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2006.11.27

子殺し(こころし) 落語

こんなもの、よく笑いに取り入れたものですね。

亭主の働きが悪く、借金取りに責めたてられて、
大家にも店立てをくっている夫婦。

いっそ夜逃げをしようと相談中に、知人が尋ねてくる。

ある家で、
かみさんが産後の肥立ちが悪くてとうとう死んでしまい、
亭主もその跡を追うようにあの世へ行ってしまって
赤ん坊だけ残されたが、どこか育ててくれる人はないか
と、亭主の兄弟分に頼まれたが、心当たりはないかという相談。

なんでも、引き取ってくれる人には、
五十両の養育費を付け、赤ん坊の着物も添えるというので、
夫婦は金にひかれて、その子をもらい受けることにした。

その五十両で借金もきれいに返し、
一息ついてほっとしたものの、
こうなると、じゃまになるのが赤ん坊。

もともと金づくでしかたなく引き取ったもので、
ピイピイ泣いて手間がかかり、夜も寝られないとあって、
「五十両ぽっちの目腐れ金で
この先も居すわられたのでは割りに合わねえから
いっそ片付けちまおう」
と、亭主が言いだす。

絞め殺したのでは喉に痕がついてバレるからと一計を案じ、
湯に連れて行って温め、こたつの脇で布団をかぶせて押さえつけた。

しばらくして見てみると、
赤ん坊の死骸は、注文通り、真っ赤。

これを医者に見せ、
「疱瘡(ほうそう)で亡くなりました」
と言い立ててさっさと葬式を出し、遺留品もきれいに始末してしまう。

以来、悪行が実を結んでか、
にわかに金回りがよくなった夫婦。

そうなると亭主の気が大きくなり、
吉原の女郎になじんで、十日も二十日も帰らない。

おもしろくないのがかみさんで、
ある日、やっと帰ってきた亭主をつかまえて責めたてたあげく、
赤ん坊殺しの件まで大きな声でしゃべり出すので、亭主は仰天。

そんなことがお上に漏れれば、
首と胴が泣き別れになる
と必死になだめすかす。

もう決して家は明けないと謝って、
おまえと久しぶりに一杯やろうと酒屋に一升頼んできたから、
湯に行っている間に届いたら燗をつけておいてくれ
と、言い残して出ていく。

ところが天の網、
さっきのかみさんの声が人に聞かれて、訴人されたか、
奉行所の捕り手が四方から家を囲んだ。

「御用だっ」
「おや、酒屋さんかい」

【うんちく】

江戸の嬰児虐待

陰惨な噺で、特に現在の社会状況を考えると、
リアルすぎてシャレになりません。

百年二百年たとうが、人の世は同じことの
繰り返しということでしょうか。

いずれにせよ、資料的価値以外にはないでしょう。

原話も不明で、明治32(1899)年の
初代三遊亭円左の速記のみ残ります。

この円左以前も以後も、まったく口演資料がないところをみると、
あるいは、これ限りの円左の新作かもしれません。

御用聞きって?

酒屋に限ってこう呼びました。徳利拾いともいいます。

まず酒の御用を聞き、それから味噌醤油と、
二、三回も、御用は御用はと聞くのでついた名とか。

オチは、お上の御用を承る目明しの「御用聞き」
と掛けています。

初代円左は、わざわざマクラでそのことを説明していて、
当時でさえ、後者の意味が
わからなくなりかけていたことがうかがえます。

ここで円左は、江戸時代の目明しを「おてききしゅう」と呼び、
速記で「御探偵衆」と当て字させています。

そのあたりは、いかにも明治のにおいがします。

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