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2005.12.13

按摩の炬燵(あんまのこたつ)/落語

ドクターシーラボ オンラインシーショップ

実に奇妙なこたつの噺です。

冬の寒い晩、
出入りの按摩(あんま)に腰を揉ませている、ある大店(おおだな)の番頭。

「年を取ると寒さが身にこたえる」
とこぼすので、
按摩が、
「近ごろは電気炬燵という、けっこうな物が出てきたのに、
おたくではお使いではないんですかい」
と聞くと、
「若い者はとかく火の用心が悪いから、
店を預かる者として、万一を考えて使わない」
と、いう。

番頭は下戸なので、
酒で体を暖めることもできない。

按摩は同情して
「昔から生炬燵といって、金持ちのご隠居が、
十代の女の子を二人寝かしておいて、その間に入って寝たという話があるが、
自分は酒は底なしの方で、酔っていい心持ちになると、
からだが火のように火照って、十分その生炬燵になるから、
ひとつ私で温まってください」
と、申し出た。

「いくらなんでもそれは」と遠慮しても、
「ぜひに」と言うので、番頭も好意に甘えることにし、
按摩にしこたま飲ませて、背中に足を乗せて行火(あんか)代わり。

おかげで、番頭は気持ちよさそうに寝入ってしまう。

ところが、
ようすを聞いた店の若い連中が、
我も我もと押し寄せたから、さあ大変。

ぎゅうぎゅう詰めで、我先にむしゃぶりついたから。

そのうるさいこと。

歯ぎしりする奴やら寝言を言う奴やらで、
さすがの「生炬燵」もすっかり閉口。

そのうち、十一になる丁稚(でっち)の定吉が、
活版屋の小僧とけんかしている夢でも見たか、
大声で寝言を言ったので
「ああ、かわいいもんだ」
と、思わず「しっかりやれ」
と、ハッパをかけたのが間違いのもと。

定吉、夢の中で
「何を言ってやがる。まごまごしやがると小便をひっかけるぞ」
と叫ぶが早いか、本当にやってしまった。

おかげで「炬燵」の周りは大洪水。

番頭も目を覚まし、
布団を替えたり寝巻きを着替えたりで大騒ぎ。

「せっかく温まったところを、定吉のためにまた冷えてしまった。
気の毒だが、もういっぺん炬燵になっとくれ」
「もういけません。今の小便で火が消えました」

【うんちく】

哺乳類なら、何でもコタツ?

原話は古く、寛文12年(1672)刊の笑話本
「つれづれ御伽草」中の「船中の火焼」です。
これは、大坂の豪商・鴻池が仕立てた、
江戸へ伊丹の酒を運ぶ、二百石積の
大型廻船の船中での出来事となっていて、
乗船している鴻池の手代が、冬の海上であまり寒いので、
大酒のみの水夫を頼んでぐでんぐでんに酔わせ、、
その男に抱きついて寝ることになります。

その後、元禄十一年(1698)刊の
「露新軽口ばなし」中の「上戸の火焼」、
明和5年(1768)刊の「軽口春の山」中の「旅の火焼」、
安永8年(1779)刊の「鯛味噌津」中の「乞食」と、
改作されながら現行の落語に近づきました。
「乞食」では、なんと犬を炬燵代わりにしますが、
このやり方は落語には伝わらず、やはり酔っ払いの
「人間ストーブ」に落ち着きました。

「黒門町」の珍品

上方落語を、三代目柳家小さんが
東京に移植したものです。
今回のあらすじは、小さんの円熟期・
大正11年の速記をもとにしました。

大阪では、初代桂春団治の十八番の一つで、
音源も残されていますが、
東京では、戦後は五代目古今亭今輔から移された
八代目桂文楽が得意にしていました。
現在では、あまり演じられなくなっています。

文楽演出は小さんのものと少し変わっていて、
番頭の方から按摩に頼む形を取っていました。

炬燵ことはじめ

櫓式の電気炬燵が発売されたのは戦後です。
したがって、速記(大正11年)にある電気炬燵は
どのようなものか不詳ですが、
電気ストーブの走りのようなものでしょうか。

炬燵は昭和の初期に至るまで、
やぐらの底に板を張って、移動可能の
土製の火いれを置いたもので、
行火と同じく炭火を用いたものでした。

明治以前では掘り炬燵。毎年旧暦10月の
初の亥の日を玄猪(げんちょ)と呼び、お厳重とも表記します。
この日から火の用心を厳重にするということでしょう。

民間ではこの日を「炬燵開き」とし、火鉢も出しました。
これを亥の子の祝いといい、
客に亥の子餅(ぼた餅)を配る習慣がありましたが、
節約を旨とする商家では、炬燵開きを遅らせて、
中亥の日(二度目の亥の日)としていました。

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