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2009.06.10

ふだんの袴(ふだんのはかま) 落語

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「オウム」というジャンルの噺ですね。やる人がやれば、笑えます。

上野広小路の、御成街道(おなりかいどう)に面した小さな骨董屋。

ある日、主人が店で探し物をしていると、
顔見知りの身分の高そうな侍が、ぶらりと尋ねてきた。

この侍、年は五十がらみ、黒羽二重に仙台平の袴、
雪駄履きに細身の大小を差し、なかなかの貫禄。

谷中へ墓参の帰りだという。

出された煙草盆でまずは悠然と一服するが、
煙草入れは銀革、煙管も延打(のべ)で銀無垢という、たいそうりっぱなもの。

そのうち、ふと店先の掛け軸に目を止めた。

「そこに掛けてある鶴は、見事なものだのう」
「相変わらずお目が高くていらっしゃいます。
あたくしの考えでは文晁(ぶんちょう)と心得ますが」
「なるほどのう、さすが名人じゃ」

惚れ惚れと見入っているうち、思わず煙管に息が入り、
掃除が行き届いているから、火玉がすっと抜けて、
広げた袴の上に落っこちた。

「殿さま、火玉が」
と骨董屋が慌てるのを、少しも騒がず払い落とし
「うん、身供の粗相か。許せよ」
「どういたしまして。お召物にきずは?」
「いや、案じるな。これは、いささかふだんの袴だ」

これを聞いていたのが、頭のおめでたい長屋の八五郎。

侍の悠然としたセリフにすっかり感心し、
自分もそっくりやってみたくなったが、職人のことで袴がない。

そこで大家に談判、ようやくすり切れたのを一丁借りだし、
上は印半纏、下は袴という珍妙ななりで骨董屋へとやってくる。

さっそく得意気に一服やりだしたはいいが、
煙管は安物のナタマメ煙管、煙草は粉になっている。

それでもどうにか火をつけて
「あの隅にぶる下がってる鶴ァいい鶴だなあ」
「これはどうも、お見それしました。文晁と心得ますが」
「冗談言うねえ。文鳥ってなあ、もうちっと小さい鳥だろ。鶴じゃねえか」

これで完全に正体を見破られる。

本人、お里が知れたのを気づかずに、さかんにいい鶴だいい鶴だ
とうなりながら煙草をふかすが、
煙管の掃除をしていないから火玉が飛び出さない。

悔しがってぷっと吹いた拍子に、
火玉が舞い上がって、袴に落ちないで頭のてっぺんへ。

「親方、頭ィ火玉が」
「なあに心配すんねえ。こいつはふだんの頭だ」

【うんちく】

これも、発掘は彦六

原話は不詳で、古い速記はありませんが、
八代目林家正蔵(彦六)が、二つ目時代に
二代目蜃気楼龍玉(1867-1945?)門下の
龍志から教わり、その型が
五代目柳家小さんに継承されました。

ほかに、八代目春風亭柳枝も持ちネタにし、
柳枝の最後の弟子だった、現・三遊亭円窓が
復活して手掛けています。

御成街道(おなりかいどう)って?

神田の筋違(すじかい)御門(現・万世橋)から
上野広小路にかけての道筋で、現在の中央通りです。

将軍家が上野・寛永寺に参詣するルートにあたり、
この名が付きました。

上野広小路寄りの沿道には、刀剣や鎧兜などを扱う
武具商が軒を並べていました。

仙台平に細身の大小

仙台平の袴は武家の正装用で、絹地の最高級品。
八五郎が借りたのは、小倉木綿の安物です。

また、江戸詰め藩士などは、社交上、装飾を施した
細身の刀を身につけました。

延打(のべうち)って?

雁首と吸口が同じ材料でできた煙管です。

なお、落語や歌舞伎では、演じる人物の階級で
煙管の持ち方が異なります。

たとえば、殿さまは中ほどを握って水平に構え、
武士や町人はやや雁首近くを握って下向き。
百姓は雁首そのものをつかむ、など。

文晁って?

江戸後期の文人画家・谷文晁(ぶんちょう、
1763-1840)のこと。

洋画の技法を取り入れた独自の画風で知られ、
渡辺崋山の師匠でもありました。

五代目小さんのギャグより

●その1

大家が、店賃を持ってきたかと勘違いすると
八「そこが欲の間違えだ」

●その2

大家が、一昨年貸した鳴海絞りの浴衣を
まだ返さないといやみを言うと、
八「留んとこで子供が生まれたんで、『こんな
ボロでよけりゃ』ってやっちゃった。あの子が
大きくなりゃあ、オシメはいらなくなるから、
そんとき返しに…」

●その3

八五郎が骨董屋で、
「今日は墓参りで、供の者にはぐれて…」
とやりはじめると、おやじが
「この方がお供みてえだ」

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