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2005.09.03

初天神(はつてんじん)/落語

                                               初天神

悪がきの上手をいく、ピンボケなすれたおやじの噺です。

新しく羽織をこしらえたので、
それをひけらかしたくてたまらない熊五郎。

今日は初天神なので、
早速お参りに行くと言いだす。

かみさんが、
それならせがれの金坊を連れていってくれ
と言うが、口八丁手八丁の悪がきで、
あれを買えこれを買えとうるさいのでいやだ
と言い争っていると、当の金坊が顔を出して
「家庭に波風が立つとよくないよ、君たち」

親を親とも思っていない。

仕事に行くんだとごまかすと
「うそだい、おとっつぁん、今日は仕事あぶれてんの知ってんだ」

挙げ句に、
「やさしく頼んでるうちに連れていきゃ、ためになるんだけど」
と親を脅迫するので、しかたなく連れて出る。

道々、
あんまり言うことを聞かないと、炭屋のおじさんに山に捨ててきてもらう
と脅すと
「炭屋のおじさんが来たら、逃げるのはおとっつぁんだ」
「どういうわけでおとっつぁんが逃げる」
「だって、借金あるもん」

弱みを全部知られているから、手も足も出ない。

そのうち案の定
「リンゴ買って、みかん買って」
と、始まった。

両方とも毒だ
と突っぱねると
「じゃ、飴買って」

飴はここにはない
と言うと
「おとっつぁんの後ろ」

飴屋がニタニタしている。

「こんちくしょう。今日は休め」
「冗談いっちゃいけません。今日はかき入れです。
どうぞ坊ちゃん、買ってもらいなさい」

二対一ではかなわない。

一個一銭の飴を、おとっつぁんが取ってやる
と言って
「これか? こっちか?」
と全部なめてしまうので、飴屋は渋い顔。

金坊が飴をなめながらぬかるみを歩き、
着物を汚したのでしかって引っぱたくと
「痛え、痛えやい……何か買って」

泣きながらねだっている。

飴はどうした
と聞くと
「おとっつぁんがぶったから落とした」
「どこにも落ちてねえじゃねえか」
「腹ん中へ落とした」

今度は凧(たこ)をねだる。

往来でだだをこねるから閉口して、
一番小さいのを選ぼうとすると、
また金坊と凧屋が結託。

「へへえ、ウナリはどうしましょう。糸はいかがで?」

結局、特大を買わされて、
帰りに一杯やろうと思っていた金を、全部はたかされてしまう。

金坊が大喜びで凧を抱いて走ると、
酔っぱらいにぶつかった。

「このがき、凧なんか破っちまう」
と脅かされ、金坊が泣きだしたので
「泣くんじゃねえ。おとっつぁんがついてら。ええ、どうも相すみません」

そこは父親で、熊さん平謝り。

そのうち、今度はおやじがぶつかって、
金坊
「それ、あたいのおやじなんです。勘弁してやってください。
おとっつぁん、泣くんじゃねえ。あたいがついてら」

そのうち、おやじの方が凧に夢中になり
「あがった、あがったい。やっぱり値段が高えのはちがうな」
「あたいの」
「うるせえな、こんちきしょうは。あっちへ行ってろ」

金坊、泣き声になって
「こんなことなら、おとっつぁん連れて来るんじゃなかった」

【うんちく】

オチが違う原話

後半の凧揚げのくだりの原話は、
安永2年(1773)、江戸で出版された笑話本
「聞上手」中の小咄「凧」ですが、
オチが若干違っています。

おやじが凧に夢中になるまでは同じですが、
子供が返してくれとむずかるので、
おやじの方のセリフで、
「ええやかましい。我(おまえ)を連れてこねばよかったもの(を)」
とサゲています。

ひねりがなく平凡なものですが、
古くは落語でもこの通りにやっていたようです。

文化年間から口演?

古い噺で、上方落語の笑福亭系の祖といわれる
初代松富久亭松竹(生没年不詳)が前項の原話をもとに
落語にまとめたものといわれています。

松竹は少なくとも文政年間(1818~30)以前の人とされるので、
この噺は大坂では文化年間(1804~18)にはもう
演じられていたはずです。

松竹の作ったと伝わる噺には、このほか
「松竹梅」「たちぎれ」「千両みかん」「猫の忠信」
などがあります。

東京には、比較的遅く大正に入ってから
三代目三遊亭円馬が移植しました。

極め付き!仁鶴の悪童

東京では現小三治、圓彌、
大阪では米朝、仁鶴が得意にしていますが、
サゲは同じでも上方の子供のこすっからさは際立っています。

たとえば、上方ではおやじが女のところへ行きたがっているのを
子供が知っていて、弱みを握っているという
設定で演じます。

また、初天神に出かける前に、子供が隣のおやじに
「おっかさんのところに、どこかのおじさんが来て……」
と、気を持たせる話をし、いいところでチョン切っては
イライラさせて、その都度金をせびり取るくだりがつきますが、
このシーンは現仁鶴が抱腹絶倒で、
ここまでえげつなく、オトナをなめ切っている餓鬼は
現在でもそうはいないのではと思わせます。

ところで、初天神って?

旧暦では一月二十五日。そのほか、
毎月二十五日が天神の祭礼で、
初天神は一年初めの天神の日をいいます。

現在でも同じ正月二十五日で、各地の天満宮が
参拝客で賑わいますが、
大阪「天満の天神さん」の、キタの芸妓のお練りは名高いものです。

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