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2008.07.08

芝居好きの泥棒(しばいずきのどろぼう)  落語

泥棒が婚礼宴の後に忍び込む、という設定自体が奇妙ですね。

芝居好きの泥棒が犬に吠えたてられて、
さるお屋敷に入り込む。

ちょうど婚礼の後らしく、
入ってみると酒宴の後のごちそうや酒が
まだ片付けられずに散らばり、
使用人たちも全員酔いつぶれて白川夜船。

これ幸い、
と徳利に残った酒を失敬して、グビリグビリ。

そのうち酔っぱらってきて、
間抜けにも自分で
「お泥棒さまがへえったぞ。酒を持ってこい」
と、大声でオダをあげたから、寝ていた奴が目を覚ました。

庖丁を持っているかも知れないから怖いし、
どうせ取られても自分の金ではないので、
皆そのまま寝たふりをしていると、
調子に乗った泥棒
「さあお嫁さんを拝見しよう。
二階だな。ミシリミシリ揺れている。
ウーン、二階へ上がっていくべえ。
さあ、石川五右衛門が競り上がって行くぜ」

昔はしゃれた奴があったもので、
「競り上がる」というからには、
この泥棒は芝居狂いに違いないと見抜いて、
台所にこっそり行って金だらいをたたき、
三味線で「楼門」の下座を弾き始めたから、泥棒は嬉しくなった。

「ありがてえかっちけねえ。同類が増えた」
と、はしご段の真ん中で
「絶景かな、絶景かな。
春の眺めは値千金と小せえ小せえ、
この五右衛門の目からは価万両、はや日も西に傾き、
まことに春の夕暮れに花の盛りもまた一しお、
ハテ、うららかなァ、眺めじゃなあ」

うなりながら二階へ上がっていくので、
あわてたのが、奉公人。

金どんが
「よし、オレが久吉になって止めてやる」
と、負い鶴の代わりに袖なしを着て、
頭巾を手ぬぐいでこさえ
「石川や浜の真砂尽きるとも」
「何と」
「世に盗人の種は尽きまじ」
「エイッ」

泥棒が手裏剣を打つと、ひしゃくで受け
「婚礼(巡礼)に、ご報謝」

【うんちく】

ポルノ版「二番目」

この噺、明治31年6月の「百花園」に掲載された、
六代目桂文治の速記が唯一の口演記録です。

文治は、明治初期~中期の、芝居噺の名手でした。

原話は不詳ですが、もともと艶笑落語で、
エロ噺で演じるときは「二番目」と題しました。

この場合は、泥棒が二階へ上がっていくと、もう若夫婦が
夜の大熱戦の真っ最中で、
「二番目じゃ二番目じゃ」
と、サゲになります。

これも、芝居用語が分からないと理解困難です。

最初、泥棒が階下で、一番目ものと呼ばれた時代物狂言の
「楼門」の石川五右衛門のセリフをうなっていて、
続いて上で若夫婦が「二番目狂言」、つまり男女の濡れ場が付き物の
「世話物狂言」を、床の上でおっぱじめることから、
このサゲ、別題になるというわけです。

楼門(さんもん)って?

本来の外題を「金門五三桐」(きんもんごさんのきり)といい、
のち「楼門五三桐」と改題されました。

初演は安永7(1778)年4月、大坂道頓堀中の芝居(のち中座)で、
初代並木五瓶の作です。

全五幕の長編ですが、二幕目返し(第二場)の「楼門の場」
が特に有名になり、
現在ではほとんどこの場面だけが、歌舞伎の様式美の極致として
しばしば上演されます。

桜花がけんらんと咲き誇る、京都・南禅寺の楼門の上で、
大盗賊・石川五右衛門が、ゆうゆうと夕日を眺めながら
「絶景かな、絶景かな」の名セリフを大音声でうなります。

そこへ、真柴久吉(豊臣秀吉)に滅ぼされた五右衛門の父・此村大炊助こと、
実は大明国の遺臣・宋蘇卿の遺書を脚に結びつけた鷹が飛来。

それを読んだ五右衛門が、父の仇・久吉を討って
日本国を征服することを決心したとき、楼門の下から
「石川や浜の真砂は尽きるとも」と、朗々と詠む声がして、
巡礼姿の久吉がせり上がってくるという名場面です。

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