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2009.05.12

成田小僧(なりたこぞう) 落語

いまは廃れてしまった明治の噺です。

本郷春木町の塗物屋・十一屋の丁稚長松は、
口から先に生まれたようなおしゃべり小僧。

父の代参で深川不動に参詣する若だんな・江崎清三郎のお供をし、
途中、深川の茶屋・松本で昼食。

それも、清三郎が長松の口車に乗ったためだ。

座敷で食事をしていると、芸者が便所に来たのを長松が見つけ大騒ぎ。
女中に聞けば、山谷堀・大和屋の小千代。
幇間の正孝と花洲といっしょに来ているとのこと。

長松は、幇間ともども呼んでしまう。
しめて五十両。

清三郎は
「茶屋へ来たことさえおとっさんに知れたら
どうしようかと思っているところだのに。私は勘当だ」
とビビるのを、長松は
「長男除きはできやァしません。
親子の縁の切れなくなったのは、王政ご一新のお上のありがたいところでゲス」
などと、平気のへいざ。

これが縁で、小千代と清三郎はいい仲に。

後日、吉原の幇間・花洲の家に大和屋の女将が訪れた。

小千代が清三郎に馬鹿惚れなのに、
清三郎の姿を見ないので、小千代がブラブラ病(恋わずらい)になった。

ついては花洲に見舞いに来てほしい、とのこと。

幇間の船八と連れ立ち、花洲は大和屋に。

清三郎との思い出話に花が咲き、
小千代の気も紛れるが、船八は
「若だんなは芸者を連れて逃げたそうです」
と無神経にしゃべくる。

小千代は顔色を変えて、
いきなり外の人力車に乗って立ち去った。

花洲、船八、下働きのお梅、大和屋の女将が、
次々に車に乗って小千代を追いかける。

話変わって、午後十時過ぎの吾妻橋辺。

清三郎が失踪した日を命日に定め、
大だんなが菩提寺の深川・浄心寺に長松を連れてお参りに行った帰り道。

清三郎は双子の妹がいた話などをしているところに、
女の身投げを長松が見つけ思い止まらせる。

女は小千代だったが話しているうち、大だんなの娘と判明。

小千代は
「それを聞きましては、なおさら生きてはいられません」
と、飛び込みにかかるところ、
店の番頭善兵衛が駆けつけ、
若だんなが外務省の役人とサンフランシスコにいるという手紙が届いた
との知らせ。

一同は、ほっと安心した。

大だんなが
「なぜにおまえは貞女の鑑を立てる」
と言うところへ、小千代が
「元が塗り物屋の鏡台(きょうだい=兄弟)」

【うんちく】

深川不動由来

深川不動は現・東京都江東区富岡一丁目。
成田山新勝寺の東京出張所です。

江戸時代には、日本橋坂本町や蔵前八幡境内に
置かれていましたが、明治3年、現在地の
永代寺境内・吉祥院内に移されました。

独立の不動堂が建ったのは明治14年です。
演題の由来はここからで、したがって、
この噺は明治になって作られた「新作」
ということになります。

当時、ませた子供を「成田小僧」と
呼んでいましたが、それがこの噺から
きたものかどうかは、よくわかりません。

鼻の円遊の改作

もとは上下に分かれていた長編で、
初代(「鼻の」)三遊亭円遊が、明治22年5月、
23年11月と、二回に分けて速記を残しています。

今ではすたれた噺で、幕末から明治初期にかけて
二代目春風亭柳枝(1822-74)が得意にしていました。

三遊亭円朝も手掛け、角川書店版「円朝全集」
に、速記が載っています。

もともと、陰気な因果噺だったのを、円遊が
陽気なこっけい噺に改作しました。

浄心寺って?

現・江東区深川平野町二丁目。旧霊厳寺表門前町。

日蓮宗身延山派の名刹で、山号は法苑山。
万治元(1658)年開山で、四代将軍・家綱の乳母・
三沢局(法号・浄心院)の菩提を弔うため
創建されたものです。

浄心寺門前は、「南総里見八犬伝」の作者・
滝沢(曲亭)馬琴の出生の地でもあります。

山谷堀って?

隅田川から今戸橋を経て、山谷にいたる掘割。
江戸情緒の象徴のような名勝でした。

一般には、吉原の入口付近を指します。

松本楼って?

富岡八幡宮の鳥居内にあった料亭です。

伊勢屋とともに、二軒茶屋と称された名店でした。

深川で江戸以来の老舗は、ほかに平清、
小池がありました。

本郷春木町って?

現・文京区本郷三丁目の内です。

元禄9(1696)年から町地となりました。
町名のは、元和年間(1615~24)にこの地に滞在した、
伊勢の御師・春木太夫に由来します。

明治6年、同町内に「奥田座」が開場。
明治9年に春木座、35年に本郷座と改称、
小芝居ながら、明治の名優・団菊も出演した
由緒ある劇場でしたが、昭和5年に廃場。

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