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2009.04.24

竹の水仙(たけのすいせん) 落語

講談の名匠ものを借用した一席。だから、オチはありません。

天下の名工として名高い、左甚五郎。

江戸へ下る途中、
名前を隠して、三島宿の大松屋佐平という旅籠(はたご)に、宿をとった。

ところが、朝から酒を飲んで管をまいているだけで、
宿代も払おうとしないので、
たまりかねた主人に追い立てを食うが、
甚五郎、平然としたもので、
ある日、中庭から手頃な大きさの竹を一本切ってくると、
それから数日、自分の部屋にたてこもる。

心配した佐平がようすを見にいくと、
なんと、見事な竹造りの水仙が仕上がっていた。

たまげた佐平に、
甚五郎、
この水仙は昼三度夜三度、昼夜六たび水を替えると
翌朝不思議があらわれるが、
その噂を聞いて買い求めたい
と言う者が現れたら、町人なら五十両、侍なら百両、
びた一文負けてはならない、と言い渡す。

これはただ者ではない
と、佐平が感嘆していると、
なんとその翌朝、水仙の蕾が開いたと思うと、
たちまち見事な花を咲かせたから、一同仰天。

そこへ、たまたま長州公がご到着になり、
このことをお聞きになると、ぜひ見たい
とのご所望。

見るなり、長州公
「このような見事なものを作れるのは、天下に左甚五郎しかおるまい」

ただちに、百両でお買い上げになった。

甚五郎、また平然と
「毛利公か。あと百両ふっかけてもよかったな」

いよいよ出発という時、
甚五郎は半金の五十両を宿に渡したので、
今まで追い立てを食わしていた佐平、ゲンキンなもので
「もう少しご逗留になったら」

江戸に上がった甚五郎、
上野寛永寺の昇り龍という後世に残る名作を残すなど、
いよいよ名人の名をほしいままにしたという、「甚五郎伝説」の一説。

【うんちく】

珍しい小さんの人情もの

五代目柳家小さんの十八番で、小さんの
オチのない人情噺は珍しいものです。
古い速記は残されていません。

オムニバスとして、この後、江戸での
エピソードを題材にした「三井の大黒」に
つなげる場合もあります。

現役では桂歌丸、柳家喬太郎などが演じるほか、
若手でも手掛ける者が増えているようです。
あまり受ける噺とも思われませんが。

音源は、小さん、歌丸のものがあります。

講釈ダネの名工譚

世話講談(講釈)「左甚五郎」シリーズの一説を
落語化したものとみられます。

「三井の大黒」「ねずみ」など、落語の
「甚五郎」ものはいずれも講釈ダネです。

左甚五郎については「三井の大黒」を
ご参照ください。

なお、噺の中で甚五郎が作る「竹の水仙」は、
実際は京で彫り、朝廷に献上してお褒めを
賜ったという説があって、三代目桂三木助は
「ねずみ」の中でそう説明していました。

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