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2006.03.03

鶯のほろ酔い(うぐいすのほろよい)/落語

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スター気取りの鶯が登場する噺です。

ある男が人語を話す、
世にも珍しい鶯を飼っている。

それは世間に秘密だが、
鳴き声は評判になり、
「聴かせてほしい」という人が大勢いるので、
それでは、と自宅に人を集めて披露することになった。

書画骨董、鶯宿梅(おうしゅくばい)の掛け軸などを用意して、
いよいよ鶯に「いい声で鳴けよ」と言いつけると
「ここ二、三日夜寒がきつかったので、
喉(のど)の具合が悪く、それに冬のような心持ちがして、
気が浮き立たないから鳴けません」
と言うので、困る。

そこで景気付けに、鶯に一杯飲ませ、
ほろ酔いかげんで鳴かせようとすると、
「酒で喉がかわいたからお茶を一杯くれ」と言う。

茶は冷めてしまったからと、
酒の燗をした湯を飲ませると
「アチチ、こりゃ熱湯。舌を火傷した」

鶯が縁側の手水鉢の方へフラフラ飛んで行くから、
驚いた主人、
「これこれ、どこへ行く」
「はい、あんまり熱いので埋め(=梅)に行きます」

【うんちく】

風雅な明治のマクラ

この噺、原話はまったく不詳です。
ウグイスの擬人化が珍しいだけで、オチも地口
(湯を埋め=梅→鶯の連想)で平凡なので、
今ではまったくすたれ、演じ手はありません。

資料としても、本格的芝居噺の名手だった六代目桂文治が
明治33年3月、「百花園」に載せた速記があるのみで、
文治(明治44年没)以後、口演されたかどうかも
分からないほどなのですが、
その速記を読んで感心させられるのは、噺そのものより、
そのマクラにみる風雅さ、故事や古典への造詣の深さです。
いささかキザなひけらかしが目立ったと言われる文治ですが、

うづらうづらと世を暮らし、心せきれいやる瀬なき、
胸の孔雀がさし込んで、くすり雲雀も日に千度(ちたび)、
はや隼に身を堅め、それ鳳凰(ほうおう→相応)な商売して、
二人中(仲)よう鴛鴦(おしどり)と、君の心は白鷺で……

という洒落た鳥尽くしの色文(ラブレター)から始まり、
鳥の鳴き声を聞き分けたという中国の公冶長の逸話をひとくさり、
蜀の皇帝が死んでホトトギスに生まれ変わったという「蜀魂」の故事、
有名な古今集の紀貫之の序から、「人来鳥」
「経よみ鳥」「月日星」などの鶯の別称を並べ、
という風に、いかにも粋に典雅に、さりげなく本題に入ります。

おそらく、穏やかで、流麗な語り口だったでしょう。
寄席が浮世学問のみならず、大切な教養の源だった
古きよき明治の御世がうかがえます。

鶯宿梅(おうしゅくばい)の故事

11世紀に成立した歴史物語「大鏡」の中で、
村上天皇の命で家の庭の梅の木を運び去られた
紀貫之の娘が天皇に託す、

「勅(ちょく)なればいともかしこし鶯の
宿はと問はばいかが答へん」
(天皇のご命令なので、たいへん名誉なことですが、
もし庭の鶯が『私の家である梅の木は
どこへ行ったのでしょう?』と尋ねたら、
どう答えればよろしいのでしょう?)

という歌から採ったもので、昔から梅と鶯は
付きものとして、掛け軸の画賛によく用いられる題材です。

もちろん、これがオチの伏線になっています。

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