« 元犬(もといぬ) 落語 | トップページ | 厄払い(やくばらい) 落語 »

2009.06.19

紋三郎稲荷(もんざぶろういなり) 落語

なんで茨城が噺のネタに? 笠間稲荷と狐のかかわりなんですね。

常陸(茨城県)笠間八万石、牧野越中守の家臣、山崎平馬。

参勤交代で江戸勤番に決まったが、
風邪をひき、朋輩(ほうばい)より二、三日遅れて国元を出発した。

もう初冬の旧暦十一月で、
病み上がりだから、かなり厚着をしての道中。

取手(とりで)の渡しを渡ると、
往来に駕籠屋(かごや)が二人。

病後でもあり、風も強いので乗ることにし、
駕籠屋が八百文欲しいと言うのを、
気前よく酒手込みで一貫文はずんだ。

途中、心地よくうとうとしているうち、
駕籠屋の後棒が先棒に、
この節は値切らなければ乗らない客ばかりなのに、
言い値で乗るとはおかしい、お稲荷さまでも乗っけたんじゃねえか
と話しているのが、耳に入った。

はて、どういうわけでそう言うのかとよく考えると、
寒いので背割羽織の下に、胴服といって狐の毛皮を着込んでいる。

その毛皮の尻尾がはみ出し、
駕籠の外に先が出ているから、
稲荷の化身の狐と間違われたことに気づく。

洒落気(しゃれけ)がある平馬、
からかってやろうと尻尾を動かすと、駕籠屋は仰天。

そこで、わしは紋三郎(稲荷()の眷属(けんぞく=親類)だ
と出まけせを言ったから、駕籠屋はすっかり信じ込む。

その上、途中の立て場でべらべら吹聴するので、
ニセ稲荷はすっかり閉口。

松戸の本陣の主人、高橋清左衛門なる者が
大変に紋三郎稲荷を信仰しているため、
平馬はそこに連れていかれる。

下りて駕籠賃を渡すと駕籠屋、
「木の葉に化けるなんてことは……」
「たわけたことを申せ。それは野狐のすることだ」

主人の清左衛門、駕籠屋から話を聞いて大喜び。

羽織袴で平馬の部屋に現れ
「紋三郎稲荷さまにお宿をいただくのは、
冥加(みょうが)に余る次第にございます。
中庭にささやかながらお宮をお祭りし、
ご夫婦のお狐さまも祠(ほこら)においであそばします」
とあいさつしたから、
平馬は「駕籠屋のやつ、ここの親父にまでしゃべった、どうも弱った」
と思ったが、いっそしばらく化け込もうと決める。

清左衛門が、夕食はおこわに油揚げなどと言いだすので、
平馬はあわてて
「そんなものは初心者の狐のもので、
わしほどになると何でも食うから、酒のよいのと、
ここの名物の鯰鍋、鯉こくもよい」

えらくぜいたくな狐だと思いながら、
粗相があってはと、主人みずから給仕する歓待ぶり。

平馬、酔っぱらって調子に乗り、
この間は王子稲荷と豊川稲荷の仲裁をしたなどと吹きまくる。

そのうち近所の者が、稲荷さまがお泊りと聞いて
大勢「参拝」に押しかけたというので、
平馬「それは奇特なことである。
もし供物、賽銭などあらば申し受けると伝えよ」
「へへー」

喜んだ在所の衆、拝んでは部屋に再選を放り込んでいくので、
平馬は片っ端から懐へ。

もうかったので、バレないうちにずらかろうと、
縁側から庭に下り、切戸を開けると一目散。

祠の下で見ていた狐の亭主、
「おっかあ」
「なんだい、おまいさん」
「化かすのは、人間にはかなわねえ」

【うんちく】

円生十八番、若手が復活

原話は、寛政10(1798)年刊「無事志有意」中の「玉」。

明治から大正にかけ、
「品川の円蔵」こと四代目橘家円蔵が得意にした噺で、
これを門下の三遊亭円玉(1866-1921)が受け継ぎ、
当時若手の、のちの二代目円歌と六代目円生に伝えました。

円歌のレコードも残っていますが、その没(1964年)後は
円生の独壇場で、CD「円生百席」収録の音源が
現在、唯一のスタンダードとなっています。

その円生も、
「実は私は師匠のは一度も聞いたことがありません」
と述べているので、円蔵もめったにやる噺では
なかったのでしょう。

円生は、それまで笠間藩主を「牧さま」としていたのを
史実通りに改めています。「牧野さま」で。

円生没後、継承者がありませんでしたが、
2003年1月、TBS落語研究会で柳家一琴が演じ、
その後、入船亭扇辰ほか、
若手がぼつぼつ手掛けるようになりました。

紋三郎稲荷って?

現・茨城県笠間市の笠間稲荷の通称です。
胡桃(くるみ)下の稲荷ともいいます。

「紋三郎」の通称の由来は、常陸国(いまの茨城県)笠間藩
牧野家初代藩主・牧野貞通(寛延2=1749年没)の一族・
牧野門三郎にちなむものとされます。

祭神は宇迦之御魂神(うかのみかまのかみ)で、
創建は白雉(はくち)年間(650~654)。

伏見稲荷、豊川稲荷と共に、日本三代稲荷の一つで、
現在も五穀豊穣の祭神として、信仰を集めています。

背割羽織って?

別名「ぶっさき羽織」「ぶっさばき」とも呼びます。

武士が乗馬や旅行の際に着用した、
背中の中央から下を縫い合わせていない羽織です。

|

« 元犬(もといぬ) 落語 | トップページ | 厄払い(やくばらい) 落語 »

落語のあらすじ 」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60017/45385711

この記事へのトラックバック一覧です: 紋三郎稲荷(もんざぶろういなり) 落語:

« 元犬(もといぬ) 落語 | トップページ | 厄払い(やくばらい) 落語 »