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2005.08.14

試し酒(ためしざけ)/落語

この噺の原型は、中国の笑い話だそうです。

ある大家の主人。
客の近江屋と酒のみ談義となる。

お供で来た下男久造が大酒のみで、
一度に五升はのむと聞いて、とても信じられないと言い争い。

挙げ句に賭けをすることになる。

もし久造が五升のめなかったら
近江屋のだんなが二、三日どこかに招待してごちそうすると取り決めた。

久造は渋っていたが、
のめなければだんなの面目が丸つぶれの上、
散財しなければならないと聞き
「ちょっくら待ってもらいてえ。おら、少しべえ考えるだよ」
と、表へ出ていったまま帰らない。

さては逃げたかと、
賭けが近江屋の負けになりそうになった時、
やっと戻ってきた久造
「ちょうだいすますべえ」

一升入りの盃で五杯、
息もつかさずあおってしまった。

相手のだんな、すっかり感服して小遣いをやったが、
しゃくなので
「おまえにちょっと聞きたいことがあるが、
さっき考えてくると言って表へ出たのは、
あれは酔わないまじないをしに行ったんだろう。
それを教えとくれよ」
「いやあ、なんでもねえだよ。
おらァ五升なんて酒ェのんだことがねえだから、
心配でなんねえで、表の酒屋へ行って、試しに五升のんできただ」

【うんちく】

ネタ元は英? 中?

親子二代の速記者・落語研究家の今村信雄(1894~1959)が
昭和初期にものした新作です。

ところが、この噺には筋がそっくりな先行作があります。
明治の異色の英国人落語家・初代快楽亭ブラックが
明治24年3月、「百花園」に速記を残した
「英国の落話(おとしばなし)」がそれで、
主人公が英国ウーリッチ(?)の連隊の兵卒ジョン、
のむ酒がビールになっている以外、まったく同じです。

このときの速記者が今村の父・次郎ということもあり、
今村はこのブラックの速記を日本風に改作したと思われます。

では、オリジナルはブラックの作または
英国産の笑話かというと、それも怪しいらしく、
さらにさかのぼって、中国(おそらく唐代)の笑話に
同パターンのものがあるともいわれます。
具体的な文献ははっきりしません。

結局、この種のジョークは気の利いた文才の持ち主なら
誰でも思いつきやすいということでしょう。
案外、世界中に類話は分布しているかもしれません。

小さん十八番

初演は七代目可楽で、その可楽の演出を
戦後、五代目柳家小さんが継承、ほぼ古典落語化するほどの
人気作にしました。

作者の今村自身も、著書「落語の世界」で、
「今(注:昭和31年現在)『試し酒』をやる人は、
柳橋、三木助、小勝、小さんの四人であるが、
(中略)中で小さん君の物が一番可楽に近いので、
今、先代可楽を偲ぶには、小産の『試し酒』を
聞いて(ママ)くれるのが一番よいと思う」
と、述べています。

飲兵衛噺を得意にしていた人だけに、
大杯をあおる場面の息の継ぎ方のうまさなど
今さら言うまでもありません。

その小さん門下を中心に、現在もよく演じられ、
上方の桂米朝のCDもあります。

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