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2006.11.27

小言念仏(こごとねんぶつ) 落語

短くって、すじもへったくれもない噺。

親父が、仏壇の前で小言を言う。

ナムアミダブツ、ナムアミダブツ。

鉄瓶が煮立っている、
飯がこげている、
花に水ゥやれ
と、さんざんブツブツ言った後、
「表にドジョウ屋が通るから、ナマンダブ、ナマンダブ、
買っときなさい、ナアミダブ、
ドジョウ屋ァッナムアミダブ、
鍋に酒ェ入れなさいナムアミダブ、
一杯やりながらナムアミダブ、
あの世ィ行きゃナマンダブ、
極楽往生だナマンダブ、
畜生ながら幸せなナムアミダブ、
野郎だナマンダブ、
暴れてるかナマンダブ、
蓋取ってみなナムアミ、
腹だしてくたばりゃあがった?
ナムアミダブ、ナマンダブ、ざまァみゃがれ」

【うんちく】

仏教への風刺

原話は不明で、上方落語「世帯(しょたい)念仏」を、
そのまま東京に移したものです。

移植の時期はおそらく明治期と思われます。

上方でもともと、「宗論」「淀川(後生鰻)」などの
マクラに振っていた小咄だったものが
東京で一席の独立した小品となりました。

念仏を唱えながらドジョウをしめさせるくだりは、
「後生鰻」と同じく、通俗化した仏教、とくにその
殺生戒の偽善性を、痛烈に風刺したものといえるでしょう。

小言って?

これすらも、昨今は死語化しつつあるようですが、
小言は「叱事(言)」の当て字。

特に小さな、些細なことを、重箱の隅をほじくるように
ネチネチと説教するニュアンスが、
「小」によく表れています。

江戸では「小言坊」「小言八百」などの言葉があり、
「カス(を食う)」というのも類語でした。

ドジョウ・その1

鰻にくらべて安価で、精のつくものとして、
江戸のころは、八つ目うなぎとともに
庶民層に好まれました。

「我事と鰌の逃げる根芹かな」
「なべぶたへ力を入るどじょう汁」
「念仏も四五へん入るどじょう汁」

など、様々な雑俳に詠まれています。
最後のは、煮ながらせめてもドジョウの極楽往生を願う心で、
この噺のおやじよりは、まだましですね。

ドジョウ・その2

ドジョウを買うときは升で量りますが、
必死で踊り狂うので、なかなか数が入らず、
同じ値段でも損をすることになります。

そこで、ドジョウをおとなしくさせるまじないとして、
碗の蓋の一番小さいものをヘソに当ててにらみつければ、
たちどころにドジョウは観念し、
同じ大きさの升でも二倍入ると、
根岸鎮衛の随筆「耳嚢(みみぶくろ)」にあります。

ホントかね。

金馬・小三治の苦い笑い

昭和に入って戦後まで、三代目三遊亭金馬の十八番でした。
明るい芸風の人だったので、風刺やブラックユーモアが
苦笑にとどまり、不快感を与えなかったのでしょう。

短いため、様々な演者が今も手がけますが、
現役では柳家小三治のものが、
自然に日本人の嗜虐性を表現していてうならせます。

上方の「世帯念仏」は桂米朝が継承しています。

東西ともオチは同じですが、
明治の五明楼玉輔の速記では、
「ドジョウ屋が脇見をしている隙に、二、三匹つかみ込め」
と、サゲています。

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