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2009.04.26

館林(たてばやし) 落語

先代の桂文治得意にしてましたが、今はあまり聴きません。

町人の半さん、
剣術を少しばかり稽古してすっかり夢中になり、
もう道場の先生の右腕にでもなったつもりでいる。

そこである日、
諸国を修業してまわり、腕を上げてきたいと先生に申し出る。

本気で、商売をやめて剣術遣いになるつもりらしい。

先生心配になって、
自分の武者修行の時の体験談をひとくさり。

ある時、
上州館林のご城下を歩いていると、
一軒の造り酒屋の前に人だかりがし、何やら騒いでいる。

聞いてみると、
まだ夕方なのに泥棒が入り、
そいつが抜き身を振り回して店の者を脅し、
土蔵に入り込んだ。

外から鍵をかけ、雪隠(せっちん)詰めにしたものの、
入ってくる奴がいれば斬り殺そうと待っているので、
誰でも首が惜しいから、召し捕ろうとする者もいない、
とのこと。

先生、
しからば拙者が
と、そこが武芸者、飯六杯味噌汁三杯食って腹ごしらえの上、
生け捕りにしてくれようと、主人を呼んで空き俵二俵用意させ、
左手で戸を開けると、右手で俵を中に放り込んだ。

向こうは腹が減って気が立っているから、
俵にぱっと斬りつけるところを、
小手をつかんで肩に担いで岩石落とし、
みごと退治したという一席。

しかし、泥棒の腕がナマクラだったから幸いしたが、
腕が立っていたらどうなったかわからない。

おまえも、もう少し腕を磨いた上で、
と先生が諭すので、半さんもそんなものかと思い直して帰っていく。

しかし。

オレも先生のような目に逢ってみたい、
と、まだ未練たらたらな半さん。

独り言をいいながら歩いていくと、ちょうど夕方。
町の居酒屋の前に人だかり。

聞いてみると、
侍に酔っぱらいがからんでけんかを吹っかけた。

斬るほどのこともない
と峰打ちを食わせたが、
酔っぱらいがまだしつこくむしゃぶりつくから、
侍、めんどうくさいと酒屋の土蔵に逃げ込んでしまった、という。

さあ、ここが腕の見せどころ、と半さん。

あのお侍は悪くはないんだから、
おまえが出て騒ぎを大きくすることはない
と止められても聞かばこそ、先生の真似をして
「しからば拙者が生け捕りに致してくれる。
所は上州館林。そやつを捨ておけば数日の妨げ。
主人、炊き立ての飯を出せ」

腹ごしらえまでそっくりまねて、
いよいよ生け捕りの計略。

俵を持ってこさせると、
土蔵の戸を右手で開け、左手で俵を放り込む。

向こうは血迷っているから、ぱっと斬りつけ……て、こない。
もう一俵放り込んでも中は、しーん。

こりゃ約束が違う。

「中でどうしているんだろう」
と言いながら首をにゅっと入れたとたん、
侍の刀が鞘走り、半公の首がゴロゴロ。

「先生、うそばっかり」

【うんちく】

切れのいいシュール落語

首が口をきくという、同工異曲の噺に
「胴取り」がありますが、オチの切れ味、構成とも、
問題なくこちらが優れています。

原話は不詳で、別題を「上州館林」。

昭和初期には八代目桂文治が得意にし、
同時代には六代目林家正蔵(1929年没)も
演じましたが、戦後、文治没後は、惜しいことに
これといった後継者はありません。

六代目正蔵は、首が口をきくのが非現実的(?)というので、
半公はたたきつけられるだけにしていました。

演者自身が、現実を飛越する落語の魅力を理解できず、
噺をつまらなくしてしまう最悪の例でしょう。

ヤットウヤットウ

江戸の町道場は、権威と格式はあっても、
総じて経営が苦しいので背に腹は何とやら、
教授を望む者は、身分にかかわらず門弟に
したところが多かったようです。

身分制度のタテマエから、幕府はしばしば
百姓・町人の町道場への入門を禁じましたが、
江戸は武士の町で、その感化で町人にも尚武の
気風が強く、また治安も悪かったため、
自衛の意味で、柔や剣術を身に付けたいと
いう町人が江戸中期ごろから増加しました。

町人の間では、稽古の掛け声から、剣術を
ヤットウと呼びならわし、特に幕末には、
物騒な世相への不安からか、江戸の四大道場と
称される、神田・お玉ケ池の千葉道場、御徒町の
伊庭道場、九段坂上の斎藤道場、京橋・蛤河岸の
桃井道場など、有名道場には志願者が殺到。

町人原則ダメの建前は怪しくなりました。

なお、町道場の「授業」時間は、
午前中かぎりが普通でした。

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