろしにオマンマ粒を練りつけてね、ねずみがこう、
夜中にかじるでしょ。土台がわさびおろしだから
ねずみがすり減って、朝には尻尾だけ。これがねずみおろしといって」

●三脚を買いに来た客に。
「これがね、二つ脚なんで」
「それじゃ、立つめえ」
「だから、石の塀に立てかけてあるんです。
この家に話して、塀ごとお買いなさい」

●五代目柳家小さんでは、隠居が髭を剃りながら
与太郎の身の上を「おやじの墓はどこだ」まで長々聞く。
これを二回繰り返し、与太郎がそっくり覚えて先に言ってしまうという、
「うどんや」の酔っ払いのくだりと同パターンのリピートギャグ。

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