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2012.07.31

第7回 志ん生のギャグと名セリフ「岸柳島」

岸柳島

○…さる渡し場で、サムライ同士の果し合い騒ぎ。くず屋が横暴な若侍にからまれ、あわや手討ちとなるところを、酸いも甘いもかみ分けたご老体の武士が機転を利かして救うという、おなじみの講釈ダネ。志ん生はここで、生涯一、二という、ものすごいギャグをかます。士農工商の身分意識を、これほどまでに見事に「わかりやすく」表現したものを、筆者は寡聞にして知らない。

無理難題 その1

武士「あー、あー、これっ、そっちィ寄れ、寄れっ、もっとそっちィ寄れっ。邪魔だっ。町人の分際で。なんだその方たちは、うー? 人間の形してやがる、生意気にィ。あー、もっと向こうへ行け、もそっと向こうへ行けっ」
町人「もう行かれません」
武士「川へ入れっ」
町人「冗談言っちゃいけません」
武士「あー、武士のそばィやたらに寄るな。(間)あー? まばたきをしてはならん。(間)息もするな」

侍が「やがる」というのもなかなかすごい。武士も江戸前か。

無理難題 その2

武士「だまれっ、その方は武士に対し、無礼なことを申すやつ、うー、これへ直れっ」
くず屋「へっ」
武士「これへ直れっ」
くず屋「へっ」
武士「船べりへ、首を出せっ。拙者もきせるの雁首を落としたから、その方も雁首を打ち落としてやるから、これへ出ろっ」
くず屋「へ、へえ、ごかんべんを」
武士「かんべんならんっ。首を出せっ。(間)遠慮をいたすなっ」

商売にしようとおのれがまいた種とはいえ、標的はくず屋に。

野次馬 その1

乗客・甲「チャリーンとやってあのじいさんは斬られる。え、するってえと、くず屋をな、返す刀であのさむれえは斬る。そいからおめえを斬る」
乗客・乙「おれは斬られないよ」
乗客・甲「斬らなきゃ、オレが頼んでやるよ。えー、そっちがすみましたら、ついでにこっちもやってください」
乗客・乙「床屋ィ行ったんじゃねえやい」

第3場、お約束で有象無象が大騒ぎ。「たがや」にも似たような場面が。

野次馬 その2

乗客・甲「やーい、てめえなんぞ、誰が、このだんながな、立ち合いなんぞするけえっ。てめえは、人間と立合うてえなあ、ずうずうしいぞ。そこにある柳の木とやってりゃってんだ。何ォ言いやァがるんでえ。こんちきしょうめえ。さっき、オレになァ、まばたききするなって、抜かしやがって、こんちきしょうっ。やいっ、ざまァ見やがれっ、宵越しの天ぷらァ」
乗客・乙「なんだい、宵越しの天ぷらてえなァ?」
乗客・甲「あげっぱなしィ」

この洒落は今でも使える。エスカレーター昇りのみで下りがないスーパー。けっっこうありますな。

野次馬 その3

船頭(水中に向かって)「やーい、どうせ身を投げるんなら、裸で投げンない。このしみったれめェ」

クライマックス。だまされた若侍が飛び込みざま、抜き手を切って船に向かってくる。サゲの後も、まだひともんちゃくありそうな気配。         

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落語悠々(高田裕史)」カテゴリの記事

コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 職務経歴書の書き方 | 2012.09.18 10:33

ありがとうございます。またぜひ。

投稿: ふる | 2012.09.27 11:41

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