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2006.03.14

牛の丸薬(うしのがんやく) 落語

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短い噺です。でも、けっこう複雑

大和炬燵(こたつ=土製の小型の四角いあんか)の
古くなったのをいじっているうちに、
これで丸薬を作ってひともうけしてやろうと思いついた甚兵衛。

炬燵に水を加えて土団子をこしらえ、
仲間の喜六と二人で田舎に売りに行く。

牛の流行病の特効薬だと、
甚兵衛が農民を言いくるめていくうちに、
喜六がキセルでコショウの粉を牛にかがせ、
クシャミを連発すると
すかさず「丸薬」を飲ませた上、
水を浴びせてコショウを洗い流し、
治してみせる。

トリックに引っ掛かった農民、
まんまとだまされて辺りに触れ回ったため、我も我もと殺到して、
見事に売り切れる。

思惑が当たった甚兵衛と喜六、
笑が止まらない。

「全部売れた。ハハハハハ」
「あんまり笑うな。バレる」
「ハハハハ」
「笑うなってのに」
「しかし甚兵衛さん、懐が暖まったもんだね」
「当たり前だ。基はコタツなんだから」

【うんちく】 上方落語を東京に移植

上方落語「牛の丸子(がんじ)」を、
八代目桂文治が東京に移したものです。
おそらく、昭和に入ってからでしょう。

戦後、大阪から東京に出て活躍した
二代目桂小文治がオリジナル版を始めて紹介。
その後、九代目文治が、「あらすじ」に示したような
純粋な「べらんめえ版」で演じましたが、
現在、東京では演り手がありません。

「がんじ」は今でいう錠剤(丸薬)のことですが、
分かりにくいので、現在はこの題名は使われていません。

米朝説-民話のにおい

壷算」などと同様、一種のサギ噺で、
民話がルーツと思われますが、原話は不明です。

ちくま文庫版「桂米朝コレクション4」に、
現在唯一、この噺の古格を伝えている
桂米朝の速記及び解説がありますが(音源はなし)、
その中で同師は、
「私は何となく民話とのつながりを感じます。
(中略)大昔は、悪賢い狡い人間は、
ある意味で尊敬されていたのではないか。
時代とともに、古い昔がたりに教訓的なものが
付加されてゆき、すべて勧善懲悪的な
はなしになっていったのかと思われるのです」
と、述べています。

上方版・二つの流れ

米朝は五代目笑福亭松鶴(1950年没)と
四代目桂文団治(1962年没)両巨匠のものを
聞き覚えしたとのことですが、
この噺は実際、大阪では笑福亭系統と桂派、二通りの
演出の流れがあったようです。

再び米朝師の前掲書を引用すると、
「五世松鶴型の演出が文団治型と大きく違うところは、
キセルに胡椒を詰めて牛の鼻に吹き込むことを、
その村にかかるまで一切言わずに、
土の丸薬をいったいどうするのか、
聴客にもその時まで知らさないやり方」
ということで、ご自身はこちらで演じているとのことです。

この噺の後継者として、米朝門下の故・桂枝雀と、
五代目松鶴の孫弟子にあたる現・仁鶴のCDが出ていましたが、
残念ながら、現在はどちらも入手困難です。

大和炬燵って?

黒土の素焼で、小型のアンカです。

上部が丸く、布が張ってあり、
中は火鉢になっていて、たどんを入れて暖めたもの。

昭和初期まで、関西では使われていました。

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