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2009.09.12

第1回 噺家とヒゲ

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平出鏗二郎(ひらで・こうじろう)の「東京風俗志」は、
明治32~35年ごろの刊です。

当時の統計資料を駆使した、なかなか貴重な風俗資料で、
細密画によるさし絵が楽しいものです。

で、その寄席の項。

描かれた噺家が明らかにチョビヒゲ。
それも、髪をきっちり分け、チッキで固めた紳士風。

それが着物を着て扇子を持っているのですから、
アンバランスもいいところです。

「東京風俗志」の画家も著者も、
実際には寄席など入ったことがなかったのでは、
と勘ぐりたくなるほどですが、
高座とヒゲが、いかにアンバランスな取り合わせか、
なんとなくわかります。

昔から、ヒゲの落語家はいないもの
と、なんとなく思われていました。

現に、「古今東西落語家事典」(平凡社)でざっと調べると、
明治以後は、名人円朝からこのかた、
故人の写真では全員がきれいにツルツルです。

古くから、ヒゲは身分と権力の象徴でした。

明治時代になると、特に欧米の模倣で、
政治家や官吏、実業家などが軒並みご立派なヒゲを生やし始めます。
そのおこぼれで、軍人、警官、教師などは口ヒゲかチョビヒゲで、
天井を向いて歩いていました。

しかし、最底辺の芸人はヒゲなどご法度。

客にすれば、偉そうに高座から
天神ヒゲで見下ろされてはたまりません。

現代の落語家でもよもやいなかろう、
と思って、念のため調べたら、なんといました。

古今亭寿輔。

そうでした、そうでした。。
落語芸術協会所属の新作、古典ともこなすベテランで、
そのチョボヒゲはもはやトレードマークです。
まあ、この人の場合、ド派手な衣装もセットではありますが。

考えてみれば、高座で登場人物のイメージを妨げるというのも、
噺家にヒゲがいないゆえんの一つなのでしょうが、
寿輔の場合、偉そうなものではなく、
なぎら健一似の貧乏ヒゲ(?)のため、
かえってご愛嬌になっているのかもしれませんね。

とはいえ、寿輔の存在は、
長い落語の歴史で画期的なことに違いはありません。

現代では、派手なヒゲなど、
権威どころか、お笑いの対象になる時代。

いっそのこと噺家もグルーチョ・マルクスのごとく、
墨でべっとりヒゲを描いて高座に登場すれば、
それだけでバカウケするかもしれません。

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