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2006.08.17

お釣りの間男(おつりのまおとこ) 落語

間男ネタの噺です。

町内の与太郎。

女房が昼間中から間男を引き込んで、
堂々と家でいちゃついているのにも、いっこうに気づかない。

知らぬは亭主ばかりなりで、
髪結床ではもう、おあつらえ向きの笑い話となっている。

悪友連中、火のあるところにさらに煙をたきつけてやろうと、
通りかかった与太郎に
「てめえがおめでてえから、
留守に女房が粋な野郎を引きずり込んで間男をやらかしてるんだ。
友達の面汚しだから、帰って暴れ込んでこい」
と、たきつける。

悪い奴もあるもので
「今ごろ酒でものんでチンチンカモカモやっている時分だから、
出し抜けに飛び込んで
『間男見つけた、重ねておいて四つにするとも八つにするともオレの勝手だ。
そこ一寸も動くな』と芝居がかりで脅かしてやれ」
と、ごていねいにも出刃まで用意してけしかけたから、
人間のボーッとした与太郎、団十郎のマネができると大喜び。

その上、間男の相場は七両二分だから、
脅せば金が取れると吹き込まれ、喜び勇んで出かけていく。

乗り込んでみると、案の定女房と間男がさしつさされつ堂々とお楽しみ中。

「間男見つけた。重ねておいて」
「何を言ってるんだねえ。どこでそんなことを仕込まれてきたんだい」
「文ちゃん源さん八つァんに七公に、髪結床で教わった」
「あきれたもんだねえ」
「さあ、八つになるのがイヤなら七両二分出せ」
「今あげるからお待ち」

金で間抜け亭主を追い出せるなら安いもの
と、こちらも願ったりかなったり。

八円で手を打った。

「一枚二枚三枚……八枚。毎度あり」
「さあ、この女ァ、オレが連れていくぜ」
「ちょっと待っておくれ」
「まだ文句があるのか」
「八円だから、五十銭のお釣りです」

【うんちく】

原話「七両二分」

原話は寛政6(1794)年刊「喜美談話」中の「七両二分」。     
竹里・作とある、この小咄は……。
                 
どうも女房がフリンしているらしいので
亭主、遠出すると見せかけてかみさんを油断させた上、
隣家に頼んで、朝早くから張り込ませてもらい、
壁越しに様子をうかがっていると、
果たして間男が忍んできたようす。

さあ重ねておいて四つ切りだと、勇んで踏み込んでみると、
なんと、枕屏風の外に小判で八両。
亭主、これを見るとすごすごと引き返し、
隣のかみさんに、
「ちょっと二分貸してくれ」。

八両から間男の示談金の「七両二分」を引いて、
二分の釣りというわけですが、
思えばこの「竹里(ちくり)」なるペンネーム、
どう考えても「乳繰り(チチクリ)」をもじったもので、
怪しげなこと、この上なしです。

初代円遊のバレ噺

この噺、別題「二分つり」「七両二分」ともいい、
上方でも江戸でも、
しょせん、ある種の会やお座敷でしか演じられなかった代物ですが、
むしろ江戸時代より
さらに弾圧がきびしくなった明治になって
大胆不敵にも、これを堂々と何度も寄席でやってのけた上、
速記(明治26年)にまで残したのが、
鼻の円遊こと、初代三遊亭円遊でした。

よくもまあ、検閲をすり抜けたものだと感心しますが、
さすがにお上の目は節穴でなく、
それ以後の口演記録はありません。

現在でも、さすがにこういう噺を
寄席で一席うかがう猛者はいませんが、
この噺を短くしたものや、類話の間男噺で、
与太郎が間男の噂を当の亭主にばらしてしまい、
「誰にも言うなよ」というオチがつく小噺が
よく「紙入れ」などのマクラにも用いられます。
          
間男代金・七両二分の由来については、
「紙入れ」で解説済みですので、そちらをご覧ください。

間男の川柳・名セリフ

間男の類語は「不義」「密通」「姦通」、今でいう「不倫」。

ただ、武家社会の「不義」は、
間男のみならず、恋愛一般の同義語でした。

つまり、当事者が奥方でも娘でも妾でも女中でも、
色恋ざたは、見つかり次第なます斬りがご定法だったわけで。
間男の川柳は数々あります。

主に、噺のマクラに用いられるものです。

町内で知らぬは亭主ばかりなり

間男と亭主抜き身と抜き身なり

据えられて七両二分の膳を食い

天明期に「賠償金」の額が下落すると、
こんなのがつくられました。

生けておく奴ではないと五両とり

女房はゆるく縛って五両とり

女房の損料亭主五両とり

亭主が現場を押さえた時の口上は、
この噺にもある通り、出刃包丁を突きつけ、
「間男めっけた。重ねておいて四つにするとも
八つにするともオレが勝手だ。そこ一寸も動くな」
が、通り相場。

「団十郎のマネができる」
と、与太郎が喜ぶことでえわかるように、
このセリフは芝居からきていますが、
歌舞伎でも生世話物がすたれつつある今日、
このセリフを歌舞伎座で聞くことも、あまりなくなりました。

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