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2009.04.22

大名道具(だいみょうどうぐ) 落語

愉快なバレ噺。大名対大明神の戦いや、いかに。

さる殿さま。

男っぷりも何も申し分ないお方だが、
残念ながら男としての道具が相当に小ぶり。

欲求不満で業を煮やした奥方が、
その方面にご利益(りやく)があるという
城下外れの金勢大明神に殿さまをむりやり理引っ張っていき、
モノをもう少し大きくしてもらうよう、祈願することになった。

もちろん、家中総出。

ところが、金勢さまのご神体は男子の一物を型どったもの。

四尺ぐらいのりっぱなものが、黒光りしてそそり立っている。

これを見せつけられた殿さま、カーッとなって
「おのれッ、余にあてつけおるなッ」

槍持ちの可内から槍をひったくると、
拝殿にズブリと突き入れて、ご神体をゴロッとひっくり返してしまった。

さあ、怒ったのは大明神。

いざ、神罰を思い知らせてくれようと、
その夜、天にもとどろく雷鳴。

殿さまの股間に冷たい風がスーッと吹いたかと思うと、
ただでさえあるかないかだったお道具が、きれいさっぱりなくなった。

殿さまばかりが、家中三千人の者が、
一夜にして一人残らず大切なものを取られてしまったから、大騒動。

あわててご神体を修理したが、
お宝はいっこうに戻らない。

結局、山伏を招いて、
秘法「麻羅返し」の祈祷をすることになった。

山伏が汗みどろで「ノーマクサンマンダー」とやっているのを見て、
神さまも気の毒になったのか、
修法三日目の夕刻、
一天にわかにかき曇り、津波のような大音響とともに
米俵が十俵、大広間にドサッ。

中からなんと、三千人分の道具がザーッとこぼれ出る。

殿さまは涼しい顔で、その中で一番大きなモノをくっつけると、
さっさと奥へ入ってしまった。

さあ、それから広間は大混乱。

どれが誰のモノやら、わからない。

取り合いで大げんかになるやら、
人の道具を踏みつけるやらの騒ぎがようやくしずまったあと、
まだ一人で大広間をごそごそ捜しているのが、槍持ちの可内で、
家中第一の大道具の持ち主。

たった一つ発見したのは、四センチほどにも満たない代物。
まさに、殿さまの所有物である。

「三太夫さま、あっしのがありません」
「そこにあるではないか」
「冗談じゃねえ。あっしのは、お城一番八寸銅返しってえ自慢のもんで」
「ああ、あれなら殿が持っていかれた」

可内、泣く泣く諦めさせられたが、
殿さまはめでたく「女殺し」に大変身。

三日三晩寝所に居続けで、奥方は腰も立たないほど。
そこへバタバタと三太夫がやって来た。

「申し上げますッ」
「何事じゃ」
「ただいま槍持ちの可内めが、腎虚で倒れました」

【うんちく】

絢爛たる艶笑落語の傑作

スケールといい、奇想天外なストーリー展開といい
バレ噺の最高傑作の一つといえるでしょう。

原話は、明和9(1772=安永元)年刊の大坂小咄本
「軽口開談儀」中の「大名のお道具紛失」と、
安永年間(1772~81)刊の江戸板「豆談語」中の「化もの」。

このうち後者は、殿さま始め家来一同のエテモノを
根こそぎさらうのが「化け物」とされているほかは、
槍持ちの腎虚というオチまで、大筋はそっくりそのままです。

評論家の故・小島貞二氏によれば、血液型による
性格分類のパイオニアで知られる故・能見正比古氏が
これらの原典を脚色、一席にまとめたものとか。

当然ながら、口演記録はありません。

金勢大明神って?

通称を金勢さまといい、金精、根精などとも書きます。

ご神体は噺中に出るとおり、巨大でいきり立った男根。
男の永遠の憧れ、精力絶倫を象徴しているところから、
五穀豊穣、安産、子孫繁栄、縁結びなどを司ります。

古くから信仰を集め、社は日本全国、特に
東日本に広く分布しています。

八寸胴返しの「名刀」

平常時で24.24㎝。いきり立つとどのくらいになるか
背筋の寒くなる代物です。

「胴返し」というのは撃剣で、胴を払った太刀先を
そのまま返し、反対側の胴、面、小手を薙ぐ基本技です。

ということは、ピンと反り返った「太刀先」が
顔面を直撃……まさかねえ。

腎虚って?

江戸時代には、腎気(精力)の欠乏による
病気の総称でした。

狭義では、過度のセックスによる衰弱症状です。

これの症例に関しては「短命」で、
隠居がわかりやすく解説してくれます。(その項参照)

ついでに

題名の「大名道具」とは、大名が持つに
ふさわしい一流品全般をいいます。

ところで、特に限定していう場合、
「大名道具」とは、松の位の太夫のこと。
まさに、大名の権力と財力があって初めて
頂戴できる代物ということです。

太夫にかぎらず、女郎のことを俗に
「寝道具」ともいい、年期が明けて
フリーになった遊女をタダで落籍するのを
「寝道具をしょってくる」と称しました。

つまり、同じ「大名道具」でも、花魁はハード、
男のモノはソフトというわけでしょうか。

確かに、どんなに特大のソフトを手に入れても
肝心のハードがなければ、何の意味もないですね。

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