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2006.12.05

碁泥(ごどろ) 落語

典型的な滑稽噺。昔は、マクラに使われていたとか。

碁仇のだんな二人。

両方とも、それ以上に好きなのが煙草で、
毎晩のように夜遅くまでスパスパやりながら熱戦を展開するうち、
畳に焼け焦げを作っても、いっこうにに気づかない。

火の用心が悪いと、かみさんから苦情が出たので、
どうせ二人ともザル碁だし、
一局に十五分くらいしかかからないのだから、
碁は火の気のない座敷で打って、
終わるごとに別室で頭がクラクラするほど
のんでのんでのみまくろう、
と話を決める。

ところが、
いざ盤を囲んでみると、夢中になってそんな約束はどこへやら。

「マッチがないぞ」
「たばこを持ってこい」

閉口したかみさん。

一計を案じ、マクワウリを小さく切って運ばせた。

二人とも全く気がづかないので、
かみさんは安心して湯に出かける。

そのすきに入り込んだのが、
この二人に輪をかけて碁狂いの泥棒。

誰もいないようなので
安心してひと仕事済ませ、
大きな風呂敷包みを背負って失礼しようとすると、
聞こえてきたのがパチリパチリと碁石を打つ音。

矢も楯もたまらくなり、
音のする奥の座敷の方に忍び足。

風呂敷包みを背負ったまま
ノッソリ中に入り込むと、
観戦だけでは物足らず、いつしか口出しを始める。

「うーん、ふっくりしたいい碁石だな。互先ですな。
こうっと、ここは切れ目と、あーた、その黒はあぶない。それは継ぐ一手だ」
「うるさいな。傍目八目助言はご無用、と。
おや、あんまり見たことのない人だ、と。
大きな包みを背負ってますねッと」
「おまは誰だい、と、一つ打ってみろ」
「それでは私も、おまえは誰だい、と」
「へえ、泥棒で、と」
「ふーん、泥棒。泥棒さん、よくおいでだねッ、と」

【うんちく】

おじさん、そこおかしいよ!

原話は不詳です。

上方落語「碁打ち盗人」を
三代目柳家小さんが、大阪の桂文吾に教わり、
大正2(1913)年ごろ、東京に移しました。

小さんは、初め「芝居道楽」などのマクラとして演じ、
後に独立させました。

大正2(1913)年と、晩年の同13(1924)年の速記が残りますが、
最初の演題は上方にならって「碁盗人」でした。

両国の立花家でこの噺を演じたところ、十五、六の少年に、
碁を打つ手の行き方が、碁盤に対して高すぎると注意され、
その後きちんと碁盤の高さを計って演るようになったと、
大正13年の方のマクラで述べています。

生意気なガキですが、前世の談志だったかも?

小さん代々相伝の噺

小さんのうまさは、名人円喬に
「もうあたしは『碁泥』は演らない」
と言わしめたほどだったといいますが、
同じようなことを「笠碁」に対して
円朝が言ったという話もあるので、
あるいは混同されて伝わった逸話かも知れません。

門弟の四代目小さん、孫弟子の五代目小さんと継承され、
代々の小さん、柳派伝統の噺となりました。

戦後、三代目三遊亭小円朝も得意にしていましたが、
小円朝は、最初の泥棒の助言に対して、
主人が言葉で答えず、石を持った右手を
耳の辺りで振ってみせるやり方でした。

「本家」の上方では、現在はあまり演じられないようで、
今出ているCDは、五代目小さん、十代目馬生、志ん朝と
東京のものばかりです。

煙草盆って?

炭火を灰で埋めた小型の火鉢と、
吸殻を捨てる竹筒(灰吹)を入れた四角の灰皿です。

歌舞伎の小道具として、よく舞台で見られますね。

灰吹がほとんど見られなくなった現在、
かつて五代目古今亭志ん生がやった、
「畳に火玉が落ちたよ」
「ハイ、フキましょう」
というクスグリも、理解されにくくなっています。

泥棒の語源

泥棒にもピンからキリまであります。

「おかめ団子」の主人公のように、本当に「出来心」で
フラリと入ってしまうのが「空き巣ねらい」で、
計画的に侵入する盗賊より罪が軽く、
盗んだ金額にもよりますが、江戸時代には初犯なら、
百たたきで勘弁してもらえることが多かったようです。

「どろ」は「どら」「のら」と同義語で、元々怠け者の意。
怠惰で、まともに働く意欲がないから盗みに入るという解釈から。

古くは「泥た棒」「泥たん棒」「泥つく」とも呼び、
また、イカサマ師やペテン師、スリなども合わせて
「泥棒」ということがありました。

幕末から明治にかけて白浪(=盗賊)ものを得意にした講釈師・
二代目松林伯円(1831-1905)は「泥棒伯円」とあだ名され、
お上から「副業」にやっているのではないかと疑われたほど。

ところが、後に明治政府の肝いりで「忠君愛国講談」に転向、
明治天皇御前口演までやってのけました。
むろん、彼が手掛けた泥棒は、鼠小僧、稲葉小僧始め、
大物ばかりでコソ泥などいません。

このことからも、講談と落語の違いが、明白です。

互先って?

実力が同じ者同士が、交互に白を持って
先番になる取決めです。

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