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2005.08.13

締め込み(しめこみ) 落語

泥棒とせっかちな亭主の噺。オチは平凡ですが。

空き巣に入った泥棒、
火がおきていて、薬罐の湯がたぎっているので、
まだ遠くには出かけていないと、
大慌てで仕事にかかって大きな風呂敷包みをこしらえ、
ウンコラショと背負って失礼しようとしたところに主人が帰ってくる。

慌てて包みを放り出し、
台所の板を外して縁の下に避難した。

亭主は風呂敷包みを見て、
てっきりかみさんが間男と手に手を取って駆け落ちする算段だと勘違いし、
ちょうど湯から帰ってきた女房に
「このアマ。とんでもねえ野郎だ」
と、薬罐を投げた。

避けたので薬罐はひっくり返り、
縁の下の泥棒は煮え湯を浴びて
「アチッ」
と思わず飛び出し、けんかの仲裁に入る。

「やい、てめえが間男か」
「いえ、泥棒で」

盗みに入ったと白状したので、
夫婦は、これで別れずにすむと泥棒に感謝して、
酒をのませてやる。

「これを機会に、またちょくちょく」
「冗談じゃねえ。そうちょいちょい来られてたまるか」

泥棒が酔いつぶれて寝てしまったので、
しかたがねえと布団をかけてやり、
「おい、不用心でいけねえ。もう寝るんだから、表の戸締りをしろ」
「だって、もう泥棒は家に……」
「それじゃ、表からしんばりをかえ」

【うんちく】

さまざまなやり方

原話は、享和2年(1802)刊、京都で出版された
「新撰勧進話」中の「末しら浪」です。

原話も、筋は現行とまったく同じですが、オチは最後に亭主が
「それでは、また近いうちに夜おいでなさい」
と言う、マヌケオチになっています。

上方では「盗人のあいさつ」の題で演じられますが、
そのほか「盗人の仲裁」「泥棒と酒宴」「時の氏神」など、
いろいろな別題があります。

明治の四代目三遊亭円生と三代目柳家小さんという
両巨匠の速記があり、小さんの演出がのちの
八代目桂文楽、五代目古今亭志ん生まで受け継がれました。

昔から柳派、三遊派を問わず、結構ビッグネームが演じているわけです。

四代目円生では、人家に侵入するのを、
貧乏のあまりやかんまで質入れした侍にしましたが、
このやり方は現在伝わっていません。

文楽は一種の、客がセコなときにやる逃げ噺として演じ、
サゲまでいかずに「そうちょいちょい来られてたまるか」
の部分で切っていました。

泥棒

空き巣は、戸締りのしていない家に忍び入ることで、
「出来心」の項でも触れましたが、
ただのコソ泥なので情状酌量され、
初犯は敲(たた)き五十程度でお目こぼしでした。

敲きは厳密に数が数えられ、間違えて一つでも多くした場合は
担当した役人の方がけん責され、時にはクビになります。
天保のころ、実際にそういうことがあったとか。

一方、「盗賊」は心張棒をかってある家に侵入する賊で、
鬼平でおなじみの火盗改めのお掛りです。

出来心のコソ泥と違い、計画的なので
罪は重く、特に土蔵などを切り破った場合は
盗んだ額にかかわらず、首が飛ぶことが
多かったといいます。

【コラム】

 明治23年にやった4代目三遊亭円生の「締込」では、武士が雨宿りに入った家で薬缶を気に入り盗み出そうとするころ合い、夫婦げんかに巻き込まれて熱湯をかけられるという筋。この武士、前半では屋台のそばをただ食いなどして素行がよろしくない。この噺では、いつの間にか武士=泥棒となるおかしな構図。泥棒とやかんが、この噺のキーワードなのだ。江戸独特の噺だったらしい。

 明治30年にやった3代目柳家小さんの「閉め込み」になると、上方から「盗人の仲裁」をまぜ込んで、今日演じられる「締め込み」の原型。5代目古今亭志ん生や8代目桂文楽のは、小さんのを基にしているようだ。古今亭志ん朝になると、志ん生と文楽をうまくまぜ込んでいる。風呂敷包みから始まる亭主の嫉妬を通して、夫婦のねじ曲がった愛情がほの見える。泥棒と夫婦。三者の構図が鮮やかで、テンポのよい佳品に仕上がっている。また聴きたい。(古木優)

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