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2005.12.13

安産(あんざん)/落語

食と健康のバザール(a-style)

粗忽者が登場する、短いお噺でーす。

粗忽者の熊五郎。

湯に行ったら尻がかゆいのでかこうとして、
隣の金さんの尻をつねってけんかになり、
金さんがとっくに出てしまっているのに、
まだあやまっていたというほど。

それが、かみさんの臨月ともなると
普段にも増してソワソワ落ちつかない。

いよいよ産気づき、
八十歳の産婆を頼んだが、
産婆は潮時を心得ていて、なかなかやって来ないにじれて、
湯を沸かすのに薪の代わりにゴボウをくべてしまった。

やっと婆さんが到着。

ご利益(りやく)があるからと、
塩釜さまの安産のお札、梅の宮さまのお砂、
水天宮さまの戌の日戌の月戌の日のお札から、
どういうわけか寄席の半札まで、やたらと札ばかり並べる。

当人も、普段は神さまに手のひとつも合わせたことがないのに、
この時ばかりは
「南無天照皇太神宮さま、南無塩釜大明神、水天宮さま、
粂野平内濡仏、地蔵菩薩観音さま、
カカアが安産しましたら、お礼に金無垢(きんむく)の鳥居一本ずつ納めます」

これを聞いて、うなっているはずのかみさんが驚いた。

この貧乏所帯で額一つ上げられないのに、
と文句を言うと
「心配するねえ。
神さまだって金無垢の鳥居と聞きゃあ、面食らって御利益を授けらあ。
出る物が出ちまえば後は尻食らえ観音だ」

その甲斐あってか、赤ん坊が無事誕生。

「お喜びなさい。男の子ですよ」
「そいつは豪儀だ。ひとつ歩かしてみせてくれ」

【うんちく】

塩釜大明神

宮城県塩釜市の塩竃神社。
航海安全・安産の神です。

梅の宮さま

現・京都市右京区梅宮神社。安産の神。
お砂はお土砂(どしゃ)のことで、
加持祈禱で清めた砂。

生命を蘇らせる力があるとされます。

粂野平内濡仏

三代将軍・家光のころ、
首斬り役人を務めていた(一説には辻斬り)
粂野(久米)平内(?-1683)は、のち出家して
万傘一擲(いってき)居士と称し、浅草の金剛院に入りましたが、
罪業消滅のため、往来に石像を立て、
諸人に踏みつけてもらいたいと遺言したので、
始めは浅草駒形堂前、
のちに浅草寺境内に像を立て、平内堂としました。

踏みつけと文(恋文)付けを掛け、文を奉納して
縁結びを祈願する男女が後を絶たなかったとか。
濡仏は、そのそばにある雨ざらしの観音・勢至両菩薩像です。

尻食らえ観音

困った時は観音を頼み、窮地を脱すると
「尻食らえ」と恩を仇で返す意味の俗語。

ただ、普通、「尻を食らえ!」と言う場合は、
「糞食らえ」と同義で、痛烈な罵言、捨てゼリフです。
司馬遼太郎の小説「尻啖(くら)え孫市」で、
このスラングがいっとき、リヴァイヴァルしました。

なお、一音違って「しりくらい観音」となると、
蔭間の尻、もしくは女郎の尻と、卑猥な意味になります。

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