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2009.04.01

樟脳玉(しょうのうだま) 落語

これはもう、お笑い版・降霊術ですね。

古紙回収業の捻兵衛は、正直者で気が弱く愛妻家。

その女房おきんがぽっくりあの世へ。

捻兵衛はショックのあまり、それ以来商売にも出ず、
メソメソと泣きながら念仏三昧。

ここに、人の不孝に便乗して、
小金の一つも稼ごうという料簡の二人組み。

おきんは元武家屋敷に奉公していた関係で、
所帯を持った時持参した着物類がどっさりある上、
捻兵衛自身も金を相当貯め込んでいるという噂で、
二人の計画はおきんの幽霊をでっち上げた上、
動揺した捻兵衛に、
おかみさんが出るのは着物と金に気が残っているせいだから、
わっちらが寺へ納めてあげましょうとうまく言いくるめて、
全部いただいてしまおうというもの。

まず、長太郎玉(衣服保存に使う樟脳粉を丸めたもの)を用意し、
夜そいつに火を着けて青白い火の玉をこしらえ、
捻兵衛宅の天井の引き窓から糸を付けて垂らし、
仏壇に手を合わせている鼻っ先にユーラユーラと振ってみせる。

案の定、捻兵衛肝をつぶして
「南無阿弥陀仏、ナムアミダブ、
あたしも後からすぐ行くから、どうぞ浮かんどくれ」

まずは、序幕成功とほくそえんだ二人、
翌朝、弟分の熊が何食わぬ顔で捻兵衛に会い、
あんなりっぱな葬式をしたから仏さんもきっと成仏したでしょう
と、水を向けると、浮んでいないと言う。

ここぞと、
それはおかみさんが着物に気が残っているからだ
と計画通り持ちかけ、まんまとだまして高価な形見の着物を
一枚残らずかすめ取ってしまった。

ところが肝心の金は
「あっ、忘れちまったッ」

しかたがないのでもう一幕やることにし、
今度はもっと大きいのを用意して、ユーラリ、ユラリ。

見当が狂って、火の玉が捻兵衛の頭に。

「ナムアミダブツ、アチチチチチ」

また翌朝、熊がようすを探りに行く。

「へい、まだウチの奴は浮かんでません。
もっと大きな火の玉が出て、あたしは火傷をこさえました」
「そいつは済みません、もとい、
そりゃあ、まだお金に気が残っているんでしょう」
「いえ、葬式で使って、もう一文もありません」

熊は未練たらしく、
「でも何かあるでしょう」
と押すと、
捻兵衛、押入れからお雛さまを出して、
しばらく考え込み、
「熊さん、わかりました。女房はこれに気を残しています」
「へーえ、なぜ」
「昨夜の魂の匂いがします」

【うんちく】

長太郎玉って?

縁日で、子供用のおもちゃとして売っていた、
樟脳粉の丸めたものです。

掌に乗せても熱くなく、芝居では焼酎火とともに
人魂に使われていました。

蛇足ですが…

「樟脳玉」の方は、大阪では、主人公の名が
源兵衛となっているので、演題も「源兵衛玉」
「源兵衛人玉」として演じられます。
ストーリーはまったく同じです。

いずれにしても、落語には珍しい愛妻家が
登場することから、この噺は民話がルーツ
だとする説もあります。

ただ、東京の円遊が強引に結びつけただけで、
「源兵衛玉」と「夢八」はもともと別話でしょう。

「源兵衛玉」が江戸から大坂に移植されたものなのか、
それとも、逆にオリジナルは上方の方なのかは
曖昧模糊として、はっきりしません。

鼻の円遊の続編「捻兵衛」

この後日談として、明治の爆笑王・初代
三遊亭円遊が創作した「捻兵衛」があります。

これは、上方落語の「夢八」に酷似していて、
円遊が「夢八」のストーリーを取って「樟脳玉」の
続編としたのではないかといわれます。

あらすじは;
 
捻兵衛がここ二、三日姿を見せないので、
大家に頼まれて八五郎が様子を見に行くと、
なんとブランコ往生を遂げている。

ところが、魔がさしたのか、死骸がブキミな声で
しゃべりだし、八公に、ヨイトコセーを踊れ、
さもないと喉笛を食い破ると脅すので、
ガタガタ震えながr鉦をたたいて踊ると、
振動で帯が切れ、ホトケが八公の上に落下。

八五郎、死骸と堅く抱き合ったまま、あえなく気絶。

長屋の連中が来て、やっと蘇生させると

「おや、いつの間にか首くくりが増えた」

と、オチになります。

こちらは、東京では現在は演じ手がありませんが、
大阪の「夢八」の方はまだ演じられていて、
二代目桂小南や、先ごろ他界した露の五郎兵衛の
音源もあります。

いつまでも円生ばかりじゃ…

原話は不詳ですが、文化年間(1804~18)から
口演されてきた古い江戸落語です。

明治末から大正にかけて、二代目古今亭今輔(1859-98)
などがよく演じていましたが、その後すたれていたのを
戦後六代目三遊亭円生が復活させ、同人以外
演じ手のないほど、十八番としていました。

音源も、円生のみで昭和36年の初録音を
皮切りに5種類もあります。

その没後、しばらくまた後継者がいなかったのを
桂歌丸が復活して手掛け、現在ではぼつぼつ
中堅・若手も高座に掛けるようになりました。

ただ、CDは今のところまだ、円生の
ものしか聞かれません。

 

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