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2009.04.09

新聞記者(しんぶんきしゃ) 落語

新聞記者が珍しい職業だったころのくだらない話ですね。

明治の中ごろ。

根岸お行の松の近くに「雷號堂」と表札を揚げた家があったが、
主人はなにをやっているのか、正体不明。

朝は八時に起き、夕方まで部屋に閉じこもったきり。

それからどこかへ出かけて、
夜中の二時三時、時には明け方まで帰らない。

女っ気は全くなく、ただ権助という下男を一人置いているだけ。

家に出入りする人種も、商人や官員、職人や芸人とさまざま。

この権助、大河内久左衛門というごりっぱな本名があるので、
権助権助と呼ぶのはやめてくらっせえ
と頼んでも、主人は
「なに、権助というのはあの白井権八の弟で、
やっぱり女にもてた色男の名前だから、おまえにゃ、ふさわしい」
とはぐらかすうち、
権助はふとだんなの正体が記にかかり、
あんたの商売はいったいなんだと尋ねると
「オレの商売は、実は商売往来にはない」

権助、これはひょっとしたらと思っているところへ、
やってきたのが荒川という髭男。

鼻が高く、眼光鋭い。
この間の三千円の一件に早く片をつけたいから、
ゆっくり内談をしたい
というので、主人は権助に酒の用意をさせ、八畳の座敷でヒソヒソ話。

これはますます怪しいと、
権助が立ち聞きしていると
「実は三千円持っているあの磯之丞の跡をつけ、
仕込み杖で土手っ腹ァえぐって、金をいただいて長崎へ行き、
あの久左衛門も生けておいては後日の祟りだから、
寝ているところを、喉をダンビラで。死骸は橡の木の下に」
「なるほど、これは名案」
と、とんでもない会話が聞こえてきたので、
権助、いきなり飛び出し
「どうか、お暇をくだせえ」
「どうしてだ」
「あんたの心に聞いたらわかるだんべえ」

わけを言わなければ暇はやらない
と言われ
「今あんた方、おらを殺すといいなさった」
と責めると、だんなは笑って
「そいつはおまえの勘違いだ。
実は、荒川も私も新聞に出ている連載小説の筋立ての算段をしているだけだ」
と、明かす。

「そんなことはどうでもええだ。
こんな家にいると同類だと思われちゃなんねえ。お暇をおくんなせえ」
「我々は記者だよ」
「えっ、あんな方、汽車で逃げる? そいじゃ、おらあ汽船で逃げよう」

【うんちく】

最初の新聞小説

明治8年、「東京平仮名絵入新聞」に三日間
連載された、前田香雪・作「岩田八十八の話」で、
実際の殺人事件をスキャンダラスに
小説化したものです。

以後、こうした通俗的新聞小説は、
政治家のスキャンダル暴露記事とともに、
小新聞の売り物となっていきました。

新聞ことはじめ

最初の日刊紙は、明治3年12月発刊の
「横浜毎日新聞」といわれます。

以後、政治関係のニュースや論説中心の
「東京日日」(明治5)「郵便報知」(同)と、
「読売」(同7)「大阪朝日」(同12)など、
通俗記事中心の小新聞に分かれていきます。

発想はダジャレから

明治32年9月、初代三遊亭円左が速記を
雑誌「百花園」に掲載したものです。

内容としては、当時の新進メディアであった新聞、
ハイカラな職業としての記者を登場させる
新味をねらっただけの凡庸な作で、
明治中期の風俗資料という以上の価値はないでしょう。

発想は、記者と汽車のダジャレからきたもので、
そんなものからとにかく一席にしてしまう
豪腕?には感じ入ります。

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