« 一人酒盛(ひとりさかもり)/落語 | トップページ | よかちょろ/落語 »

2005.09.07

四段目(よだんめ)/落語

                                               四段目

「仮名手本忠臣蔵」のうち、四段目の、判官切腹の場を題材にした噺です。

小僧の定吉は、芝居狂。

今日も使いに出たきり戻らないので、だんなはカンカン。

この前、だんなが後をつけて、
芝居小屋に入るのを見届けているので、言い訳はきかない。

「今日こそはみっちり小言を言います」
と、だんなが待ち構えているのも知らず、
定吉、ご機嫌でご帰還。問いただされると、
「日本橋の加賀屋さんへ伺っておりまして、
『今日は伺いかねる用がありますから、両三日中に伺いますのでよろしく』
と、おっしゃいました」

と言い訳するが、当の加賀屋のだんなが
つい先刻まで来ていたのだから、とうにバレている。

それでもめげずに、
「あたしは芝居なんて嫌いです。男が白粉をつけてベタベタするなんて、
実にこの、けしからんもんで」

往生際が悪いので、だんなは一計を案じ、
そんなに嫌いなら、明日奉公人を残らず歌舞伎座に連れていくが、
お前は留守番だと言い渡す。

定吉が焦りだすのを見て、
今度の歌舞伎座の「忠臣蔵」は、
歌右衛門の師直(ものなお)と勘三郎の与市兵衛(よいちべえ)の評判がいいそうだ
とカマをかけると、たちまち罠にかかり
「女方の歌右衛門が敵役の師直なんぞ、やるわけがねえ。
あたしは今見てきました」。

「この野郎ッ。こういうやつだ。今日という今日は勘弁なりません」

二、三日蔵へ入れて、「出してはなりません」と厳命され、
定吉はとうとう幽閉の身。

しかたなく、今日見てきた忠臣蔵四段目・半官切腹の場を
一人芝居で演じて気を紛らわしているうち、車輪になって熱が入り、
「御前ッ」「由良之助かァ、待ちかねたァ」とやったところで、
腹が減ってどうしようもなくなった。

番頭が握り飯をこっそり差し入れてくれると約束したのに、
忘れてしまったらしく、いっこうに届かない。

こうなれば本格的に芝居をして空腹を忘れようと、蔵の箪笥(たんす)を探すと、
うまい具合に裃(かみしも)とお膳が出てきた。          

その上、ご先祖が差した九寸五分の短刀まであったから、
定吉、大喜びで、お膳を三宝代わりに
「力弥、由良之助は」
「いまだ参上、つかまつりませぬ」
「存上で対面せで、無念なと伝えよ。いざご両所、お見届けくだされ」
と、九寸五分を腹へ。

そこへ女中が様子を見にきて、定吉が切腹すると勘違い。

あわててご注進すると、だんなも仰天。

子供のことだから、腹がすいて変な料簡を起こしたんだ、
間違いがあってはならないと、
自分で鉢を抱えて蔵の前にバタバタバタ。

戸前をガラリと開けると
「ご膳(御前)ッ」
「蔵のうちで(由良之助)かァ」
「ははッ」
「待ちかねたァ」

【うんちく】

日本一の猪?

天明8年(1788)刊の笑話本「千年草」中の「忠信蔵」が原話で、
上方落語「蔵丁稚(くらでっち)」が東京に移されたものです。

原話の小咄では、商家の若だんなが丁稚を連れて
お呼ばれに行き、早く着きすぎたので二人とも腹ペコ。
そこで声色で忠臣蔵ごっこをして気をまぎらわそうとし、
熱が入って「いまだ参上……」のセリフになったとき
二階で「もし、御膳をあげましょう」の声。
若だんな「まま(飯)待ちかねたわやい」というもの。

上方の「蔵丁稚」は、船場の商家が舞台で、
筋は同じですが、現桂米朝では、だんなが
「雁治郎と仁左衛門が五段目の猪をやる。
日本一のイノシシや」
とだまします。

東京のやり方

明治32年の六代目桂文治の速記では、
「碁泥」につなげて演じられ、定吉が芝居小屋で
赤ん坊の尻をこっそりつねって泣かせ、そのたびに
あやそうと乳母が差し出す食べ物を失敬するという場面が
前についていますが、この部分は現在は省かれます。

昭和に入ってからは、八代目春風亭柳枝、
二代目(先代)三遊亭円歌がよく演じ、両者とも
音源がありますが、現在はそれほどは演じられないようです。

仮名手本忠臣蔵

人形浄瑠璃としては赤穂浪士の討ち入りから
半世紀ほどを経た寛延元年(1748)8月、
大坂竹本座で初演されました。

竹田出雲・並木千柳・三好松洛の合作で、
歌舞伎では翌寛延2年2月、江戸・森田座の上演が
タッチの差でもっとも早いようです。
記念すべき初代の大星由良之助役は山木京四郎、
塩冶判官役は花井才三郎と、記録にあります。

四段目・判官切腹の場は、前段の
高師直(こうのもろのう=吉良上野介)への刃傷で
切腹を命じられた塩冶判官(えんやはんがん=浅野内匠頭)が
九寸五分の短刀を腹に突き立てたとたん、
花道からバタバタと大星由良之助
(=大石内蔵助)が駆けつける名場面です。

江戸では、「忠臣蔵」を知らぬ者などないので、
単に「蔵」だけで十分通用しました。

「四段目」の改作と類話

二代目三遊亭円歌が芝居を現代風に野球に代え、
「野球小僧」と改作したものを演じていました。

また、上方では、発端は「蔵丁稚」と同じですが、
番頭が店の金を使い込んで女と芝居を見ていることを
丁稚がだんなにバラし、番頭がクビになる
「足あがり」があります。

なお、「忠臣蔵」を題材とした噺は多く、
「二段目」「五段目」「六段目」「七段目」「九段目」についても
同題の噺があるほか、
十段目についても艶笑小咄「天河屋義平」がありますが、
現在演じられるのはこの「四段目」と「七段目」くらいで、
たまに別題「吐血」の「五段目」が蛙茶番」ほか、
芝居を扱った噺のマクラに振られます。

おすすめCD四段目

|

« 一人酒盛(ひとりさかもり)/落語 | トップページ | よかちょろ/落語 »

落語のあらすじ 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60017/5826176

この記事へのトラックバック一覧です: 四段目(よだんめ)/落語:

« 一人酒盛(ひとりさかもり)/落語 | トップページ | よかちょろ/落語 »