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2009.05.18

贋金(にせきん) 落語

廃れた噺ですが、けっこうおもしろいと思いますよ。

ころは明治。

大酒飲みで名の通った某士族の家に、
出入りの道具屋・金兵衛が、
先日売った書画の残金・三円を掛け取りにやってくる。

この殿さま、酔うと誰彼かまわずからむ癖がある
やっかいな代物で、
今日も朝からぐでんぐでんになった挙げ句、
奥方や女中を悩ませている。

さっそく標的になった金兵衛、
おそるおそる催促するが、殿さまは聞かばこそ。

三円ばかりの金をもらうという料簡だから
きさまは大商人になれん、
俺はきさまをひいきに思えばこそ金はやれん
と、酔いに任せて吹き放題。

のまされるうちに金さんにも酔いが回ってきて、
殿さまのためならご恩返しに首でも命でも捨てまさァ、
と、言ってしまう。

「その一言に相違なければ、その方にちと頼みがある」
「だからさァ、首でも命でもあげますってのに」

その頼みというのが、実にとんでもないことで、
友達が今度、各々が珍しい物を持ち寄って楽しむ会を催すことになり、
そこで自分も珍物を出品したいが、
それについて思い出したのがきさまの金玉。

きさまのがタヌキ並みであることを知っておるによって、
ぜひ切り取って譲ってもらいたい。
明朝八時までに持ってくれば、代金五十円やる。
いやなら即刻お出入り禁止にする、
と、きた。

すっかり酔いが醒めた金兵衛、
しどろもどろになったがもう遅い。

泣く泣く、チン物提供を約束させられてしまった。

翌日。

飲み明かして二日酔いの殿さま。

これが昨日のことはすっかり忘れてしまっている。

そこへ、青い顔をした金兵衛がやって来て
「お約束通り、金を切ってきました」

さあ、困ったのは殿さま。

なにしろ、そんな約束はキレイさっぱり忘れているうえ、
こんな物を持ちこまれても外聞が悪い。

しかたがないので、
治療代五十円に、借金分兼口止め料三円も付けて
ようやく帰ってもらったが、
そこでつくづく自分の酒乱を反省し、
酒をのむたびに五十円の金玉を買ったのではたまらないので、
すっぱりと酒を止める
と、言いだす。

それにしても気の毒なのは金兵衛、
と改めて包みの中をのぞいてみると、
これが金玉とは真っ赤ないつわりで、
蛸の頭を二つ生ゆでにして毛を刺しただけ。

「あいつめ、五十円ごまかしたな」

それから三日とたたないうちに、金兵衛はお召し捕り。
「贋金づかい」というので、お仕置きになった。

【うんちく】

貨幣贋造は厳罰 

江戸時代の「公事方御定書」ではもちろん死罪。
それが緩和され、死刑の適用範囲が減った
明治3年の「新律綱領」、明治15年の刑法でも死刑。

ヴィクトリア朝英国でも、アメリカでも縛り首。
かっては世界中、どこでも死罪でなかった国は
ないくらいの重罪で、現在でも
死刑を科している国が結構あります。

「柳」の噺を三遊宗家が復活?

サゲの部分は文化4(1807)年刊の笑話本
「按古落当世(あごおとせ)」中の小咄が原話です。

古くから柳家小さん系の噺で、
明治24年6月の「百花園」に、二代目(禽語楼)小さんが
「酒の癖」と題して速記を載せています。
その他、上方では「錦屋の火事」の題で
演じられていました。

二代目小さん以後、三代目小さん、三代目蝶花楼馬楽と
弟子、孫弟子に継承されましたが、
三遊系の三代目三遊亭円馬らも演じ、
戦後、二代目小さんの速記をもとに
六代目円生が復活しました。

キン演中のキン演落語

戦時中、「はなし塚」に葬られた
53種の禁演落語の一つです。

まあ、モノがモノなので、
艶笑落語という理由ではなく、
この非常時に不謹(金?)慎な、という
自粛もあったでしょう。

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