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2009.04.03

素人芝居(しろうとしばい) 落語

昔は、お芝居=歌舞伎だったんですね。そのころの噺です。

町内の素人芝居(茶番)で、
「仮名手本忠臣蔵」五段目・山崎街道の場を出すことになった。

例によって、
オレも勘平、オイラも勘平、あたしも勘平
と、主役ばかりやりたがり、さんざん役もめをした挙げ句、
しかたがないのでくじ引きで配役を決め、
伊勢屋の若だんなが幸運にも勘平に「当選」した。

鉄砲渡しで千崎弥五郎が花道から客席に落っこちたり、
猪役に当たった建具屋の源さんが、
面白くないから、いやがらせに舞台でチンチンやお預けをしたりと
いろいろあって、やっと勘平の出になる。

舞台で斧定九郎が与市兵衛を殺して五十両を奪い、
金を数えて終わってほくそ笑んだところで、
揚げ幕から勘平が猪を狙ってドンと鉄砲を撃つと、
弾が定九郎に命中。

定九郎の役者が、あらかじめ口に含んでいた玉子紅を噛み、
胸に仕込んでおいた糊紅をなでると、口から血がダラダラ、
胸から腹にかけて血だらけになってウーンと倒れたところへバタバタになって、
さっそうと勘平が花道へ登場。

という、おなじみのいい場面になるはずだったが、ならない。

小道具が口火をなくしてしまったので、
いつまで待っても鉄砲の音がしないから、
定九郎がじれて、舞台をグルグル三べんもまわった挙げ句、
かんしゃくを起こして「テッポ、テッポ」と怒鳴ったからたまらない。

たちまち口の中の玉子紅が破れて、
弾にも当たらず血がダラダラ。

見物が仰天して
「おい、鉄砲は抜きか」
「いや、今日は吐血で死ぬんだ」

【うんちく】

オムニバスの一部

「仮名手本忠臣蔵」を題材としたオムニバスの一部分で、
このあらすじの部分のみを演じる場合は、
普通「吐血」「五段目」と称します。

「素人芝居」の演題は、四代目橘家円喬が
明治29年6月、雑誌「百花園」に速記を載せた際のもので、
円喬はこの後「蛙茶番」につなげています。

また、「田舎芝居」(アップ済)と題して
芝居噺の趣向を取り入れた同時代の六代目
桂文治は、この忠臣蔵・五段目の失敗話を
「大序」「四段目」に続いて最終話とするなど、
昔から、部分部分の組み合わせ・構成は
演者によって異なります。

詳しくは、「田舎芝居」のその項をご参照ください。

なお、「五段目」のこの部分だけの原話は不詳です。

「忠臣蔵」各段ごとに小咄

歌舞伎・文楽の「仮名手本忠臣蔵」は、
人口に膾炙しているだけに、その各段にちなんだ
落語・小咄が、かつては作られていました。

「大序」「二段目」「五段目」「七段目」「九段目」
がそれですが、このうち独立した一席噺として
扱われたのは「七段目」くらいでしょう。

本ブログでは、本編の「五段目」、「七段目」に加え、
「田舎芝居」の項で、「大序」「四段目」
の梗概をご紹介済ですが、「九段目」は
独立項目を設けていませんので、以下に
明治25年の二代目(禽語楼)小さんの速記をもとに、
簡単にあらすじを。

落語を地でいったヘボ芝居

十七代目中村勘三郎(1909-88)は、関容子著
「中村勘三郎楽屋ばなし」の中で、岳父六代目
尾上菊五郎(1885-1949)に聞いた昔の役者の
失敗談として、「五段目」のサゲのまま
(大道具の鉄砲が鳴らずに、定九郎が仕方なく
舌をかんで「自殺」)の話を語っていますが、
これが本当に実話だったのかどうかは、
定かではありません。

昔のヘボ役者のしくじり話は、梨園には
いくらでも伝わっているようです。

同じ菊五郎の座談として伝わっている話に、
「忠臣蔵」三段目の喧嘩場、高師直(こうのもろのお)と
塩冶判官(えんやはんがん)のやりとりで、

 判「気が違うたか、ムサシノカミ」
 師「だまれ、ハンガン」

と言うべきところを、判官が間違えて
 
 判「気が違うたか、たくみのかみィ」

とやってしまい、これにあせった師直が

 師「だまれ、モロノオ」

これで芝居はメチャクチャ、という一席がありました。

オレも勘平

現在でも芝居の噺のマクラによく使われる
「勘平がずらりと花道に並んで、これで
「カンペイ式(=観兵式)もめでたく済んだ」
というクスグリを四代目円蔵も用いていますが、
「観兵式」がどんなものか分からなくなっている
現在、ギャグとして通じなくなっています。

二代目小さんは、四代目円蔵よりさらに
一時代前の人ですが、前述「九段目」の
マクラで、並んだのは「勘平の子でございましょう」
とやっています。どのみち面白くも何とも
ありませんが、こちらの方がまだ分りやすいでしょう。

なお、この噺、戦後は円蔵の弟子だった
六代目三遊亭円生が、師匠の演出を継承して
「五段目」として高座に掛け、音源も残されています。

「九段目」(あらすじ)

 近江屋という呉服屋の隠居の賀の祝いに
 素人芝居で忠臣蔵九段目「山科閑居」を
 出すことになったが、主役の加古川本蔵 
 を演じる者が風邪でダウンし、代役に、
 夜は医者、昼はタバコ屋という小泉熊山
 (ゆうざん)を立てた。ところが、大星力弥
 に槍で突かれて手負いになる場面で、
 血止めに自家製の刻みたばこを使った
 ので、客が「よう本蔵、血止めたばことは
 芸が細かい」とほめると「なあに、手前
 切り(自分で荒く刻んだたばこ)です」と
 サゲになる。

サゲが今では分かりづらく、
今ではほとんど口演されません。
なお、これも別題を「素人芝居」といい、
ややこしいかぎり。 

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