« 按摩の炬燵(あんまのこたつ)/落語 | トップページ | 石返し(いしがえし) 落語 »

2005.12.31

言い訳座頭(いいわけざとう)/落語

サントリー健康食品

甚兵衛夫婦は年を越せるか! それは座頭の舌先三寸しだいで。

借金がたまってにっちもさっちも行かず、
このままでは年を越せない長屋の甚兵衛夫婦。

大晦日、かみさんが、
口のうまい座頭の富市に頼んで、借金取りを撃退してもらうほかはない
と言うので、甚兵衛はなけなしの一円を持って早速頼みに行く。

富市、初めは金でも借りに来たのかと勘違いして渋い顔をしたが、
これこれこうとわけを聞くと
「米屋でも酒屋でも、決まった店から買っているのなら義理のいい借金だ。
それじゃああたしが行って断ってあげよう」
と、快く引き受けてくれる。

「商人は忙しいから、あたしがおまえさんの家で待っていて断るのは
無駄足をさせて気の毒だから」
と、直接敵の城に乗り込もうという寸法。

富市は
「万事あたしが言うから、おまえさんは一言も口をきかないように」
とくれぐれも注意して、
二人はまず米屋の大和屋に出かけていく。

大和屋の主人は、有名なしみったれ。

富市が頼み込むと、
今日の夕方にはなんとかするという言質をとってある以上待てない
と、突っぱねる。

富市は居直って
「たとえそうでも、
貧乏人で、逆さにしても払えないところから取ろうというのは理不尽だ。
こうなったら、ウンというまで帰らねえ」
と、店先に座り込み。

他の客の手前、大和屋も困って、
結局、来春まで待つことを承知させられた。

次は、薪屋の和泉屋。

ここの家は、富市が始終揉み療治に行くので懇意だから、
かえってやりにくい。

しかも親父は名うての頑固一徹。

ここでは強行突破で
「どうしても待てないというなら、
頼まれた甚さんに申し訳が立たないから、あたしこここで殺せ、さあ殺しゃあがれ」
と、往来に向かってどなる。

挙げ句、人殺しだとわめくので、
周りはたちまちの人だかり。

薪屋、外聞が悪いのでついに降参。

今度は、魚金。

これはけんかっ早いから、薪屋のような手は使えない。

「さあ殺せ」と言えば、すぐ殺されてしまう。

こういう奴は下手に出るに限る
というので、
実は甚兵衛さんが貧乏で飢え死にしかかっているが、
たった一つの冥土のさわりは、
魚金の親方への借金で、
これを返さなければ死んでも死にきれない
と、うわ言のように言っていると泣き落としで持ちかけ、これも成功。

ところが、
その当の甚兵衛が目の前にいるので、魚金
「患ってるにしちゃあ、馬鹿に顔色がいい」
と、きつい皮肉。

さすがの富市も慌てて、
熱っぽいから火照っているとシドロモドロでやっとゴマかした。

そうこうするうちに、除夜の鐘。ぼーん。

富市は急に、
「すまないが、あたしはこれで帰るから」
と、言い出す。

「富さん、まだ三軒ばかりあるよ」
「そうしちゃあいられねえんだ。
これから家へ帰って自分の言い訳をしなくちゃならねえ」

【うんちく】

明治の新作落語

かの漱石も絶賛した名人・三代目柳家小さんが
明治末に創作した噺です。

小さんは、四代目橘家円喬から
「催促座頭」という噺(内容不明)があるのを聞き、
それと反対の噺をと思いついたとか。
してみると、「催促座頭」は、文字通り借金の催促に
座頭が雇われる筋だったということでしょう。

初演は、明治44年2月、日本橋常盤木倶楽部での
第一次第70回落語研究会の高座でした。

師走の掛取り狂想曲

借金の決算期を節季ともいい、盆・暮れの二回ですが、
特に歳末は、商家にとっては掛売りの貸金が回収できるか、
また、貧乏人にとっては、時間切れ逃げ切りで
踏み倒せるかが、ともに死活問題でした。

そこで、この噺や「掛取り万歳」に見られるような
壮絶な「攻防戦」が展開されたわけです。

むろん、普段掛売り(=信用売り)するのは、
同じ町内のなじみの生活必需品(酒屋・米屋・
炭屋・魚屋など)に限られます。
落語では結局、うまく逃げ切ってしまうことが多いのですが、
現実はやはりキビしかったでしょう。

大晦日の噺

井原西鶴の「世間胸算用」が、
江戸時代初期の京・大坂の節季の悲喜劇を描いて有名ですが、
落語で大晦日を扱ったものは、ほかにも
「三百餅」「尻餅」「にらみ返し」「加賀の千代」「引越しの夢」
「芝浜」ほか、多数あります。

こうした噺のマクラには、大晦日の川柳を振るのがお決まりで、
「大晦日首でも取ってくる気なり」
「大晦日首でよければやる気なり」、
五代目小さんが使っていたものでは
「大晦日もうこれまでと首くくり」
「大晦日とうとう猫は蹴飛ばされ」
などが秀逸でしょう。

炭屋

「子別れ」では、家を飛び出したかみさんが
子供を連れ、炭屋の二階に間借りしている設定でしたが、
裏長屋住まいの連中は、高級品は買えないため、
普段は中粉という、炭を切るときに出る
カス同然の粉を量り売りで買ったり、
粉に粘土を加えて練る炭団(たどん)を利用しました。

当然どちらも火の着きはかなり悪かったわけです。

|

« 按摩の炬燵(あんまのこたつ)/落語 | トップページ | 石返し(いしがえし) 落語 »

落語のあらすじ 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60017/7917750

この記事へのトラックバック一覧です: 言い訳座頭(いいわけざとう)/落語:

« 按摩の炬燵(あんまのこたつ)/落語 | トップページ | 石返し(いしがえし) 落語 »