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2006.12.23

五目講釈(ごもくこうしゃく) 落語

「若だんな勘当もの」の一つです。

お決まりで、道楽の末に勘当となった若だんな。

今は、親父に昔世話になった義理で、
さる長屋の大家が預かって居候の身。

ところがずうずうしく寝てくってばかりいるので、
かみさんが文句たらたら。

板挟みになった大家、
ひとつ何か商売でもおやんなすったらどうか
と水を向けると、
若だんな、
講釈師になりたい
と、のたまう。

「それでは、あたしに知り合いの先生がいますから、弟子入りなすったら」
と言うと
「私は名人だから弟子入りなんかすることはない、
すぐ独演会を開くから長屋中呼び集めろ」
と、大変な鼻息。

五十銭出して、
これで菓子でも買ってくれ
と気前がいいので、
まあそんなら
とその夜、いよいよ腕前を披露することにあいなった。

若だんな、一人前に張り扇を持ってピタリと座り、
赤穂義士の討ち入りを一席語り出す。

「ころは元禄十五年極月中の四日軒場に深く降りしきる雪の明かりは見方の松明」
と出だしはよかったが、そのうち雲行きが怪しくなってくる。

大石内蔵助が吉良邸門外に立つと
「我は諸国修行の勧進なり。関門開いてお通しあれと弁慶が」
といつの間にか安宅の関。

「それを見ていた山伏にあらずして天一坊よな、と、
首かき斬らんとお顔をよく見奉れば、年はいざようわが子の年輩」
と熊谷陣屋。

そこへ政岡が出てくるわ、白井権八が出るわ、
果ては切られ与三郎まで登場して、
もう支離滅裂のシッチャカメッチャ。

「なんだいあれは。講釈師かい」
「横町の薬屋の伜だ」
「道理で、講釈がみんな調合してある」

【うんちく】

またまた懲りない若だんな

原話は、安永5(1776)年刊「蝶夫婦(ちょうつがい)」中の
「時代違いの長物語」です。

これは、後半のデタラメ講釈のくだりの原型で、
歌舞伎の登場人物を、それこそ時代もの、
世話ものの区別なく、支離滅裂に並べ立てた噴飯モノ。

いずれにしても、客が芝居を熟知していなければ
何がなにやらさっぱり分からないでしょう。

前半の発端は「湯屋番」「素人車」「船徳」などと共通の、
典型的な「若だんな勘当もの」のパターンです。

江戸人が好んだパロディー落語

明治31(1898)年の四代目春風亭柳枝(1868-1927)の速記が残ります。

柳枝は、「子別れ」「お祭佐七」「宮戸川」などを
得意とした、当時の本格派でした。 

寄席の草創期から高座に掛けられていた、古い噺ですが、
柳枝がマクラで、
「お耳あたらしい、イヤ……お目あたらしい処(ところ)を
いろいろとさし代えまして(後略)」
と断っているので、
明治も中期になったこの当時には
すでにあまり口演されなくなっていたのでしょう。

講談や歌舞伎が庶民生活に浸透していればこそ
こうしたパロディ落語も成り立つわけで、
講釈(講談)の衰退とともに、
現在ではほとんど演じられなくなった噺です。

CD音源は、三遊亭円楽のものが出ています。

興津要は、この噺について、
「連想によってナンセンス的世界を展開できる楽しさや、
ことば遊び的要素があるところから江戸時代の庶民の趣味に合致したもの」
と、述べています。

五目って?

もともとは、上方語で「ゴミ」。

転じて、いろいろな物がごちゃごちゃと並んでいること。

現在は「五目寿司」など、料理にのみその名を残します。

遊芸で「五目の師匠」といえば、
専門は何と決まらず、片端から教える人間で、
江戸でも大坂でも、町内に必ず一人はいたものです。

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