« 館林(たてばやし) 落語 | トップページ | 田能久(たのきゅう)  落語 »

2009.04.27

たちぎれ  落語

江戸時代までは、「芸者」と呼ぶのは吉原だけでだったんですねえ。

昔は芸者の花代を、
線香のたちきる(燃え尽きる)時間で計ったが、
そのころの話。

築地の大和屋抱えの芸者・美代吉は、
質屋の若だんな・新三郎と恋仲で、
互いに「○○命」と彫った入れ黒子(刺青)を
二の腕にしているほどだが、
ある日、
湯屋で若い衆が二人の仲を噂しあっているのを聞き、
逆上したのが、美代吉に岡惚れの油屋番頭・九兵衛、通称、あぶく。

この男、おこぜのようなひどいご面相なので、
美代吉が嫌がっていると、同じ湯船にいるとも知らず、
若い衆が散々悪口を言ったので、ますます収まらない。

早速、大和屋に乗り込んで責めつけると、
美代吉は苦し紛れに、お披露目のため
新三郎の親父から五十円借金していて、
それが返せないのでしかたなく言いなりになっている
と、でたらめを言ってごまかした。

自分は訳あって三年間男断ちをしているが、
それが明けたらきっとだんなのものになると誓ったので、
久兵衛も納得して帰る。

美代吉は困って、新さんに相談しようと手紙を書くが、
もう一通、アリバイ工作をしよう、
と、久兵衛にも恋文を書いたのが運の尽き。

動転しているから、二人のあて名を間違え、
新三郎に届けるべき手紙を久兵衛の家に届けさせてしまう。

それを見た久兵衛、
文面に久兵衛のべらぼう野郎だの、
あんな奴に抱かれて寝るのは嫌だのと書いてあるから、
さては、とカンカン。

美代吉が新三郎との密会場所に行くために雇った船中に潜み、
美代吉の言い訳も聞かばこそ、
かわいさ余って憎さが百倍と、
匕首(あいくち)で、美代吉をブッスリ。

あわれ、それがこの世の別れ。

さて、美代吉の初七日に、
新三郎が仏壇に線香をあげ、念仏を唱えていると、
現れたのが美代吉の幽霊。

それも白装束でなく、生前のままの、
座敷へ出るなりをしている。

新三郎が仰天すると、地獄でも芸者に出ていて、
大変な売れっ子だという。

何にしても久しぶりのデートなので、
新三郎の三味線で幽霊が上方唄、
いいムードでこれからしっぽり、
という時、次の間から
「へい、お迎え火」

あちらでは、芸者を迎えにくる時の文句と聞いて
新三郎「あんまり早い。今来たばかりじゃないか」
「仏さまをごらんなさい。ちょうど線香がたち切りました」

【うんちく】

上方人情噺の翻案

京都の初代松富久亭松竹(生没年不詳)作と
伝えられる、生粋の上方人情噺を、明治中期に
東京に移植したもので、移植者は三代目
柳家小さんとも、六代目桂文治ともいわれます。

文化3(1806)年刊の笑話本「江戸嬉笑」中の
「反魂香」が、さらに溯った原話です。

東京では「入黒子(いれぼくろ)」と題した
明治31年12月の六代目文治の速記が最古の
記録で、その後三代目春風亭柳枝、八代目
三笑亭可楽を経て、現・柳家小三治が継承しています。

あらすじは、古い文治のものを参考にしました。
文治は、ねっとりとした上方の情緒あふれる
人情噺を、東京風に芝居仕立てで改作しています。

GEISHAは吉原の「登録商標」

江戸時代までは、正式に「芸者」と呼ぶのは
吉原のみの特権で、ほかの花街では
「酌人」という建前でした。

線香燃え尽き、財布もカラッポ

芸者のお座敷も、女郎の「営業」も原則、
線香が立ち切れたところで時間切れでした。

線香が燃え尽きると、客が「お直し」と叫び、
新たな線香を立てて時間延長するのが普通でしたが、
「お直し」(アップ済、その項参照)のような
最下級の売春窟では、客引きの牛の方が
勝手に自動延長してしまう図々しさです。

明治以後は、時計の普及とともにさすがに
すたれましたが、東京でも新橋などの古い
花柳界では、かなり後までこの風習が
残っていたといいます。

上方落語「たちぎれ線香」その1

現在でも大阪では、大看板しか演じられない切ネタです。

桂米朝、故・桂文枝の名演が耳に残ります。

あらすじは……

若だんなが芸者小糸と恋仲になり、家に戻らないので
お決まりの勘当となるが、番頭の取り成しで
百日の間、蔵に閉じ込められる。

その間に小糸の心底を見たうえで、二人を
いっしょにさせようと番頭がはかるが、
蔵の中から出した若だんなの恋文への返事が、
ある日ぷっつり途絶える。(その2へ続く)

上方落語「たちぎれ線香」その2

若だんなは蔵から出たあと、このことを知り、
しょせんは売り物買い物の芸妓と、その不実を
なじりながらも、気になって置屋を訪れると、
事情を知らない小糸は捨てられたと思い込み、
焦がれ死にに死んだという。航海した若だんなが
仏壇に手を合わせていると、どこからか地唄の
「ゆき」が聞こえてくる。

…ほんに、昔の、昔のことよ……

これは小糸の霊が弾いているのだと若だんなが
涙にくれると、ふいに三味線の音がとぎれ、
「それもそのはず、線香が立ち切れた」

と、サゲになります。

|

« 館林(たてばやし) 落語 | トップページ | 田能久(たのきゅう)  落語 »

落語のあらすじ 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60017/44809959

この記事へのトラックバック一覧です: たちぎれ  落語:

« 館林(たてばやし) 落語 | トップページ | 田能久(たのきゅう)  落語 »