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2009.03.27

三味線栗毛(しゃみせんくりげ) 落語

落語講釈ネタなので、オチもいまいち。志ん生がやってました。

老中筆頭、酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)の次男坊・角三郎は、
ちょくちょく下々に出入りするのでおやじからうとんじられ、
五十石の捨て扶持(ぶち)をもらって大塚鶏声ヶ窪の下屋敷で部屋住みの身。

そうでなくとも次男以下は、
養子にでも行かない限り、一生日の目は見ない。

ところが角三郎、生まれつきののんき者で、
人生を楽しむ主義なので、いっこうにそんな事は気にしない。

あしたは上野の広小路、あさっては浅草の広小路と、毎日遊興三昧。

今日も両国で一膳飯屋に入ったと言って、
用人の清水吉兵衛にしかられ、
あんまを呼んであるのでお早くお休みを、
と、せきたてられる。

今日呼んだあんま、名を錦木という。

療治がうまくて話がおもしろいので、
角三郎はいっぺんに気に入り、いろいろ世間話をするうち、
あんまにも位があって、座頭、匂頭(こうとう)、検校(けんぎょう)の順になり、
座頭になるには十両、匂頭では百両、
検校になるためには千両の上納金を納めなければならないことを聞く。

錦木は、とても匂頭や検校は望みの外だから、
金をためてせめて座頭の位をもらうのが一生の望みだ、と話す。

雨が降って仕事がない時はよく寄席に行く
と言って、落語まで披露するので、角三郎は大喜び。

その上、
あなたは必ず大名になれる骨格です
と言われたから、冗談半分に
「もし、おれが大名になったら、きさまを検校にしてやる」
と約束した。

錦木は真に受けて、喜んで帰っていった。

そのうち錦木は大病にかかり、一月も寝込んでしまう。

見舞いに来た安兵衛に、
「あの下屋敷の酒井の若さまが、
おやじが隠居、兄貴の与五郎が病身とあって、
思いがけなく家を継ぐことになった」
という話を聞き、飛び上がって布団から跳ね出す。

早速、今は酒井雅楽頭となって上屋敷に移った
角三郎のところにかけつけると
「錦木か、懐かしいな。武士に二言はないぞ」
と、約束通り検校にしてくれた。

ある日、出世した、今は錦木検校が
酒井雅楽頭にご機嫌伺いに来る。

雅楽頭は、このほど南部産の栗毛の良馬を手に入れ、
三味線と名づけたと話す。

駿馬(しゅんめ)にしては軟弱な名前なので、
錦木がそのいわれを聞いてみた。

「雅楽頭が乗るから三味線だ」
「それでは、家来が乗りましたら?」
「バチが当たるぞ」

【うんちく】

名人から名人へ

原話は不詳で、講釈(講談)種とみられます。

明治の大円朝から、名人・四代目橘家円喬と
二代目三遊亭小円朝に伝承され、その衣鉢を継いだ
昭和~戦後の三代目小円朝、五代目古今亭志ん生、
二代目三遊亭円歌らがよく演じました。

三代目小円朝は地味にしっとりと演じ、角三郎を
闊達だが書物好きのまじめな青年として描き、
逆に志ん生は、自由奔放な人間像を造形しました。

また、志ん生はマクラに両国の見世物小屋の描写を置き、
山場の少ない噺に、明るい彩を添えています。

さらに、小円朝は、後半の栗毛の話の聞き手を
吉兵衛に代え、志ん生はそのまま錦木で
演じましたが、噺の連続性からは志ん生の
やり方が無難でしょう。

率直に言って古色蒼然、面白いとは言えない噺なので
しばらく後継者がなく、音源も志ん生の
もののみでしたが、最近、柳家喬太郎、
古今亭菊之丞らが意欲的に手掛け、それぞれ
CDも発売されています。

酒井雅楽頭(うたのかみ)

譜代の名門中の名門、酒井家の本家で、
上野・前橋十二万五千石→播州・姫路十五万石。

代々で最も有名なのは、四代将軍・家綱の許で
権勢を振るい「下馬将軍」と呼ばれた忠清(1624-81)。

大老にまでなったこの人物が失脚してから、
酒井家からは当分老中は出ていません。

この噺では、あるいは父親を酒井忠清、
角三郎を嗣子・忠挙(ただたか)に想定して
いるのかも知れませんが、詮索は無意味でしょう。

鶏声ケ窪って?

酒井家の上屋敷は丸の内・大手御門前。
鶏声ケ窪の下屋敷は、旧駒込曙町で、
現・文京区本駒込一、二丁目。

この付近には、下総・古河八万石で、やはり
大老を務めた土井大炊頭(おおいのかみ)
下屋敷もあり、地名の由来は、その屋敷内から
怪しい鶏の声がするので、地中を掘って
みると、金銀の鶏が出てきたことによるとか。

なお、一膳飯屋については「ねぎまの殿さま」、
按摩の位は「松田加賀」を、それぞれご参照ください。

天才・円喬の苦悩

小島政二郎(1894-1994)の小説「円朝」に、
この噺を得意にした円朝門下の四代目橘家
円喬(1865-1912)が、按摩の表現のコツが
つかめず、苦悶する場があります。

特に話し方、声。ゆえあってしばらく
師匠を離れ、大阪に行った円喬が、答えが
出ないまま、あるとき夢に見た円朝の教えは

「耳で話せ」。

それが開眼のきっかけになります。

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